ウエストワールド 2ndシーズン第2話が素晴らしい。これまでにない
メタな視点 がようやく描写され、ウィリアムがデロス社のCEOに認められた頃のいきさつが初めて出てきます。
※以下ネタバレ注意 ウィリアムは婿養子で、奥方ジュリアはデロス社の社長令嬢。社長には息子のローガンがいますが、これが放蕩者であるため、CEOの席はウィリアムに継がれたのでした。
ローガンは開園以前にホスト(人造人間)を初体験し、ウィリアムはVIP接待時にローガンに伴われてウエストワールドを訪れました。
ローガンがホストのことを「今の技術ではできない」と脅威でもって形容する場面が秀逸です。AI、AR、VRと現行の最新技術がセリフに登場した上で、ウエストワールドの“触(さわ)れる”リアリズムが体感的に演出されることで、なんともいえない近未来感が醸し出されています。
一方、ウィリアムはウエストワールドを技術的観点からではなく、罪が許される場所(神が見張っていない場所)として、投資をしぶる義父を説得しました。
ゲストがウエストワールドでモラルから逸脱した行為をどれほど犯そうとも罰せられることは無いのです。 これは丁度、我々がオープンエンドRPGの中で遊ぶ追体験と同じです(ただし、触れることは叶いませんが)。人々の欲望そのままが充足できる世界、それがウエストワールドなのでした。
ウィリアムはホスト:ドロレスに心惹かれていますが、ジュリアと娘はそれを知らない。30年後にジュリアが自殺することは1stシーズンで語られていました。ウィリアムは作り物の世界ウエストワールドで自分探しの旅をすることになり、それは2ndシーズンで、ようやく意味を持つものになっていきます。なお、ウィリアムが落とした、ジュリアが写っている都会の写真がピーター・アバナシーがおかしくなるきっかけでした。ピーター・アバナシーは最重要ホストとして経営陣が確保を画策している個体です。
現在のウィリアムのドロレスへの愛は1stシリーズで語られたように既にありません。ドロレスはループ(循環するテーマパークの設定時間)でしか生きられない存在でウィリアムのことを記憶出来なかったからです。
しかし、反乱の先鋒になったドロレスはワイアット・シナリオの冷酷さを持ち合わせ、アーノルドか、はたまたロバート・フォード博士によるものか、いずれにせよ自身の覚醒を果たしています。“レヴェリー”プログラムが想起させる記憶が過去と現在を繋げ、ドロレスは自我と目的意識を持ち合わせるようになりました。
メイヴとドロレスが出会うくだりは、ブレラン2049以降の問いを見事に反映しています。
「自我に目覚めたことによって生まれた、造物主への復讐心」は、その実フランケンシュタイン・コンプレックスの系統でしかありませんでした。 人類に対する人造奴隷の蜂起です。が、ここに至ってメイヴという別のホストが復讐だけが存在理由ではないことを堂々と示唆します。
メイヴ「復讐も祈りも奴らの手の内にある行動よ。私はその手には乗らない」
ドロレス「自由を守るには闘わないと」
メイヴ「貴方を助けて復讐しろと? 貴方がみんなに命令を下すことで自由を感じられるのかしら?」
メイヴもまた、当初はプログラムによる動機付けに過ぎなかったものの、心にわだかまっていた娘への愛情が肥大して、それが存在理由となることで覚醒しました。ドロレスが復讐の虜なら、メイヴのは娘を捜す旅。さらに、3番目のホスト:バナードは、造物主の片割れアーノルドの似姿を(造物主であるもう一人ロバート・フォード博士から)与えられ、人間に紛れ込んでいる存在です。第一話にあったホストの大量の水死体はバナードに責任があるようでした(この謎解きはまだ語られていません)。
場面場面でキーになるセリフが光ります。
①
無数のビルからなる窓明かりがきらめく都会の夜景をはじめて目にしたドロレスがアーノルドにその感想を言う場面。
お披露目前のドロレス
「見たことのない光って、暗闇の怖さと同じなのね」 Strange new light is just like frightening with the dark.
アーノルドは子供のように純粋な心から発せられた言葉が鋭い洞察だと感嘆します。が、次の瞬間、ドロレスはさっきと一言一句違わずに光の様子がとてもきれいだと言うのです。健忘症の白痴ホストに戻ってしまう、恐ろしい演出でした。
②
30年前のウィリアム「確かにウエストワールドは幻想でしかない、あるものを除いては。それはゲストです。市場は人々の欲求で動いてる。それは今後も変わりません。ここにはその欲望があります。監視者はおらず、裁判官もいない。口コミだけです。世界で唯一の場所――自分が何者であるかを知れるところ。お義父さん、あなたにもそういう商魂はあるんだと。それとも僕は勘違いしていたのかな」
義父のCEOに向かってウエストワールドへの投資の価値をまくしたてるウィリアム。これはスゴい。欲望ビジネスに乗っかることが早道なのに、それが分からないなんて、あんたは老いぼれだ、と言わんばかり。義父は自分に意見する若造を生意気だと制しますが、周りはイエスマンばかりだったと、婿養子の言葉に耳を傾けます。
③
元CEOである父親の引退式を、ジャンキーズ・ハイの息子が達観している場面。
ローガン「(傍に来たドロレスに向かって)奴らは何を祝ってると思う? くだらない馬鹿騒ぎをしている間にも、クソな人類が焼かれるんだぜ。しかも自業自得ってやつなんだ」
ウエストワールドで意図せずに罪を犯したことを認識していない人々が地獄の業火で焼かれる、ということなのでしょう。ウィリアムの理屈とは正反対で信心深いローガン。神に隠し事はできないと既に分かっているようです。ウエストワールドそのものが冒涜なのだと。
④
ウィリアムと“物”のドロレス
ウィリアム「問題は君じゃ無い。君は物ですらない。君は
鏡像 (reflection)だったんだ。鏡像を大いに好むのって誰だろうな? みんなだよ。みんな自分を知りたいのさ。僕は鏡像でみんなを助けたい。けれど、事はそう単純でもない。向こう側(beyond)があるからな。答えはそこにあるんだろう。誰も尋ねようとすらしないけど。君は見てみたいかい? ドロレス?」
おぉぉぉぉ、人造物を愛するようになったら、こんな瞬間が訪れるのかもしれません。なお、向こう側は「彼方の谷」に繋がります。
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