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STAR WARS ジェダイ-サバイバー感想

映像作品であったなら、このストーリーはアリだ。鬱展開の反面教師だが、深みのある闇を描いてる。喪失感を味わってる最中の人になら、ひょっとすると光明を与えてくれるかもしれない。ただし……これはやっぱりエンタメのセカイでのハナシなので全部ウソ八百だが。

シアの言葉から、カルは親友の娘の育ての親となることを余儀なくされる。ところが、カルはもうライトセーバーには見向きもしない(既存の映像作品では、ジェダイは故人の魂のようにセーバーを扱っていた)。闇を乗り越えたシアという教師の道を、カルもまた辿ろうとするのだろう。それとも、真に闇落ちしてしまうのか……続編を待つしかない。

闇落ちというテーマは、「スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐」が手本だが、アナキンの愛とジェダイの掟との葛藤はテーマを消化し切れておらず、なんともモヤモヤした気分が残る。それに比べると、「ジェダイ-サバイバー」は裏切り行為に及ぶ心労のようなものを感じさせ、圧制下の不健全な心の有り様を見せてくれる。いかにも閉塞的な時代感があることを匂わせる。

ゆえに、プレイヤーとして、急展開以前の“楽園”にどれだけ心酔したものか――ゲームという体験型メディアの功罪である。長く苦しいトンネルの時代だからこそ、カル・ケスティスは信頼を大事なものと捉えていたが、そこには個々のやむにやまれぬ事情があることを理解するわけだ――200年前のサンタリ・クリィとダガン・ゲラの関係も。そして、それを見てきた彼も、いつの間にかその大事なものを失ってしまうのであろう――プレイヤーも、主人公カルの立場を通して追体験させられるのである。

スターウォーズに何を求めるかによるが、今回のゲームはテーマの深掘りには成功している。ただし、今の時代だからこそハッピーエンドを期待した向きには、どう受け止められるだろうか? 今の若者はそんなに重く受け止めるようなことはせず、数多あるアクションゲームのひとつとして、娯楽性だけを存分に味わうのだろうか。それもまた愉しみ方のひとつではあるが、情動無視か麻痺状態みたいで、少し気がかりである。あるいは、もっと逆に、こうした重いテーマを“たかが”ゲームに盛り込んだことに反感はないのだろうか? 

心を動かそうとするドラマを使うのは、映画や漫画、アニメの常套手段であり、それがないと成り立たない感動大作やお涙頂戴という分野がある。だから、手垢のついた展開に慣れっこになった現代人が、主人公が裏切られた(=闇オチした)くらいでは、まるで響かない、ということもあろう。そういうものである。

私が考えるに、体験型メディアであるところのゲームでは、主人公の追体験に加えて「選択」が重要だと感じる。例えば、NPCの生き死にをプレイヤー個人がボタン一つで左右できる。アクションゲームの敵役モブ戦闘兵1の生死をどうするかに大した意味を感じさせられては困るが、主人公の友人の生死は重大事として、プレイヤー側にも成り行きの途中で「介入」させて欲しいわけである。

先のカルの親友の例では、メリンによる働きかけで、カル達は裏切った親友に対してやり直しのチャンスを与えている。それに応えられない親友は、娘を持つ父として帝国の恐怖に打ち勝てないことを吐露して幕が進む。プレイヤーに残されている働きかけの一部は既にメリンが代行しているため、改めて介入する必要はない。しかし……、である。プレイヤーキャラクターであるカルは、そのままでは親友の能力に太刀打ちできない。ダークサイドの能力を使うことをプレイヤーは余儀なくされ、そこで、ようやく(意に反して)、カルは親友に引導を渡すことになってしまう。ここにプレイヤー側の選択肢はない。なぜなら、親友を殺さない選択は、(主人公カルの)異性の親友を――ひいては、今まさに着手たらんとするジェダイ・オーダーの復興を――失うことに繋がるからだ。親友に対して、我が身の犠牲を以て真意を伝えることはできないジレンマに陥るのである。

悪墜ちは文字通りに“悪い”ことではない。むしろ、普遍に生じる出来事だから、要は本人の心の有り様だと、シアの例を紐解いて、ゲームは伝えてくる。困難に打ち勝てなかった時に崩れた心を取り戻す様こそ、成長過程では重要視すべきなのだ、というわけである。「失敗は成長の母」みたいなものだ、と。

アナキンを取り戻せなかったオビ=ワン・ケノービの将来を、言わばこのゲームのジェダイ・マスターの一人であるシアは既に体験済みで、それはオビ=ワンがダース・ベイダー(アナキン)に身を以てして示したものとは違う。元パダワンで尋問官セカンドシスターとなったトリラを手にかけるつもりだったのは、前作のシアだからだ(拷問の末にトリラを尋問官に差し出したのは誰あろうシアである)。今作のシアはベイダーと再び対峙したとき、暗黒面の体験者としての率直さで一矢報いた。シアの葛藤と成長も描かれているわけだ。そして、それは親友を殺すことになるカルにも通じてしまう。

このゲームは、要するにダース・ベイダー予備軍のお話である。きっとプレイヤーの諸氏は、ダース・ベイダーを動かしてみたい、フォースの暗黒面を存分に使いたい、と思っていることだろう。その雰囲気を叶える役割をもっているのだ。ただし、赤いライトセーバーを使えるのは二周目から、だけど。※語弊を避けるために言っておくと、ダース・ベイダーをプレイできるわけではないし、ダークサイドの能力っぽいものはスラムとスローくらいである。

オビ=ワンとベイダーの師弟関係の別の側面を、キャラクターを変えることで描き、さらにフォースの暗黒面を使いたい欲張りなプレイヤーにもリーチした、物語からもアクションジャンルからも贅沢なゲーム、というのが、本作の正しい見方であろう。

こんな時代に闇墜ちはもう勘弁してくれ、というSW愛好者すらも、闇墜ちを愉しむしかなさそうだ……
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[ 2023/05/06 08:11 ] アクション | TB(-) | CM(0)
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