今回のは奇妙な事件だ。セントラル署の目と鼻の先で、車が崖から落下。乗っていたのはB級映画の女優ジューンとまだ15歳のジェシカ。二人は薬で酩酊させられていて、アクセルには小道具の重しが仕掛けられていた。何者かによる殺人未遂のセンが濃厚だ。
落ちた車の運転手だったジューンは無事で、聞き取りが出来るほどに回復していた。さかんに俺に色目を使ってくるこのオバサンは、いかにもこの業界でのさばりそうな存在だ。かつてターザンの妹役を好演した彼女も、もう結婚して苗字がマカフィーへと変わっているのだが、旧姓のバラードで呼ぶように厚かましくも言ってきた。相棒のビコウスキーときたら、彼女の熱心なファンのくせに、彼女から邪険にされている。
B級映画プロデューサーのマーク・ビショップが、ジューンに役をオファーした直後に取り下げてきたそうだ。彼女によれば取引したという事だが、そのプロデューサーが彼女を葬りたいと考えたとしたら、動機は何だろうか?
一方、入院したジェシカが意識を取り戻した。話を聞くと、彼女は親元から逃げ出し、叔母であるジューンの厄介になってビショップに紹介されている。ジェシカはスターになる事が夢なのだ。だが、母親はそれを心配して手紙を書き送ってきている。現場で見つかった彼女の持ち物が不可解だった。バッグから出てきた下着には、どんな意味があるのか。現在、精液検査中だ。
いずれにせよ、二人とも事件直前の記憶がない。
ジューンを尾行した俺たちは、彼女が夫に連絡し、映画プロデューサーのビショップの居所を言うのを耳にする。さっそくビショップが泊まっているホテルへ直行だ。その時、
415が進行中との無線が入った。場所は目的地のホテルの803号室。これは大変だ。
ホテルの803号室には怒り心頭のビショップ婦人が残されていた。幸い婦人にはケガはなかったが、部屋は荒らされまくっている。何者かが家捜ししたに違いない。目的は何だろうか。
寝室でローナ・ホプグッド宛の20,000ドルの小切手が見つかる。マーロン・ホブグッドとマーク・ビショップは映画という仕事上の繋がりがある事が写真から判明する。あの有名な『イントレランス』のバビロンのグレートウォールのセットの写真もあった。友人の妻名義に小切手を切るとは、マークとローナの関係とは何か?
ジューンの夫ガイ・マカフィーと、マーロン・ホブグッド、マーク・ビショップ、この三人は共に仕事上の付き合いがある。マーロン・ホブグッドはシルバー・スクリーンという名前の大道具屋だ。また、ローナ・ホブグッドはビショップ婦人によれば、マーロンの元妻だという。小切手からすると、マーク・ビショップは恐喝されていたセンも拭いきれない。
マーク・ビショップの身が気がかりだ。ジューンから連絡を受けたガイ・マカフィーがやはりマークを追っているに違いない。俺たちが先回りできればいいのだが…。とにかく、マーロンの大道具屋を当たってみるしかあるまい。居所が分かるとしたら、そこしかない。
大道具屋を調べると、サウンドステージが曲者だ。ここが、昨晩の“パーティー”の現場に違いない。薬瓶とアクセルを固定するのに使った見覚えのある小道具が見つかった。しかも、マジックミラーが設えてあり、秘密の部屋から、なんと便所まで覗くことが出来る。ここでいかがわしい撮影をしていたのだろう。
ここのストックからマーク・ビショップの名前が載ったフィルムリールの缶が出てきた。ジェシカが受けたというフィルムテストの缶もあったが、中身のポジが紛失している。
証拠探しに躍起になっていた俺は、うっかり外へ出てしまい、容疑者マーロンの尋問をすっ飛ばしてしまった。
すると、ミッキーCの手下のジョニー・ゴールドバーグらが俺たちを待ち受けていた。彼がビショップの部屋を荒らした犯人だろうか。ガイ・マカフィーはこういう荒っぽい手下を使える立場なのだ。連中も血眼でマーク・ビショップを探している。
連中は去り際の俺たちに遠慮無く発砲してきた。俺のドライビング・テクニックで、なんとかその場を凌いだが、これはどうやら厄介な事件になってきたぞ。
リール缶にあった『ジャングル・ドラム』とはスタジオセットの名称だ。今は使われていないようだが、おそらく…。
ビンゴ!! マーク・ビショップはここに潜伏していた。俺たちを見た彼がセットの中を逃げていく。待て、こちとら、おまえの命を救ってやる為に来てるんだ! ヤバい! モブスターも俺たちの後を尾けてきたようだ。続々と集まってくる。先ほどの発砲沙汰で車をオシャカにしちまって、徴用した民間人の車には無線が無い…はずだが、相棒は器用に署に応援を要請している。ビコウスキー・マジックだ。
俺はマークをなんとか捕まえて、無事に連れ出す事にした。ギャングどもが見境無く撃ってくる。戦地仕込みの俺の腕前を見ろ。どんなに遠い的だって百発百中さ。
ところが、問題は帰り道だ。このバビロンウォールのセットの見晴らしのいいこと。どうやって降りたもんか、考えあぐねちまった。あぁ、張りぼての柱のそばにある梯子か。これは気付かなかったぜ。
階下でもギャングどもが五月蝿く撃ってきた。ビコウスキーが「ゾウの足元にあるドラム缶を狙え」とか叫んでいたが、ここからはそれらしいモノはよく見えねぇ。
悪漢連中に鉛玉を存分にお見舞いしてやると、ようやく辺りは静かになった。出迎えのキャプテンが賛辞を述べてくれて、俺は昇進した。さらば、交通課の日々。
ロイ・アールが奢ってくれるというので、俺たちはハリウッドの業界人が集まるというバーに出かける。ロイは荒っぽい男だ。ボーイの黒人が腕を掴んだと言っては叱りつけ、歌姫エリサの機嫌が悪いと言っては「そんな口をきくな」と女を平手打ちする。この場にDr.ハーラン・フロンティンが居合わせていた。あれが、新聞で有名な業界人かかりつけの精神科医か。
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