前作のセーブをインポートしたキャラクターで一応クリアしたのだが、分岐を確認する意味も含めて、難易度を変えてもう一回くらいは通しでプレイしようと思っている。40時間前後でクリアしてしまえるほどの分量だが、前作を凌ぐ工夫や改良点を感じた。かいつまんで
アクションゲームというよりもRPG寄りなので、GTA4のようにイベントに登場する特殊アクション(ヘリにつかまる為にAボタン連打など)をプレイヤーがこなさなくてはいけないという部分はない。基本的に、部下二名を率いた部隊で掃討作戦を繰り返すと、合間にムービーが挟まれて物語が進む。難易度Normalだと、とりわけ目立つ難所も無く、物語を満喫しながら、銀河を救う為に蘇生された指揮官の立場を思う存分味わえた。プレイヤーがParagonかRenegadeのアクションを選ぶ事により、成り行きを変えられるイベントもある。
ムービーはBink Videoによるものが多いようだ。前作では、ゲームエンジンを使ったリアルタイムレンダの比率が高かったと記憶している。ちなみにムービーフォルダだけで2.5GBあり、ロードスクリーン用のムービーもここに含まれている。HDDアクセスが発生しないにもかかわらず、ロードが長い原因の一端は、このロードスクリーン用ムービーの尺が長いせいだ。
シタデルを往復する際には、空を飛ぶタクシーのコースが表示される等、これまで省略されていた宇宙都市内交通の描写にロードスクリーンが活用されているのは面白い。反面、やり直し時のロードスクリーンのように、表示(再生)時間が長すぎるものはプレイアビリティを損ねている。イベントシーンのムービーはスペースバーを押せば省略できるが、ロードスクリーンではそれが出来ない。
ノルマンディ号のテクスチャのジャギーが気になったが、アンチエイリアス設定とは無関係にムービー中で既にジャギーまみれのノルマンディが飛んでいた。ゲーム機上での描画エンジンによるパートとムービーのパートとを違和感なく見せる為なのだろうか。PCの方が描画性能や解像度が高い為、際だって粗が見えてしまうようだ。
ゲーム内グラフィックのオプションは非常にプアで、アンチエイリアスのオン/オフはここには載っていない。ランチャー起動時のスプラッシュスクリーンからConfigureを選び、開いたUtilityウィンドウのVideoの項目に載っている。他に、ここでフルスクリーンかウィンドウ上での起動かも選択できる。
ゲーム内容
基本的なゲーム性は前作と変わっていない。何らかの戦闘行動を通してミッションをクリアしていくパターンで、主人公シェパードが死んでしまうとゲームオーバーとなり、直前のシーンからやり直しとなる。シナリオは部分的にノンリニアで、並列可能なミッションはプレイヤーが着手する順番を決定できる。Assignmentsはサイドクエストのようなもので、解決を後回しにできる。
前作では、似たようなロケーションとMACO任務のせいで、変わり映えしない作戦行動が多かったが、今作では敵を倒すだけの単純な任務ではなく、明確な目標を果たすという意味合いが強められている。ロケーションも変化が多く、雨中の野外がチラッと出てきたりと、グラフィック面からも強化の程がうかがわれる。
原則的にミッション遂行中は船に戻る事ができないが、区切りがある場合にはこの限りではないようだ。特に、仲間から頼まれたミッションは本筋のミッションよりも柔軟性が高く、他の活動が一切出来ないというわけでもない。こうした「仲間ミッション」には明確な成功と、そうでない結末が用意されており、後者だとその仲間からの忠誠心が厚くならない(仲間の能力がアンロックされない)。シナリオの分岐と言って差し支えないだろう。
部隊を率いての戦闘活動は、ほぼ一本道のマップを進み、用意されたオブジェクトをインタラクトしていくだけとなる。銃撃戦では、前作の内容に加えてしゃがんでカバーを得るアクションが増えた。銃撃戦の完成度は高い。ただし、いくつか欠点も感じる。
銃火を集中されると短時間でシールドが破られてゲームオーバーになるが、自分が撃たれているという感覚を促す演出が足りないようだ。ゲーム専用機ではコントローラーの振動で表現していたのかもしれない。シールドが低下して危険な状態になると、画面に紗がかかったような演出はなされるが、具体的にどこから撃ってきた弾でやられたのかが明示されない。視界外だとまるでわからない(5.1ch音声だと判るのかもしれないが)。
スプリント(疾走)しながら遮蔽物に滑り込むアクションが可能となったが、どちらもスペースバーに割り当てられている為、敵から逃げる際にスプリントしていて遮蔽物に近づくと、自動的に「カバーを得る」アクションになり、敵の攻撃に身をさらす自殺行為になる。これには非常にイライラさせられた。
低い遮蔽物はカバーを得た状態でスペースバーを押すと飛び越えられる。飛び越えられる遮蔽物の種類はいろいろで、どれが飛び越えられないのかを事前にプレイヤーが知る術が無く、困った。カバーを得た状態を解除する際はFキーを押すのだが、このFキーは格闘アクションと兼用になっており、スプリントと同様に誤発が避け難い。
戦闘以外
シナリオ進行以外に、惑星をスキャンして鉱物を獲得する活動、武器のアップグレード、地表の探査活動が用意されている。前作と比較すると、より理屈に見合った改善がなされており、インターフェースの使い勝手も幾分向上している。ただし、あくまでゲーム専用機のコントローラー、つまりスティックとボタンに特化しており、マウスで項目をハイライトしてからアクティブにする(クリック)という操作系では、マウスポインタを移動する分だけ手間が増えてしまう。
使い勝手がよくない代表例が武器のリサーチ画面で、リサーチを決定する度に船内へ画面が戻ってしまい、複数のリサーチを一度に決定したい場合に煩わしかった。
惑星のスキャンは前作のMACOミッションの一部に相当する。今作でもやや退屈な事には変わりなく、ひたすらマウスを動かして反応が強いところへプローブを打ち込むという、宝探し的なものとなった。リサーチによりスキャンの効率UPが望めるが、戦場での略奪行為同様、手元に研究用資材がなくなった場合の補充という意味合いが強く、豊富に掘削できる。プローブを打ち込むと即資材が増えるが、ビーム転送でもしているのだろうか。
地表への着陸(Land)は、ビーコン等のAnomalyを発見した場合や依頼任務があった時のみ行える。前作の車両MACOは無くなったので、移動は徒歩のみとなる。シャトルやビークルでの移動がカットシーンには登場するが、プレイヤーが実際に操縦できる場面はない。追記:後でリリースされた、無料のDLCに、新型車両の出てくるミッションがある。
武器のリサーチは、ユニットを戦場で見つけたり、鉱物を一定量発見する事により、アンロックされる。リサーチには鉱物を、星系間移動と燃料・プローブ補給にはクレジットを、それぞれ消費する。惑星間移動とジャンプドライブ(マス・リレイ)経由では燃料は消費されない。惑星間と星系間では実際に船が地図上を進むようになった。
発見・入手した武器は自動的に上位の武器にすげ替えられ、必要があれば、ステーションで交換する事が可能になっている。前作のように、同じ武器をいくつも所持した上で廃棄する事はなくなった。アップグレードは対象が設定済みのパーツ(拳銃用、SMG用、等)となり、リサーチと組み合わせる仕様になった。前作では、銃なら種類を問わず、何とでも組み合わせる事が出来るパーツとなっており、必要な数を入手する事が大変だった。
余った武器をオムニジェルにして、システムをハックする時の材料にする、という発想はなくなった。ハックのミニゲームは二種類用意されているが、いずれも神経衰弱風のパズルに変更されている。どちらにも時間制限があるが、マウスの方がコントローラーのスティックより敏捷に操作できる為か、まず持ち時間が尽きるという事がなかった(失敗するのは確認を怠った時ぐらい)。ご褒美は、武器のアップグレードユニットかクレジット(この世界の電子マネー)である。
シナリオ
前作を踏襲した仲間集めの前半と、銀河の中心領域へ踏み込むスイサイド・ミッションからなる後半に分けられる。仲間集めは、その人数の多さから、後半部よりも時間を必要とするミッションになっており、決して副次的な扱いではない。仲間一人一人には気がかりな心配事があり、それを解決してやる事もミッションになっている。
上でも触れた通り、仲間各自につき正否という二つの分岐があり、更にプレイヤーのParagon/Renegadeアクションで細部の台詞が変わるといった趣向がある。後者は大きな流れを変えるほどではないが、ロールプレイとして重要視されるべきであろう。成りきり度が高まるわけだ。
主人公が関わった事件の事後談として、新設されたゲーム内メールが一役買っている。助けてやったNPCから主人公宛にメールが届き、礼を言われたりするのだ。このメールで依頼任務が舞い込んだりもするのだが、現代がケータイやiPhoneの時代である事を反映してか、違和感なくゲーム世界に溶け込んでいる。
後半のSuicide Missionは、如何に人的被害を抑えられるかという挑戦も含んでいる。筆者がフツーに遊んでみたところ、3人の仲間を失ってしまった。No One Left Behindという実績があり、このミッションでの損害をゼロにする事も可能であるようだ。
前作もクライマックスで、Alliance艦隊を見捨てるかどうかという分岐があったが、今作も重大な岐路があり、その決定は次作に影響しそうな雰囲気が漂っている。前作でのチームメイトの生死は、今作のシナリオで反映されており、各自が得意分野で出世したり、背景世界が描かれるという演出に繋がっている。恋人になったキャラクターとはその関係を暗喩したポートレートが個室の机に載っていたりと、前作経験者には嬉しい作り込みがある。個室に飾る事のできるプラモデルがキオスクで販売されているが、こちらも前作で馴染みの宇宙船だ。
グラフィック
よく強化されている。とりわけ、キャラクターの造形が巧みで、
Dragon Age: Origins よりもフォトリアルでよく出来ている。プロシージャル生成でないNPCには強い個性が感じられ、ノーマルマップによる肌の質感ばかりでなく、生身に近づけた雰囲気がよく出ている。反面、動きには、いくらか不十分さが感じられ、Mirandaが無表情に首を振って喋る様は、(あるいは遺伝的人工物という演出によるものなのかもしれないが、)ロボット的に写る。
全身タイツ風だったアーマースーツは、しっかりとした厚みを持ったプレート状のものになった。色や質感やパーツのカスタマイズが若干ながら出来るので、自分ならではのキャラクターをアピールできるようになった。
最も変化が大きいのは髪の毛の表現だろう。技術的な話になるが、3DCGの分野では板ポリゴンで髪の毛を作り、アルファチャンネルで透明色を抜く「短冊式」という作り方がある。それほど負荷をかけずに、見かけの優れた毛髪を表現できる方法だ。ところが、ゲームエンジンでは透過色が重なった場合の扱いが難しく、毛髪にアルファチャンネルを振り分ける事は滅多になされない。
ゆえに、ボールドヘッドか、ぼってりしたボリュームを持つヘアデザインのキャラクターばかりが登場するわけだが、Mass Effect 2では枝毛のように細かい毛髪の束をわざわざポリゴンで表現し、その上、そうした束の配置にも気を遣って、見かけの印象が向上するように努力している。おかげで、女性キャラクターは大分魅力的な毛髪を備えるようになった。
グラフィックの技法に関しては、おそらく特筆すべきものはなく、昨今では当たり前になった技法が多用されている。ゲーム専用機ありきの上、Unreal3 Engineなので、同じ系統のゲームと比較すると、さもありなん、という印象でしかない。PC専用ゲームなら、もっとクオリティアップが期待できたところだろう。
まとめ
最後に、筆者のスタンスを誤解がないように述べておこう。Dragon Age: Originsは筆者にとってがっかり感が強く、Mass Effect 2は満足感が強かった。その理由は、期待している内容が違うから、である。Dragon Age: Originsには、廃れつつあるパーティ制プレイの真骨頂を期待していたが、ふたを開けてみれば、Baldur's Gateの精神的な継承者はどこへやら、コンシューマ仕様に塗り変わってしまい、シナリオドリブン型のよくない面ばかりが強調されてしまっていた。多様性よりも単純さが前面に出てしまい、玄人が満足するようなRPGとは言いにくい。
Mass Effect 2には、イージー&クイックで煩雑さのない即物的な良さを期待していたが、それは見事に成就されており、シナリオドリブン型の面白みが存分に発揮されていた。プレイヤーが関われる箇所もParagon/Renegadeや分岐と、プレイアビリティを損ねることなく、雰囲気を盛り上げていくやり方に磨きがかかっていた。多様性よりも単純である事が貢献している作りだ。その多様性さえも、決して犠牲にされているわけではなく、仲間の大人数化やロケーションの変化といった部分では見事に実現されており、見た目の飽きがこない。次作への期待感も高める物語の作りが上手かった。
(この日記は
名 作 R P G を 遊 ぶ 3月4日投稿分を再構成したものです)
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