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良質なファンタジーとなったBG3の秘訣とは?

バルダーズゲートIIIが良質なファンタジーとして成立する理由は、昔から続いているRPGのファンタジーセッティングとしての集大成を、巧みに物語のベースに使ったことでしょう。

原典の「バルダーズゲート」は単に「バールの子」を主人公にしたやや古典的な物語で、禍々しい血筋の行く末が善なる人々によって悪とはならない、善に変わりうるのだ、というクリスチャンが好みそうなパターンの題材でした。

BG3に至っては壮大なバックグラウンドを借りた、言うなれば「超存在と共に暮らすファンタジー世界」で起きる出来事の追体験になっていて、もうバルダーズゲートというタイトルでは済まない部分を網羅しています。

ベイン、バール、マークゥル(DEAD THREE)とジャーガル
もっともバルダーズゲートに近い視点での神話から派生して、選ばれし者(チューズンワン)を絡めた要素。ただし、マインドフレイヤーを使った時点で、もう神話ではなくなって宇宙(アストラルプレーン)を巻き込んだ大事件になりました。

ウィーヴ、ミストラ、魔法と女神
第3版以前からの引き継ぎによる設定を活かして、魔法が成り立つ世界の理屈を紹介しています。単なる中世西洋似の冒険譚ではなくて、ある種の概念を組み込んだギリシャ神話みたいになりました。ヘラやアフロディテの性格付けのようなものです。災厄の時、暴発魔法、魔法で勃興した古代帝国ネザリル、などの設定が出てきます。これぞフォーゴトンレルム!と言える部品を持ってきたわけですね。

キャラクターが神になれるDnDのシステム
これは36レベル以降があったような昔のDnDを踏襲した部分でしょう。準神性(Quasi-deity)、アセンションなど、不死性やレベル成長を究極まで追い求めるプレイヤーの性(さが)やエゴを表したとも言えそうです。アスタリオンのヴァンパイア・アセンダントや、野心の神になるゲイルなどは、ここに由来するでしょう。

地獄とエルタレル
ハムスターを愛する単純な脳筋戦士ミンスクの人気(復活)と、それを描いた漫画版が前日譚としてありますね。齧歯類がマスコットといえば、ルーファスとロン・ストッパブルのコンビも思い出されます。向こうでは「憎めないヒーロー」を満たす一定の要素があり、それに適っているということなのでしょう。

ミンスクは単なる人気取りの道具で、本質はエルタレルという都市を描く事件で九層地獄の片鱗や住人ティーフリングを紹介することにあったはずです。BG3ではさらにウォーロックというクラスの特徴である「契約」も関連させていました。BG3劇中のウィルは伝説のドラゴン「アンサー」の力を借りる役目に抜擢されますが、どちらかといえば、ルール的にドラゴンと親和性の高いのはソーサラーのはずです。

ザリエルを筆頭に、人間に介入する地獄からの使者も登場し、古典のメフィストフェレスのような魂の売り買いまで表現されました。キリスト教的な西洋文化にどっぷりという感じで、2023年の娯楽作品に堂々と悪魔(BG3で言うラファエル)が登場するのは意外に真新しいのではないかと思います。

オリジン・キャラクターであるカーラックの存在も忘れがたいですね。また、エルタレルからの難民は、地球上で現在も起きている戦争を思い出させます。

創造神話のシャーとセルーナイ
双子の女性神で、それぞれ闇と月の化身とされます。ミストラのような神と比べると、原初の神々に違いなく、その動機や性格付けは非常にコズミック。コズミックな視点で、非人間たる超存在を崇め祭ることをカルトとして描いたのが、シャドウハートの背景。抱擁の修道院でのクライマックスで、レイディ・シャーのおぞましさを表した素晴らしい脚本を体験することができます。「喪失こそ癒やし」

一方、正反対の存在であるセルーナイは、やや行きすぎた感のある良識派、月(光)の乙女デイム・エイリンとして描かれ、彼女はカミングアウトしたレズビアンです。彼女の容赦ない怒りはレイディ・シャーと同じくらい病的に描かれます。

影に呪われた地(Shadow-Cursed Lands)が、BG3独自の創案です。セルーナイからマークゥルに改宗したケセリック・ソウム将軍が放ったのが影の呪いでした。そこはシャーの試練場(the Gauntlet of Shar)を擁する土地なのです。

BG3劇中でも、レイディ・シャーはナイトシンガー(夜の歌い手)と称されていますが、彼女が唄う姿で現れることはありませんでした。その代わりに、ナイトソングを虜囚にしているというオチになっています。

超能力のイカ、ハイブマインド
おそらくクトゥルフが原典のイリシッド(マインドフレイヤー)は敵役としての地位でしかなかったところでしょうが、隷属させてきたギスヤンキ(あるいはギスゼライ)との全面戦争がアストラルプレーン内外で起きているという設定によって、アンモナイト船ノーチロイドや、何よりもオリジン・キャラクターのレイゼルを登場させるに相応しい背景設定になりました。

ADnDでのルールとして宙ぶらりんだったサイオニクスの落としどころとして、ギスやマインドフレイヤーを見いだしたのはスゴイと思います。アンダーダークのドワーフが備えているよりも説得力があるでしょう。プレイヤーキャラクター側からすれば、幼生のおかげで発現する能力としたところが上手いですね。

アンダーダーク
有名になったドリッズト・ドゥアーデンの物語からこちら、古典的なダークエルフはDnD世界で一般的になり、悪人でないドラウも存在できるようになってきました。プレイヤーキャラクターとして使えるタイミングは遅すぎたくらいですね。今回も舞台としてアンダーダークが登場するのはサービス精神だとは思いますが、飽きの来ない風景、立地の違い、独特の風変わりなエリアとしては必要でした。

機械文明崇拝
アイアンノーム、ガンディアン(ガンドの信奉者)は、よく発明家として登場するノームの代表格になりました。スティール・ウォッチ(鋼の衛兵)もそうですが、カーラックの地獄のエンジンと絡めたのは上手いと思います。

手垢の付いた種族
指輪物語的なハーフリング(ホビット)、ドワーフ、純エルフへの描き込みは逆に無くなってしまいました。ドワーフといえば、斧やハンマーを持った屈強なファイター像(あるいは神官)でしたが、今回は傭兵の雛形にもファイターでは登場しません(なんとバーバリアンです)。エルフについては、ジャヘイラとハルシンを描くことで済ませてしまった感があります。100年を超えるスパンで語られる歴史の証人は、劇中のヒューマンではなくてエルフだからでしょう。

皇帝、エセルおばさん
これらの登場人物はトリックスター(ペテン師)ですね。この二者が、今作のナラティブの“騙り”を象徴する存在だと思います。プレイヤーに仕掛けられたまことしやかな罠です。

プレイヤーを信じ込ませる役目は、本来はデヴィルに課されるものではなかったでしょうか。反して、BG3のデヴィルは気取った紳士・淑女であり、契約条項で縛ることしかできない法律家です。

皇帝はやむにやまれぬ事情を持つ人物ですが、イリシッドの恩恵に傾倒して、その危険性を教えてくれない、“信者”でもありました。

エセルおばさんがまさか、あのような役だとは、初見のプレイヤーは皆騙されたのではないでしょうか。中世の魔女のイメージとして、村人の困りごとを皮肉をもって解決しており、その演技力と共に、倒し甲斐のあるモンスターでした。どちらかと言えば、他の作品、例えば「ウィッチャー」の方が相応しいような役割でした。BG3の中では極めて希有な登場人物だと言えます。
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[ 2024/02/22 01:49 ] 考察 | TB(-) | CM(0)
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