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ピカード第3シーズン第10話が決定的にダメだと思う理由

意図らしきものが解釈できるだけに完成度が低すぎる。プロットに穴もしくは綻びが存在し、ヒューマニズムを肯定するときの欠陥に繋がるから。その結果、単にエモいだけで安っぽい。

ジャン=リュックとジャックの関係だが、第3シーズン第10話以前の段階で、既にほぼ和解しかかっていたように見える。さもなければ、ジャックは実父に愛想を尽かしていたかのような姿勢を見せていた。ゆえに、いずれにせよ、ボーグ集合体に帰属することでジャン=リュックに反目する必要はもうなかったのではないか。あるいは、実父の気を引くための行いと解釈できないこともないが……そうだとすると、実に子供っぽい行動だと言えてしまう。

ドラマの意図が、認知されない息子ジャックの実父への反目とわだかまりにあるとするなら、ボーグ集合体に帰属することになる筋運びでそれを表現することは不十分、不適当である。むしろ、意図がブレる。

父親の愛に飢えていた青年ジャックを描く……というドラマだとすると、見せ方が幼稚か、さもなければ雑。ジャックの年齢は中学か高校生くらいなら。ギリギリで大学生。34歳のエド・スペリーアスが演じる姿を画面で見ている限り、そんな子供っぽい衝動のある人物には見えない。

【ポイント1】ジャックの立場から

ジャックは:
 クイーンやボーグ集合体からの同化圧力に耐えかねてしまったのか?
 それとも、単に実父ジャン=リュックに反目したいからこそ同化を認めたのか?
 本当にボーグ集合体が理想の家族だと信じていたのか?

――この辺の見せ方がブレブレである。というのも:

 ジャックは当初、謎の声に応じないようにしてきた(8話)
 ジャン=リュックとは反目していたが、やがて受け入れる方向へ柔和した
 ところが、集合体のような理想の全体主義にかぶれているそぶりを見せ(9話)
 ボーグクイーンの誘いを断るどころか受け入れてしまう(クイーンを殺せない)

ジャックはボーグクイーンの誘いに抗えなかったが、その理由に説得力が無い。どうして殺せなかったのか? その一方で、どうしてボーグの全体主義にああも簡単に傾倒するのか? 唐突で、物語展開に都合のいいように動かされている。ビバリーと一緒にレジスタンス的活動をしていた、その気概はどうして急に弱まってしまったのか?

【ポイント2】ジャン=リュックの立場から

(ボーグ集合体の中でジャックに話しかける場面)ジャン=リュックの気持ちの吐露と裏腹に、陽電子ゴーレムの肉体やラリスの存在をどう言い訳するのか。ピカード曰く、スターフリートという家族に一旦は属したものの、ことある毎に壁を感じ、人生に違和感を覚えたからこそ、ブドウ農園で孤独に死ぬのを待っていた、のだという。しかし、第1シーズン終盤では、死ぬのを待つどころか進んで不死身にすらなった(周囲の者がジャン=リュックの本心を無視したことになる)し、第3シーズン第1話では、ラリスとどこかに出かける準備でウキウキしていたのではなかったか。

ボーグとの同化を愛の力が妨げる、というエモさ。この場面の演出が感動大作まがいで安っぽい。(そんなもの、ボーグの同化の前では、そもそも無意味だったはずなのに)

ボーグのメタファーがカルトへの入信と脱会であること(親の立場からの青少年への身近な教訓)。わざわざ、スタートレックのドラマで扱われるべき話題か? 最大の欠点はココ。かように親子像を描きながらも若者受けを狙うアクション演出で攻めてるが、成功していない。視聴者層としての市場イメージがズレまくっている。例えば、教養のある、英語圏の保守層の親が子供に見せたくないと感じる残虐演出や言葉遣いが多すぎる。対象の若者にとってはイケてない(古臭い)上に説教臭い。

【ポイント3】設定の立場から

TNG、VOYを視聴した範囲における設定からすると、ボーグ集合体の中で個対個の会話はおそらく出来ない。集合体に接続されると、個は消えてしまうため。セブン・オブ・ナインのように、ユニマトリックス・ゼロに入れる者であれば、夢として互いに会話できるはずだが(ただし、その記憶は通常では残らない)。端的に言えば、ドラマを成立させるための設定無視。ところが前述のようにドラマの立て方がショボい。何のために設定無視したのか、という出来。
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[ 2023/04/27 21:03 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)
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