Alice Madness Returns、クリア。おおよそ16時間。難易度的に詰まってしまうということもなく、最後までプレイできた。取っつきやすい事は間違いない。あまりアクションゲームをプレイしない方でも、お終いまで行けるだろう…根気さえあれば。要するに、反復が多い構成であるから、中だるみが激しいのである。
「不思議の国のアリス」を題材にしていても、ゲーム性はその辺で目にする普遍的なものの踏襲だ。戦闘システムは、剣と銃がアリス風に変換してあるに過ぎない。落下したらゲームオーバー(やり直し)な足がかりをピョンピョンと跳んでいく。横スクロールや音ゲーといったミニゲームが挿入される…。刃物を手にした眼の大きいアリスという少女が、血糊の付いた青いドレスで闘う事を肯定する設定だから、こうしたゲームなのだと納得するしかない。なにか根底から新しい試みを感じさせるゲームでは無い。
視覚的に目を惹く物語世界ではあるものの、語り口と噛み合った秀逸さを醸し出しているかと問われると、それほどではない。主人公アリス・リデルの心情に共感できるような事態は起きなかった。私も歳のせいか涙もろいところがあるはずなので、「家族を火事で亡くした孤児の少女が精神病院で…」などという筋立てなら、まず間違いなくジンワ~と目頭に来ているはずなのだが、演出か日本語字幕か構成か、はたまた私の感受性か、何らかに問題があるらしく、そういう観点から捉えること無く終わった。
ストーリーラインの異様さとは裏腹に、オチは、推理小説で言うならタブーを破ったかのような「探偵が犯人であった」的なもの。拍子抜けと言わざるを得ない。子供の心を蝕んでいる、かの悪人は、史実から引用したキャラクターなのだろうか。だとするなら、薄ら寒さは覚えるかもしれない。そういえば、L.A.Noireでもシュリンクの伏線があったっけ。
現実とワンダーランドの往来は、説明的である以外に、特に必要性を感じなかった。19世紀ロンドンでのプレイヤーは(ワンダーランド内とは正反対で)トリガーを求めてただ彷徨うだけであり、ゲーム性に貢献していない。良くできた映画を鑑賞した後のような余韻は薄く、このひたすら長く作業的なゲームの終わりを観た、という達成感の方が勝つ。
徒労感がするプレイフィールに、なんだかハッキリしない(意味不明の)筋立ての組み合わせ。少女とグロテスク。権威と犠牲者。正気と狂気。見せかけと本質。見せたいのは、対比の妙なのだろうか? プレイし終えてみると、出来はあまりよくないと感じた。ゲーム内ギミックの如く、粗さが目立つ。
“ワンダーランドで記憶の欠片を集めると、現実での狂気に終止符を打つ為のパワーが身につく”という事なのだろうが、『収集』はゲームにおける「常識的なやり込み要素」でしかあり得ないので、狂気がどうとか精神がどうとか、そういう高尚なテーマを深読みできる裏付けとなり得ない。むしろプレイの過程において、ムービーシーンで語られたような内容がプレイヤー側に訴求してくるように、ステージでの理屈付けを行うべきだと思うのであるが、あろうことかアクションパズルの連続で完結してしまっていて、プレイヤーが体験する事とアリスが内面で体験したであろう事(記憶を思い出したというムービーの内容)に乖離が生じている。プレイヤーはイベントムービーに重さは感じず、章立ての区切りに到達したという程度にしか認識しない。これでは映画や小説が持つ説得力には勝てそうにない。切り絵調ペン画によるムービー(おそらく、元はFlash)はクオリティが高く、美しいのだが、本編のポリゴンレンダと異なるがゆえに、ますます別の次元の出来事のように写る。
前言に反して、ビジュアルイメージだけは成功している。ワンダーランドの、フロイト的とも取れそうなアレンジの世界観は一見の価値があるだろう。性的なイメージが(おとなしくではあるが)散りばめられているように思うのは私だけではないはずだ。軟体動物、馬頭、キノコ…挙げればキリがない。
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