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AIお薦めによるビジネスモデルを是正するには

近年、AIを用いたプラットフォーム企業への批判が増している。それはなぜか、Project SyndicateのHow to Fix the Platform Economyから、要約してみる。

プラットフォーム企業は、彼らが開発した「コンテンツを推薦するアルゴリズム」を用いて、人々の関心を引くコンテンツが表示されるようにしている。これは広告収入を得るためのビジネスモデルだが、表示されるコンテンツとは、偽情報、妬み、不安、怒りなどのメンタルを刺激するものだ。

もし、検索アルゴリズムがお薦めするコンテンツが搾取的、操作的であるなら、その責任はAIではなく、担当者、すなわちプラットフォーム企業が負うべきだろう。なぜなら、AIの学習(トレーナー)においては、人間の意思決定が関わらないわけがないからである。

アルゴリズムが表示した動画やツイートや投稿が、ニュースの発信源としての役割を担うとするなら、既存のメディアと同様に、従来の名誉毀損法が適用されるべきだ。

例えば、ドナルド・トランプ前大統領による不正選挙の主張を、Fox Newsが故意に広めたのならば、前大統領の主張が虚偽であることを知っていたFox Newsの幹部は、ドミニオン・ヴォーティング・システムズ社からの損害賠償請求に応じなければならない。ネットで同じ嘘の流布に加担したプラットフォーム企業も同罪になるのではないか。

AIによって能動的に押し出されてくるコンテンツは、従来の出版が強化されたものとみなされるべきだ。AIがより発展すれば、プラットフォーム企業が持つ、人間のメンタルへの影響力と支配はますます増加するに違いない。特に若者のメンタルヘルスへの影響が考慮されなくてはいけない。

しかし、プラットフォーム企業はこうしたコンテンツの内容に対しては法的責任を負わされることはない。その根拠は、1996年のCommunications Decency ActのSection 230にある。表示された第三者のコンテンツに対する責任の免除が述べられているからだ。

プラットフォーム企業には、細心の注意を払ってAIを開発する義務があるし、社会的に問題のあるビジネスモデルを改善しなくてはいけないはずである。

問題の解決法として二点が上げられる。

1.既存のオンライン・ソーシャル・ネットワークの最大手を解体して、競走を促す。

 これにより、コンテンツを推薦するアルゴリズム自体とそのトレーナーが大手のプラットフォーム企業だけの独占ではなくなる。そして、公共の利益を促すために、携帯電話番号のポータビリティ制度のように、利用者が同等の複数存在するSNSへと自由に変更できる仕組みを作る。そうすれば、1社が提供するお薦めが気に入らないユーザーは他社へと乗り換えることが出来る。

2.政府が、デジタル広告の販売を通じて膨大な量のユーザーデータを収集して収益化するビジネスモデルに対して、課税する。

 データ収集自体にも制限を加える。これにより、別のビジネスモデルが生まれる理由ができる。さらに、未成年に対して宣伝されるデジタルコンテンツに、高い税金を設定する。タバコとアルコールと同様に、青少年への害となることを広めた収入に対して、課税額が高いことは適切だろう。その税収入は青少年のメンタルヘルスに対する施策に充てれば良い。どのコンテンツが青少年への害なのかは、AIによる推薦アルゴリズムに尋ねれば良い。

――以上が要約ですが、私自身の感想も述べておきましょう。

番号ポータビリティ制度とまではいかなくとも、現状、ある程度の検索エンジンの使い分けはできますね。グーグル、ビング、ヤフー検索など、あることはあります。ただし、記事の懸念と同様に、検索エンジンがアウトプットするアイデアやアイデンティティーを、大手プラットフォーム企業が恣意的にしないという保証はありません。思わぬところで、色の付いた情報を呑まされている可能性は、もうあります。偽情報については、リテラシー教育だけではどうにもならないところまで来ています。

デジタル広告に対する課税はあってもいいと感じます。データ収集は消費者のデジタルクローンを作ることに利用できるわけで、フィクションで言うなら、WEST WORLD第3シーズンのテーマです。個人情報の利用制限だけでは不足でしょう。

AIにおける不安というのは、大手企業の独占力に対する不安です。いっそのこと、政府が公共的な施策にAIを活用してしまえばいいのでしょう。もちろん、そこでもAIに対する不満や不安が噴出するでしょう。しかし、例えば、(岡田斗司夫が著作の中で述べているように)政治的判断をAIの解決策を元にするのは、よいアイデアではないかと思います。

人間の政治家はAIが提案する施策の内、どれを実行に移すかという決断をもって責任を取ります。なぜなら、人間の政治家連中が行う施策は現状、とても効果的、合理的とは思えないからです。年度末に、大して破損してもいないアスファルト道路を敷き直す行政など、無駄はいくらでも見られます。もし、AIでも同じような施策が並ぶようなら、そこには恣意的な人間の操作が含まれていることがバレバレになることでしょう。AIを以て行政の監視となす、新しい観点になると思います。
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[ 2023/03/19 09:23 ] テクノロジ- | TB(-) | CM(0)
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