読後感の悪い小説のような。観終わった後の不快感ではシリーズ最高を独走していると思います。
エイリアンは、ゴチックSFホラーの始祖
エイリアン2が、B級海兵隊アクション
エイリアン3が、インデペンダント・アーティー
エイリアン4が、オカルト・スーパーヒロインもの
プロメテウスが、蛇足裏設定ディストピア
そして、コヴェナントは、続蛇足ノワール・スプラッター!
プロメテウスと並んで哲学的な自問から始まるのですが、オチに向かうにつれてメッキが剥げていき、娯楽超駄作サバイバルアクションになってしまいます。映像美には優れているのですが。
喩えるなら、出来損ないのヒッチコック、ベイツモーテルのよう。ダニエル・エスピノーサ監督の『ライフ』というSFモノと、オチといい、いい勝負です。
いくつか不満を上げると:
・始めて降り立つ惑星に剥き身で挑む地球人たち。
マスクとゴーグルはしないでいいのでしょうか。未知の細菌を気にする備えが無いようなのですが…… ほら、いわんこっちゃない!
・プロメテウスのデイヴィッドは、エリザベス・ショウ博士を解剖してしまうほど狂ってしまうアンドロイドではなかったのではないか。
デイヴィッドは傲慢さこそ持ち合わせていましたが、それは彼を人間扱いしない不遜な人間たちに向けられていたはず。神の真似をして究極の生命体(エイリアン)に改造したというのは後付け的な挿話に思えます。植物以外を滅ぼしてしまう生物兵器では使い勝手が悪いので、寄生するタイプにアレンジした、というのが正しいでしょう。人類への復讐を、離れ小島で密かに画策していた、ということでしょうかね。
デイヴィッドの人格がプロメテウスとコヴェナントでは異なっているように見えます。デイヴィッドはエリザベス博士の子供時代をプロメテウスで盗み見て、同情のような哀れと慈しみを感じていたようでした。
エリザベス博士の成れの果ては胸腔が大きく開かれていたことから、エイリアンの宿主になってしまったのだと思われます。ということは、デイヴィッドの暴挙に対する彼女なりの抗議だったのではないでしょうか。そういった事件でもないと、デイヴィッドが愛する者を手にかけることは無いように思えます。そこからデイヴィッドの孤独による狂気が暴走していったのでしょうね。
・エイリアンへと続かない。
エイリアンがデイヴィッドによって開発されたとするならば、今度はそのエイリアンが一番最初のリプリーの元へ行く筋道が無いといけません。コヴェナントだけではまだまだミッシングリンクが補完されてはいませんね。
・生物兵器の機能にムラがある
エンジニア(巨人族)に用いると肉体を分解し、滲み出た液体では微生物が巨大化・強化され、人間の体内に入ると異生物を産出させて凶暴化させる?
プロメテウスの終盤では巨人族の体内からも異生物が生み出されていましたよね?
コヴェナントで登場した巨人族の星で、デイヴィッドによって彼らの生物兵器が使用された後、そうした異生物化した某か(巨人族ではない他の動物を由来とするもの)が残存してコロニーを形成することはなかったのでしょうか?
プロメテウスがわずか10年前の出来事であると劇中で触れられています。この10年の間にデイヴィッドが改変した最初の作品(エッグサック)が残存生物のコロニーを死滅させたのでしょうか?
回答のない不満はこの辺にして。さて、いちばんヤバかったのは写真ですね。クライオチューブの中で事故死してしまったキャプテンに、クルー含め総勢15名が写ったアレは、後の展開をネタバレし過ぎてました。中央に写ったキリストのようなジェイコブに付き従う使徒だち。一番右側にいるのが件のウォルターです。裏切り者ユダの位置ですね。コヴェナントという船名も“契約”ですし。
エイリアンを山岳ワイヤーアクション(旦那が写っていたビデオが前振り)で翻弄した場面はある意味、痛快でした。いつも襲われ続けるだけのヒロインが、ビッグチャップをクレーンで握りつぶすのはシリーズ初です。
ラストシーン。体内から吐き戻されるエイリアンの胚。この不快感。あの宝石のようなクリスタルの中にギーガーデザインのバネ尻尾のフェイスハッガー幼生諸々が収まっているとは。キツい皮肉。
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