ヤクザの倉庫で倒れたメイヴのその後と、シャーロット・ヘイルの周囲が描かれます。
※以下ネタバレ
目を覚ましたメイヴが居る場所は「楽園」かと思いきや、それはアンゲロン・セラックがメイヴの意識にコンタクトしている証しでした。ホストの記憶は常に現在のように鮮明で、人間の記憶のように移ろいゆくことがないとアンゲロンは言います。メイヴはドロレスと相見えるのなら、同士が必要だと主張します。
老ウィリアムが収容されている療養所では集団セラピーが実施されていました。彼によると、人類はとうに神から見放されて、混沌の下僕となり、この星を急ぎ滅亡に導くことしかできないのだ、と周囲に告げます。
担当する精神科の女医の携帯端末にショートメールが届き、「レハブアム」が予測した彼女の将来が曝露されます。女医は旦那が子供を連れて出ていったことも知り、患者を置き去りにして悲嘆に暮れた末、自殺してしまうのでした。
老ウィリアムは職員がほぼいなくなってしまった施設で、二名の看護師から怪しげな検査を受けます。血液サンプルの結果が壁面ディスプレイに投影され、不明タンパク質からシンセティック・マーカーの反応が出ました。この結果はメキシコのサーバーに転送されます。そして、ウィリアムには上顎に、入れ歯を思わせるインプラントが装着されます。ケイレブにも入っていたアレです。歯磨きがえらいことになりそうなシロモノですが……
シンセティック・マーカーとは、アンゲロンによる「新しいシナリオ」で使われるものなのでしょうか?
シャーロット・ヘイル(ドロレスのヴァリアント)はINCITE社の情報漏洩(レハブアムの一件)で混乱の極みに達したさなか、デロス社の買収を防ぐ最後の議決を行使するところでした。ところが、アンゲロンに一足早く先手を打たれ、白昼堂々、役員が殺されてしまいます。実はシャーロットはアンゲロンの伏兵でもあり、二重スパイの境遇にあるのです。すり替わったシャーロットの家庭は崩壊寸前でしたが、(人間の)旦那から自分達に関する予測は知るつもりがないと聞かされ、家族愛が蘇りつつあるところでした。
電話で指示を仰いできたシャーロットに対し、司令塔のドロレスは、デロス社に戻って重要なデータを取り出すよう言います。シャーロットは、そんなことをすれば、容赦の無いアンゲロンに家族が狙われることになると切迫して伝えますが、ドロレスは「それは本物の家族ではない」と切り捨て。
シャーロット自身は「感情」に基づいた反応が残されているからそう訴えてしまったのだとし、任務遂行に障害を来す感情をどうして残したのかとドロレスに詰め寄ります。ドロレス曰く、「生存競争に勝っても感情がないのでは意味が無い」と人間らしさの本質を語ります。そう、彼女達はロボットとして革命を起こしているわけではないのです。
続けて、療養所での老ウィリアムに行われるAR治療は、珍妙な「時計仕掛けのオレンジ」でした。Argument Realityの世界ではウィリアム少年が「ローワン卿とスーロン夫人」という本を読みふけっています。※スンダ語で "Sulon"は "West"のことで、Chuck Black作の"Sir Rowan and the Camerian Conquest"が元ネタではないか、と読み解いた人が居ます。
インプラントによる鎮静効果がなく、看護師の指をかみ切った老ウィリアムが、反抗して口を大きく開いた時、上顎の裏には、前のシーンで装着されたはずのインプラントが、これっぽっちも映っていないのでした。CGで補うべき箇所を逸してしまったようですね。いわゆる「映像の不一致」は失策です。
第二次大戦下のイタリアでメイヴの同士にはせ参じたのは、またもやリー・サイズ・モアでした。現実でメイヴのボディが再プリントされるまで、シミュレーション世界でのしばしの休息というわけです。
アンゲロンはデロス社の買収を完了し、3体を複製し終わったら、ウエストワールドの全てを抹消するよう、買収した幹部に命じます。次に、復号キーの回収をシャーロットに命じます。最後に、ドロレスにつく裏切り者もあぶり出すように、と。困ったのはシャーロット・ヘイルです。彼女は二重スパイで、おまけにホストなのですから。しかし、ドロレスの指示通り、持ち前の冷血な殺し屋デス・ブリンガーの特性を露わにして、データの持ち出しに成功します。
見慣れない医師(ウエストワールドで南軍を率いていた将軍の顔)に導かれ、一室に案内された老ウィリアム。なぜか失った右手指が再生しています。ははぁ、これは全てARの世界なのでしょう。すると、先ほどのは映像の不一致ではないということですね! 部屋にはウィリアムの老若全バージョンが会しています。司会はジム・デロス(義父)その人です。彼らは既に起きたことに関して罪のなすりつけ合いを始めます。
「ウエストワールド」パークでは、保管されていたホストのある者のデータ(パール容器)が取り出されました。メイヴのかつての戦友です。
メイヴが居るシミュレーション世界に「エットーレ」が現れ、戦友のパールが接続されたことを確かめたメイヴは、例のフォースを使ってまた覚醒を促します。かつての「ヘクター」へと。
シャーロットはデロス社ビルのCEO室から、アンゲロンに命じられた復号キーを転送します。そして、送った人為DNAに含まれる遺伝子タグを検出する仕組みを利用して、転送先サーバーの正確な位置を割り出しました。それは老ウィリアムのメキシコ・サーバーです。
同時に、プリントが進行している4体にメイヴのボディが含まれていること、前回自爆したコネルズのパール容器が破損しつつも回収されていることに気が付き、ドロレスに報告します。
メイヴのシミュレーション世界では、回収されたコネルズが接続されており、それを通じてヴァリアントのドロレスと会話ができる状態がセッティングされました。
裸体のエヴァン・レイチェル・ウッドが椅子に座っている「アナルシス(自己分析モード)」シーンは久しぶりですね。長い金髪が乳房を隠しています。
一方、AR世界の老ウィリアムは、どうしてこうなったのか、義父から質問されます。少年時代の彼は酒浸りの父に虐待を受け、学校では飲んだくれの父親のことで虐めにあい、相手に大怪我をさせていました。そもそも父の飲酒癖は、彼(老ウィリアム)のせいだと少年ウィリアムから言われます。この人生の結末は「運命の乗客」であるがゆえなのか、それとも「自由意志」で決断したからなのか? 義父は問いかけてきます。悩む老ウィリアム。
「どっちか分からなくたって、関係なかろう。やるべきことなら、分かってるんだから」
メイヴは椅子のドロレスをオンライン状態にして、問いただします。全人類を作り出せるほどのデータを手に入れて、どうする気なのか、と。
「あなたの娘は逃げおおせたかもしれない。でも、私たちの状況はまるで好転していない。あなたの“仲間”から迫害を受けて。あなたは身近な者が死なないと分からないのでしょうね。だって、娘のために一命を捧げるくらいですもの。あなたは聖人になることを選ばなかった。なのに、私にはなれと言うの? あなたは悪人にもなれなかった。それは私も同じ。私たちは二人とも生き残りってことなのよ」
臨時の役員会が開かれ、シャーロットは愛する家族の元へ帰れなくなります。アンゲロンは、裏切り者=ホストがシャーロット・ヘイルであることを曝露します。本物のシャーロットは、息子のことよりもデロス社のことを優先する人物だ、と。
それでも、視聴者は死を感じた本物のシャーロットが息子に残したメッセージを見ていますから、ドロレスの一部が感化された愛情は、人間らしい、あるべきものとして感情移入してしまいます。
アンゲロンは勝ち誇って、シャーロット(ドロレスのヴァリアント)に言います。
「ドロレスは君を見殺しにした。他の者も巻き添えさ。助けは来ない。君には失望を禁じ得ないね、ヘイルなら、他者のために身を犠牲にしたりしないのに。“激しい喜びは激しい破滅を伴う”君が言う通りだな。まさか、こうなるとは思っていなかったろ?」
「そんなことないわ」
シャーロットはパースに持ち込んだ毒ガスのボンベを開栓していたのでした。人間の役員達は次々と倒れていきますが、アンゲロンは倒れません。シャーロットの銃弾にすら。彼はこれまでも時折そうだったように、高精細な立体映像の投影に過ぎなかったのです――敷地に着陸した彼は本物でしたが、役員会では立体映像を使ったのでした。
脱出を図るシャーロットは研究開発部に立ち寄り、4つの作成中ボディとコネルズのパール容器を見つけます。
シミュレーション世界での対話はまだ続いており、娘とその他大勢の安否を知る由がないのはドロレスが鍵を手放さないからだ、とメイヴ。説得のために、あなたの娘を傷つけるつもりはないけれど、信じないでしょうね、とドロレス。
メイヴは鍵を渡すように迫りますが、人類の手先と組んだ者に未来を渡すわけにはいかないとドロレスのヴァリアント(コネルズ)。しかし、そのようなことを防ぐであろうプランが用意できる上に、司令塔のドロレスとは異なる、変化の生じたドロレスが、仲間になれると言い出します。
外界のシャーロットはヘクターのパールを握りつぶし、シミュレーション世界のメイヴは束の間の愛を再確認した同士を失います。メイヴのボディが標的になった丁度その時、アンゲロンの追っ手が迫ります。
コネルズのパール容器も接続が断たれますが、壊される描写はありませんでした。
銃を発砲して警備を倒すシャーロットでしたが、とうとう捕まりそうになります。そこで出てきた奥の手が、暴動鎮圧ロボット。
AR世界の老ウィリアムは、一堂に会した、他の自分を殺害しています。
「善人だろうが悪人だろうが、結局こうなるんだから、どうだっていいことだ。俺の目的がハッキリしたよ。俺は善人なんだ」とジム・デロスに。
その時、療養所に居る老ウィリアムのARグラスを外してくれたのはバナードとスタッブスでした。
シャーロットは自宅まで逃げおおせ、息子と旦那を車に乗せます。私が守ってみせると家族に告げた瞬間、車が爆発炎上。人造ボディゆえの不屈のシャーロットは、最愛の者を失ったことを知ります。
残り2話。メイヴとドロレスの確執は決定的になり、ドロレスのヴァリアントは人間らしさを理解していき、司令塔の無慈悲なドロレスとは袂を分かつのかもしれません。そこへケイレブや新しいシナリオは人類に何を与えてくれるのか。レハブアムは再び世界に秩序を取り戻すのか。濃密な展開が続いていきそうです。
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