Play Stationゲームアーカイブスから
NOëL ~La neige~を買ってみた。私は初代Play Stationはおろかファミコンすら遊ばない人間だったので、この手のゲームには免疫がない。PC-9801の美少女ゲームならプレイしたことはあるのだが。そんなわけで、このNOëLも初めて。
3人の受験を控えた女子高校生が登場人物で、時代設定は2014年ともうわずか2年後だ(1998年発売)。同じゲレンデに来ていた縁で、スキーで事故ったところを彼女たちに救われた、というのが出会い。主役級の橘 柚実(たちばな ゆみ)がヴィジュアルフォンなる近未来テレビ電話のIDを教えてくれ、プレイヤーは彼女からの電話を待つか、こちらから電話をかけることになる。
画面の動きは2Dアニメによるもので、彼女たちが多少の身振り手振りをし、クチパクに合わせて音声セリフが聞こえてくる。プレイヤーは、彼女たちが喋る話題に呼応した“ボール”を投げかけることで、会話の合いの手や受け答えを行う。
温く楽しむ意図でプレイしようと思うのだが、どうにも欠点に目が行ってしまう。TV電話をモチーフにしたアイデアは面白いが、それにともなうゲーム性の付け方が好ましくない。
時間設定の問題現実と同様の時間進行でゲーム内日付が進むことになっており、電話をかけるべき時間までプレイヤー自らがゲーム内時間を進めることができる。21時19分にするか、22時50分にするか、全くの自由だ。ただし、全く無駄な自由だが。
とにかく面倒くさいので、さっさと攻略チャートをネットで探し出した。このチャートによると、夕方か夜の時間帯に彼女たちが在宅しており相手をしてくれる。つまり、時や分まできっちり再現する必要性はほとんどない。プレイヤーに選択の幅を持たせたいのであれば、朝・昼・晩・深夜といった括りで充分だろう。この括りにした場合でも朝や昼はほとんど意味を成さない。なぜなら、その時間帯には彼女たちが不在であり、留守番メッセージと映像が流れるだけだからだ。
会話がつまらないおしゃべり好きな人物にとっつかまって、その人が満足するまで帰してもらえない、そんな気分にさせてくれる。おしゃべりの内容に関心を持つことが難しく、そもそもこちらは電話をかける側にもかかわらず、聞き役しかできない。
プレイヤーは返事の選択肢に「イエス/ノー/どちらでもない」のニュアンスを付け、猶予内でタイミングを合わせてボタンを押す。選択肢(ボール)は自動的に発生する。
会話中に自己発生するボールの他に、ゲーム内で閲覧できるネットからも情報を仕入れられる。その情報をボールとして取り込む操作をすると、返事の選択肢として使うことができる。
こういう仕組みなら、「情報をボールとして取り込む操作」は省略してしまった方がよかったと思う。プレイヤーに必要なのは会話時における返答のレパートリーだから、情報を見たら即使えることになっていた方が都合がよい。どれを使うかの自由度を自然に増してやった方がゲームとして面白くなる。なお、使わないボールの削除という機能が既に用意されているので、選択肢が多すぎることへの対策はなされている。
会話の楽しさより攻略?恋愛シミュレーションゲームのノリであるらしく、適切な会話ボールを適切なタイミングで投げかけると彼女たちがプレイヤーを好いてくれることになっている。私としては、疑似会話をもっと掘り下げて、プレイヤー側が主導的に話題を提示できた方が良かったろうにと思う。最終的に告白される必要性は感じない。攻略する為に、プレイヤーが望まない返答を仕込まなければならないのでは、楽しみをスポイルする結果になるだろう。
どうして受験間近の女子高生を題材に取ったのかがよく分からない。おそらくこのゲームを遊ぶ人も高校生くらいであろうから、ゲームを遊びながら受験のことを思い出させてくれるのはあまり楽しい気分ではなかったことだろう。それとも、受験って大変だよね、と共感を呼んだのだろうか。
登場人物は3人「も」いるのだが、橘 柚実に電話番号を教えてもらって初めてコンタクトできる。現実的なアプローチではあるけれども、これではゲーム内容を自ら狭めてしまう。どの彼女に電話を入れたいかは、最初からプレイヤー任せにしてくれた方がありがたい。
水樹奈々が声優初挑戦したという門倉 千紗都(かどくら ちさと)とお喋りしたいなら、1月4日の時点で柚実が「千紗都が二年参りでべたべたするカップルを見て不機嫌になった」の話題を出した時に、『え?』をイエスのニュアンスで投げかけ、続く会話の中で、昨年ネットから仕入れた『ダダイズム』ボールを「絵に興味ある?」の返事に使わねばならない。『え?』のニュアンスはゲームシステムの説明によるとイエスよりも「どちらでもない」に相当するように思うのだが、それでは駄目だった。
→柚実「計画通り初詣に行った」で、プレイヤー『毎年行くの?』○
→「二年参りでべたべたするカップル」で『へぇ~』○
→「千紗都が不機嫌になった」で『え?』○
→「スキーの時に一緒にいた」で『門倉さんを覚えて…』○
→「絵とか興味ある?」で『ダダイズム』○
→「顔に似合わずSFが好きなんです」で『SFは』○または×
→「え、違うの芸術? 新春第一弾の展覧会」で『なんで?』○
→「千紗都にかけてあげて」で『そうしようかな』○または『でも今日は遅いから』○
返答のコツがよくわからず、なかなか電話番号(ゲーム中ではID)を教えてくれる展開にならなかった。
とくにタイミングはセリフが終わった直後ではやや遅く、YN?のアイコンが活性化した時に、つまりお喋りの最中に早めに入力した方が無難のようだ。
ラブプラスは遊んだことのある私なので、この斬新なシステムは方向性さえ直せば悪くないと感じた。でも今のままでは、画面の2Dアニメを相手に疑似会話するのはご勘弁願いたい。なんだか虚しい気分になる。
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