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Phantom Liberty VのEND

※ネタバレ注意※

V(男性名:ヴィンセント)のENDについて

DLC以前は「人生は短い(伝説になることを目指せ)」、むしろ「全力で成し遂げるべき何かを探せ」。下手をすると「ジョニーのようなロッカーボーイになれ!」のようなメッセージを受け取った。再起する様には「挫折してもやり直せ」。

しかし、今回のDLCのENDは「あなたは“その他大勢”です」と釘を刺すようなオチ。アメリカンドリームを体現できる存在ではないし、これは一時の娯楽を供するゲームに過ぎないから、本来の自分をVのような英雄と勘違いして人生を誤らないように、と。

その他大勢という皆が帰る場所があるので、野心はほどほど、成就できなくても大丈夫。……みたいな意味のない安心感。ケセラセラか。

そんなわけで、Phantom Libertyの「手術を受けられる」ENDは初めて見ると、かなり愕然となる。本編の療養ENDでも愕然としないわけではないが。もっとわかりやすい形で重い。

人生や生き様を教えてくるRPGにはこれまでお目にかかったことはなかったと思う。

プレイヤーの進行状態に応じて、ホロ(コール)できる相手が増減する: ジュディ、パナム、リバー、ケリー、ヴィク。ジョブを全てこなしていても以上の5人だった。苦しいときの友人。会って話したくなるのが情。あんなに縁を作りまくったVなのに、5人しか残ってなかった。

デラマンの送迎でヴィクとミスティの確定エピローグを体験し、クレジットの背景では、ローグ、タケムラ、ミッチ、リード、ヴィクからのホロ(留守電?)を見られる。ジュディ、リバー、ミッチ(パナムの代理)、ケリーはロマンスの相手なので、Vの性別(同性愛・異性愛)で内容が変わるのじゃないかなと思う。

いわゆる、その後の登場人物、を伝えてくれるものはゲームの“あとがき”にありがちだが、こうまで主人公との関係性で何かを伝えてこようとされると、ものすごく愛着が湧く。ミスティと再会したときには思わず泣きそうになった(涙まで出ないけど)。

ストーリーの方向性は相当にアメリカナイズされてるんだが、このゲーム自体はポーランドの開発者が主体でいながらも国際的に開発したものだ。要するに、ポーランド人の感性スゲェーな!!ってこと。娯楽作品でこれほど(魂というと大げさだが)心揺さぶられるものは滅多にない。しかも、グローバル、ユニバーサルに通用してる。極東の島国でも感動しちゃうんだから。米国人よ、ポリティカル・コレクトネスなんて、どっちの得にもならない細けーことに拘泥している場合じゃないぞ。すっかりお株を奪われてるよ。

エンドクレジットに流れる2曲の主題歌もハマる。配信されているアルバムCyberpunk 2077: Phantom Liberty (Original Score - Deluxe Edition)のトラック16と8がそれ。前者はリブート版007の切ないイメージを思わせる。クレジットの映像では、マイヤーズがチェスの盤上で倒したポーンがソミであり、彼女は奈落へと落ちていく。♪他の道を探すのにはもう疲れたのよ~~おまえは逃げられない 悲痛なコーラスが被さる。

ナイトシティの文化を見ると、ベセスダのスターフィールドに決定的に欠けているモノが分かる。リトルチャイナ、ジャパンタウン、カブキ、ブードゥー(ハイチ)、シックスストリート、エル・キャピタン(人名)、ジョイトイ、都市計画の跡地(まるで放棄されたラスベガス)、サントドミンゴ、いくらでも挙げられるほど、じつに国際色豊か。――エル・キャピタンの慈善エピソードは泣ける(汚職警官が命を賭けてしまうんだゼ!)。

今回のソングバードは韓国人であるし、元ゲームがジャパンバブルの頃の米国舞台とはいえ。設定のままならば、チャイナやハイチや韓国人は入る余地がなかったろう。人の流入を表した未来像をさらに大きく活写するのが実に上手い。

プレイヤーイクスペリエンスも非常に濃厚で質・量ともに高く、ディレクションがまことに適切に行われていることがよく分かる。凄くリッチなRPGを遊ばせていただいた感がある。

日本語ローカライズもとても素晴らしい。担当者の尽力あってこそだろう。いい会社にはいい人材が集まっていく好例のようだ。

テーマの選定も実にニクい。宇宙船地球号で環境破壊がいかに全員に及ぶかという時代、敢えて刹那的な生き方の主人公が描かれる。「この選択は本当に正しかったのだろうか」と仮初めの自由でVは自問する――各自の意志決定が、存外にも全体と繋がって結果に及ぶ(バタフライエフェクトのように)。だから、個人を描くことは集団を描くことにも等しいわけで。超自己中のソミとどう付き合うか、どう支えてやるかは、隣人の関係はどうあるべきかに繋がる。国際関係でもあるし、人種のいざこざでもあるし。狭くなった世界での付き合い方でもある。また、自分らしくあることと世界との関連の仕方をおさらいするチャンスでもある。ソミが他人を利用したことについて考えれば、カントの言う「目的の王国」を思い出すことになる。

日本バブルなんて今の時代感に全くそぐわないが、Vのドラマには無くてはならない。アラサカの日本は悪役扱いだが、ここで描かれる「勘違い日本」なら、本望ってものだろう。落ちぶれた我が国のかつての栄光……

長らく洋ゲーを嗜んでいて、本当によかった。
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[ 2023/10/07 16:18 ] RPG | TB(-) | CM(0)
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