振り返ると、三章は物語が収斂していく印象だった。ゲラルトを余計に成長させる目的でこなせるセカンダリー・クエストはあまり無い。しかも、先にプライマリークエストの"Gold Rush: The Bank Robbery" (銀行立てこもり事件)が起きてしまうと、"The ○○ Contract"(註)の依頼人とのコンタクトが制限されてしまい、この間、貴重な余剰経験点が稼げず、進行上あまり好ましくない。
「RPGなんだから、全てをつまびらかにしたら、面白くないでしょう」という諸氏もいるだろう。もちろん、それはそうだが、"Track quest on map"機能のように、プレイしやすく計らうのもシステムの重要な役割だと思う。だから、入れ子状のクエストをゲームが採用しているなら、プレイヤーがそれを推理できる示唆があってもいいはずだ。クエストの重要性と天秤で、示唆の度合いが保たれるべきだろう。現行では、そういう発想が大部分で欠けているように思えてならないのだ。
The Witcherではジャーナルに書き込まれる項目の事を「エントリー( "Journal entry" )」と総称しているようなので、以下の記述では、私もそれに倣っている。要するに、「エントリー」=「具体的なクエストの名称」と思っていただいて差し支えない。この伝だと、フェイズ名もエントリーと呼んでしまえるが、「フェイズ」は「クエストの進行状態を細分化したもの」という扱いで明確に分類したいので、私はフェイズの事はエントリーとは呼ばないようにしている。
注意:以下にはネタバレを伴う内容が書かれています
例えば、二章で"Old Friend of Mine"というエントリーが追加されたが、"Invitation" (Shaniのパーティーにお客を招待する)というフェイズの後、トリガーが明示されないまま、Activeでなくなって(☆印が消えて)しまった。運悪く、適切な状況に行き当たらずに放っておくと、三章に突入した時点で自動的に失敗になってしまう。困るのは、どの瞬間に再びActiveになるのかがハッキリしないので、章またぎなのか、二章の間に解決しておく必要があるのか、プレイヤーに伝わらないという点だ。"Invitation"の場合は、公式Forumによれば、プライマリー・クエストの進展とも関連するという。つまり、このプライマリー・クエストは順路を少々逸脱しても解決できる(枝葉が一つにまとまる)ように作ってあり、律儀に組み込まれたセカンダリー・クエストはその逸脱と共に省略が成り立ってしまうらしい。
"Dice Poker"のエントリーのように、章をまたいで強敵を巡っていくというセカンダリー・クエストもある。プレイヤーからすると、章をまたぐかそうでないかの見極めは難しい。例えば二章でVaskaから依頼されるエントリーの中に"A Lost Lamb"がある。これは煉瓦職人の村で少年の行方が分からなくなったというもので、容疑者のDryadからの返答をVaskaに伝えて一旦はフェイズがActiveでなくなる。この時の説明文は「少年を見つけたら報せると約束した」。再びActiveになるのは三章に入ってからだ。したがって、二章の間にプレイヤーが血眼になってこの少年を探したとしても、埒は明かないのである。
更に、"Beauty And the Beast"のように、新しいフェイズが強制イベントの中で唐突に追加される例すらある。これは恋人がワーウルフになってしまったというCarmenの依頼で発生し、スワンプ・フォレストのhierophantから聞いた解呪法をCarmenに伝えて一旦Activeでなくなる。このフェイズの説明文によると、「何が起きるか待たねばなるまい。たぶん自ずとワーウルフの素性は知れるだろう」というものだ。続きは三章のお終い近く、マーチャント地区にあるというサラマンドラのアジトを潰した後に自動的に発生する。そこで出会ったワーウルフがVincent Meisだと知れるのだ。