マルチプレイを少々。キャンペーンの10レベルアドベンチャーよりは、マルチプレイで人間様相手に負ける方がマシというものだ。
みてくれこそタクティカル・バトルのボードゲームだが、デザインがその精神に則ったものとは必ずしも言えない。課金制ソシャゲの一種(コレクタブル・カードゲーム)だと捉える方がしっくりくる。プレイするほどに、
カード運の比重が大きいと感じる。ダイス運の双六ゲーTalismanと同じ印象だ。
たくさん移動したい時に「歩く」のカードでは充分なマスを進めない。「チョップ」攻撃したい時に「バッシュ」のカードでは都合が悪い。カード運次第のCard Hunterでは、
勝てなかったのはそのカードが来なかったせい、なのである。
このゲームのデッキはキャラクター毎に用意され、キャラクターの装備品であるアイテム毎に、攻撃系・移動系・防御系といった多彩なカードが割り当てられている。ヒューマン・ファイターの場合、武器3振り(6枚×3)、兜(3枚)、鎧(3枚)、盾(3枚)、脚甲(3枚)、軍用スキル(3枚)、人間スキル(3枚)で計36枚のデッキとなる。例えば、プレートメイル鎧は3枚のカードで出来ており、カードの内容は主に防御系である。どの系統にも段階(強さ)があり、移動系なら移動距離の小さい「歩く」から、一瞬にして遠くまで進める「スプリント」までの幅がある。大は小を兼ねるので、強いカードの付属する上質なアイテムを装備しておくに越したことはない。武器は6枚からなるが、その内訳は攻撃系だけに留まらない。特殊なソードになると攻撃系や防御系に加え、有害な効果を持つ1枚が混ざる。有害な効果は、強力なカードと抱き合わせにすることで損得のバランスが保たれるわけである。攻撃系には前述のような類別があり、バッシュが通用しないジェリーといったモンスターがいる。プレイヤーはキャラクター3人を選び、自分のパーティとする。
さて、デッキにおける比率も吟味しつつ、攻撃系・移動系・防御系のカードを明確な意図の本に組み立てたとしよう。ところが、実戦では必要な時に必要な内容のカードが手札になかなか来ないものだ。ここぞ、という時に攻撃系カードがパタリと出なくなる。もうひとマスが進めないばかりに、射程内に敵をとらえることができなかった、などなど。どんなに知恵を巡らしても、出ないものはどうしようもない。戦略的な余地がないのだから、ゲームデザインとしては辛いものがある。デザイナーにクソゲーと叫びたい。
ウォーゲーム的な戦術を念頭におくなら、移動と行動のルーチンはどちらのプレイヤーも平等に行えることが大原則。仮に、移動フェイズは移動系カードで構成された副デッキから、行動フェイズはそれ以外のカードで構成された主デッキから、それぞれドローできる、とでもした方がまだ理に適う。実際にドローされる状態は、これに似た理屈がなされているように見受けられるが、このゲームには明確なフェイズ分けがない。手番には、キャラクターが1枚カードをプレイできるだけだ。移動後に必ず攻撃できる保証はない。移動カードをプレイしたなら、敵の手番に移る。だから、敵も移動して逃げれば、攻撃の機会を逸したという結果となる…… 手の内の読み合い? まぁそうかもしれない。でも、それはカード運でもある。
Card HunterはD&D3.5版のようなテーブルトップのコンバットを採用している。正方形のマス目が描かれた盤上で駒を動かして戦闘の処理を行う。ビジュアルや演出面の出来はなかなか秀逸で、プレイも簡単で遊びやすい。だから……だからこそ、なんである。
何を引くか分からないカードゲームで駒を制御しようとすると、ほとんど行き当たりばったりにしかできない。相手との駆け引きよりも、
次にどのカードを引けるか、に全てがかかっているんである。
「あのカードさえ来ていれば!」
戦略的なボードゲームの要素を、デッキ・ビルディングがいとも簡単に壊してしまう、なんともはや、そんな
自滅的なデザインなんである。
緩くてカオスな味わいは、実にソシャゲ向き。次の手番にどんな行動が出来るのか皆目わからない、まことに珍妙な味付けの
もどきボードゲーム、それがCard Hunterなのダ。
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