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ルセッティアの功罪…ローカライザーの懐事情と野心

steam Holiday Saleはつつがなく終了し、午前3時をあれほど待ちわびていた我々の心も拠り所がなくなって、どこか空虚な仕事始めを迎えようとしている。

2010年のIndies長者はMinecraftであることに異論を唱える人はいまい。しかし、もう一人、国内発の立役者を忘れてはならない。ルセッティアだ。

Earnings Call: Recettear’s Follow-Up Revealed(Rock, Paper Shotgun)でも取り上げられたように、宣伝活動もパブリッシャも無しで、専らPCダウンロード販売網だけで10万個を売り上げた。この数字はインディレーベルでは異例の業績だ。

ちなみに10万個超の売り上げは、ルセッティアのローカライズを担当したCarpe Fulgurが1月2日時点として公表したもの。昨年9月28日(発売後一ヶ月)の時点では26,000個を売り上げたとしていた。瞬く間にここまで売れたタイトルだが、内実は複雑なようだ。

急速にここまで数字が伸びたことについて、Carpe Fulgur創設者の一人であるAndrew Dice氏が自らのブログDer Dräkblögの記事100,000 Copies Sold and What That Meansで明かしている。とても興味深いので、要約を紹介しよう。

彼らの悩みは、フルプライスでの販売成績ではないことだ。Indie Story Packを買う人が多く、このパックはルセッティア単体時セールの5ドルにすら満たない販売価格であることから、実入りはとても小さい。しかし、売れ行きを考えると定価を下げたセールをしない手はない。更に、正規のパートナーであるディストリビュータ(ルセッティアの開発元EasyGameStationのこと)が、“胴元の取り分”をもっていってしまう。10月のパックと11月の単体セール合わせて、社員の月給をまかなうほどにはなったが、割を食っているという。将来は是正したい意向だ。

また、売れたことにより、英語吹き替えを考える必要に迫られている。費用は、クオリティを重視するなら、ざっと1万~1万5千ドル。これを安全に投資できるようでないと、吹き替えは難しい。英語吹き替えが成立する場合、デュアルボイス仕様(英日両対応)を見当している。

コンソール機への移植も見当材料だ。GDC 2011での感触で判断すると氏は書いている。費用の見積もりと開発者キットの入手如何だそうだ。非ダウンロードの分野に参入するには問題が山積しており、決して楽観はしていないという。費用面でもDSなどは大変なようだ。3DSのように新型がはっきりしている場合、古いDSにこだわるべきか悩みどころだとも。

英語吹き替えと開発者キットは金銭面で折り合いがつかないので、取るとしたら、どちらか一方しか選べない。開発者キットの方が、事業拡大に繋がるので、優先度は高いが、実際にはキットの価格次第だという。GDCにいるソニーや任天堂やマイクロソフトの担当者が、氏をどのように足止めしてくれるか、見物だ。

融資を受けて借金すればよいと助言があったそうだが、この不景気で、債権者により潰れていく会社をいくつも見てきた氏には、悪い考えにしか写らない。借金するくらいなら、会社を畳むそうだ。

たいへん興味深いことに、創設者のもう一人であるRobin Light-Williams氏は、コミケット79に来日して日本の開発者と会ってきたそうだ。もちろん、次回作の為に。夏コミにも来る予定だという。彼らは海の向こうへの橋渡しを買ってでる意志はマンマンで、二匹目のEasyGameStationを、それこそ目を皿のようにして探し回っているらしい。開発者に十分な取り分を与えていることが、ことさらに強調されている。

次回作はシャンテリーゼが決まっているそうだ。同人ソフトが一攫千金だとは、これまで一体誰が想像しえただろうか?
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[ 2011/01/04 09:32 ] 考察 | TB(0) | CM(0)
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