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パンナコッタ? 少女? メッセージとは一体何か??

アマプラで問題作「プラットフォーム」を見た。スペイン語なので、日本語字幕の情報しか分からない。

理解できた範囲では:
資本主義、聖書からの引用、格差社会、人道的(メッセージのパンナコッタを目の前の空腹の女の子にあげてしまうことで得られる救済)、人権?、アジア人(ミハル、ビビンバ、ポン刀)?、貧困、ドン・キホーテ(同国でもあり、メタな意味がありそうだ)、などなど……

宗教的なモチーフが意図的に使われているのは間違いない。しかし、メッセージはおそらく宗教ではない。信教のことがゼロではないだろうが、政治色の方が強いだろう。

某かに目を開かせることを意図して、風刺か比喩が込められているようには受け取れる。しかし、はっきりとそれが何かは言えない。多分に政治のことであり、貧困や富の再分配に関する社会的幸福を考えさせることが目的なのだろう。

分からないは分からないが、何かを伝えたがっているらしいことは伝わる。それから、スペインというお国の事情は考慮に入れておくべきだろうとは思う。

現状を冷ややかに見ている目と、どんなアクションをすべきか、という部分は感じる。

手っ取り早く監督Galder Gaztelu-Urrutiaのインタビューからヒントを読んでみる。
https://www.digitalspy.com/movies/a31942927/netflix-the-platform-ending-explained-director/

・映画は様々なイデオロギーの失敗を示していて、資本主義のことではない。
・社会主義は失敗だった。
・少女を最上階へ送るというメッセージは単にゴレンの解釈。
・監督にとっては最下層は存在しないし、広い解釈を許す結末にしたかった。
・監督曰く「この映画に政治的で具体的なメッセージはない」
"At the end of the day, the movie isn't going to change the world, but it may change the viewer,"
『詰まるところ、この映画は世界を変えるつもりはないけれど、視聴者は変えるかも知れない』

"Therefore we don't mess with anyone in particular either, the only times we directly have characters represent anyone, it's the hallucinations of Trimagasi and Imoguiri, who represent selfishness and altruism.

"In many ways, the movie was a lesson for those involved in the production as well, because we also saw the same message, that collective stupidity that we deal with that prevents us from seeing the actually important issues.
『私たちが直接的に介入したのは、登場人物のトリマガシとイモギリに、利己主義と利他主義の関係を幻覚で表した時だけで、それ以外では、私たちは干渉するということは誰に対しても行っていないんだ』
『いろんな意味で、この映画もまた制作に携わる者への教訓だった。なぜなら、我々もまた、本当に重要な問題から目を逸らしてしまうような、対処すべき衆愚という同一のメッセージを経験してきたからだ(※)』

・自身の連帯感の限界を描いている。10階に居るときはいい人になれても182階ではそうはいかない。
・この映画は、持てる者と持たざる者の世界を残飯によってはっきりと視覚化している。
・穴とは、私たちが生きている世界の冷たい非人間性を反映したもの。
・貧富の差、上ることを欲する者、下って分かち合うことをよしとする者。何度も視聴することに応える多層構造をこの映画は持っている。

※ここは翻訳がけっこう難しいかもしれない。もう少し砕いて訳すと、「私たちが扱っている集合愚(集合知の逆)が、現に重要視すべき事実に気づくことを妨げる、というまさに同じメッセージを体験したから、この映画の制作は多くの面で教訓だった」

collective intelligenceなら集合知で、collective stupidityという表現もよく使われるようだが、手頃な訳語はないらしい。日本語で政治の意味合いで使うならポピュリズムといったところか。一言にポピュリズムと云っても、いろんな含蓄で使われるが、ここでは「大衆を扇動しはするが、その真意は理解されておらず、全体としては愚かに映る」といった民衆が加担する政治的な迎合のこととする。なので、私は「衆愚」という言葉にした。

したがって、映画のメッセージは衆愚=大衆が理解したと思っていることが総じて愚かさに通じる(場合がある)、であろう。集団になると、個人の立場の時とは異なる意見になぜだか賛同してしまうという不可思議な迎合を仄めかしているのではないか。連帯感だけでは対応できない状況などもそういう結果に繋がるわけだろう。だから、こうすればいいという解決可能なメッセージの意味では語っていないわけだ。それが逆に危険だから。そして、気が付いたなら、目をつぶるな、ということなのだ。日本人なら誰もが経験のある「同調圧力」もまた関係あるだろう。

派手にグロかったり、気色悪いのは、過剰演出を狙っているからだろう。炎上商法と同じで、話題にならないと負けだから。これも大衆迎合のひとつの手法でもあるし。自嘲的で自己批判というのは、その辺のことなんじゃないか。聖書の引用やら、意味ありげな名前やらを採用したあげく、肝心の何を伝えたいのか分からなくなる、というのも「重要な問題から目を逸らす」効果かもしれない。


https://collider.com/the-platform-ending-explained-netflix/
As I said before, this is a social self-criticism. I don't feel authorized at all to tell anyone what to do. The film only aspires to expose, not to indoctrinate or to lecture. And, of course, there are many who do what they have to do, but most of us spent the day looking for excuses ...
『前にも言ったように、これは社会的自己批判なんだ。私は誰かに何をすべきかを指示する権限をまったく感じていない。この映画の目的は晒すことだけで、教化したり説教したりするためではない。もちろん、世の中にはやるべきことを分かっている人はたくさんいるけれど、私たちの多くは言い訳を探しながら日々を過ごしているものだ』
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[ 2023/06/29 20:50 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)
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