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スタートレック:ピカード第10話「理想郷(後編)」

最も厳しい評価を下さねばなりません。とにかく志が低く、このスタッフではどう転んでも優良な作品は作れないことでしょう。かつてのシリーズにあった、理想や人間性に思い巡らす物語は、ご都合主義で安っぽい三流の感動超大作にすり替わってしまい、もはや見る影がありません。

※以下ネタバレ

終末神話のガンマ・ダンをナレクが語ります。要するにヨハネの黙示録の四騎士と同じ。双子の悪魔の辺りだけは東洋っぽいですが。アホらしいですね。10話も使っておきながら、たったの一分で済む、20世紀末に流行った世界の終わりを、なんでか24世紀末のスタートレックでやるという。

ラフィー「ね、だけどホントに、そんな話が予言だって信じてるわけ?」

ナレク「いや、歴史だと信じてる――そして歴史の興味深い点は、常に繰り返す、ということだ」

このセリフを書いてる人達の頭の程度が知れますね。中二病のラノベの方がマシじゃないでしょうか。これの書き手、こんなのでよく仕事があるなァと思えるほどです。

題材が迷信に則った非スタートレックで、登場人物達のお喋りでこれまで引っ張った謎が明かされ、ここまでの経緯と同様、まるで工夫がみられません。

しかもロミュランなら誰でも知ってるくだらないネタである、と。おんなじ事を繰り返しやって、何度も登場人物に口頭で繰り返し解説させ、作り手達は莫迦なのかなと思います。説得力のある場面を拵えることすら出来ない有象無象しか、スタッフには居ないのでしょう。

オープニングにクレジットされるプロデューサーの数を見てご覧なさい。こんだけの人数が出演者や脚本家と同列にクレジットされるドラマなんて、そうそうないでしょう。いかに資金を出した者が優遇されてるか、という富裕層が牛耳った駄作の証しですよ。

進化した人工知能って実はQなのじゃないか、とかファンは考えるわけですが、そんな構成を上手くあしらえる人はこの中にはいませんよ。スタートレック:ディスカバリーの球体に接触したコントロルの亡霊なんでしょう、きっと。

最終話だというのに、筋の展開がお粗末です。登場人物を集めて早くも一致団結させる方向に持っていくだけ。あれほどクライマックスを煽っておきながら、拍子抜けもいいところでしょう。前回一本かけてハラハラドキドキを演出しておいたはずが、すぐに安定的な分業体制と分かる状態に戻ってしまっていて、意味がありません。どこまで行ってもドラマの盛り上げ方を知らない人達の平常運転です。

リオス船長からラ・シレーナ号を取り上げて、老人ピカードをキャプテン・シートにつかせるのですが、「待ってました!」と手を叩くのは子供っぽいファンだけでしょうね。大人になって久しいファンは、そんな小手先の子供騙しにはもう引っかかることが出来ません。

愚行は、恐怖が支配したゆえの行いで、命の価値を示すために分かりやすい方法として手本を見せるのだ、とピカードが言います。スローガンありきで、恐怖が云々とか、ちっとも伝わってきてませんからねぇ。で、やることと言えば、プロパガンダっぽい、出来の悪い、英雄的な行為を称える特攻だけ。ほとほと救いようがありません。そんなもの、日本なら42年前に「さらば宇宙戦艦ヤマト」で使われた古臭い手ですよ。

アルタン「結局、お前は我々と大して変わらない」

スタッフには、アルタン(ブレント・スパイナー)を悪役にできなかったヘタレがいますね。作り手はファンを見下してると思います。そのいい加減な姿勢を見れば。設定ひとつたりとも、敬意を払った上で流用していませんから。目先の便利な小道具としか見ていません。精神融合するスートラ(アンドロイド)がいい例です。ヌニエン・スン博士の息子設定なんて、意味が無いでしょう。

リオス船長らは、超存在への送信を中止させるために電波塔を破壊しようとしますが…… ソージの自発性に全てが委ねられます! ご覧あれ! という筋書き。

視聴者に向かって、そう上手く運びませんからね、と焦らしてるわけなのですが。ソージの葛藤の土台となるドラマがこれっぽっちも描かれてないのですから、焦点を当てるべき段階が踏まれてないわけですよ。見応えに繋がらないですね。

オウ准将(ロミュラン大艦隊を率いて)「惑星全体を残らず駆除する」

オウ准将がそもそも間抜けですよね。シンスの使節団を抹殺する指令を出した後で、その故郷を知りたい、とあと9年もかけてるんですから。

その場で殺害しないで故郷まで案内させればよかったのに。

しかも、シンスを破壊者と決めつけたのは、単にデータと同じ外見的特徴を持っていたから、という根拠だけですし。アロンゾ・バンダミア艦長の事件を映像で回想しないから、チンプンカンプンで頓珍漢にしか見えません。

ボーグと女ロミュランのキャッツファイト…… 泥んこプロレスでも見ていた方がなんぼかマシでしょう。

3年目の新人ソージが、スートラに代わってシンス達を率いる裁量権を得ます。アルカナはどこへ行ってしまったのでしょうか。指導的立場のアルタンはなぜ口を出さないのでしょう。24世紀でもサッカーボールを持っていたリオス船長は、さっきまでそこに居たのに。カメラは都合の悪い者を一切写さなくなります。

ピカード「君と君の仲間にあるものを差し出すつもりだ。それで考え直して貰いたい」

ソージ「それは何?」

ピカード「私の命だ」

止めて欲しいですね。旧来の登場人物が再来する時は、だいたい、その最期を描くためではありますが。この死に方には、百害あって一利なし。全体が非常に安っぽくて薄っぺらいドラマに終始しています。

第2シーズンを制作中とのことですが、第1シーズンの反応を見た上でだったなら、打ち切り必至だったでしょう。こんなに酷いドラマを見たのは本当に久しぶりです。

シンスから借り受けた魔法の道具一つで、大艦隊に立ち向かう戦法を作り出します。スタートレック:ピカードには、見たこともない便利道具がたくさん出てきますが、どれ一つとして説得力がありません。結局の所、魔法の道具でしかないから。その究極の道具は、とうとう、もっともらしい見かけすら放棄してしまいました。

USSジェインウェイ……臨時艦長のライカー……

オウ准将「それで?」

子供っぽい部分にしか喜ぶべき場所がないんですよ、本当に。大の大人が見る映像作品としては最底辺でしかなく。

ライカー「だから、嘘つきタルシアーのケツを、思い切り蹴飛ばせる口実を与えてくれるなら、こんなに嬉しいことはない」

「タルシアー」を脚本家に置き換えたい気持ちですね。本来は「ジャット・ヴァッシュ」が相応しい固有名詞なんですが。どういうわけか、律儀なことに、この場面には以心伝心の手法を使わないようで。無知なライカーだって、ジャット・ヴァッシュが一枚噛んでいる事実を、復帰してすぐに耳にしないはずがないでしょう。

どうしてフェイザーを頭に当てて引き金を引かなかったのか、とナリッサ・リゾーがキャットファイトの最中にアニカに尋ねます。それというのも、その前の場面でアニカがエルノアに向かって、終わらせるにはフェイザーで頭を、と発言したことを受けているからです。

このように、その場に居合わせなかったのに、脚本家は、以心伝心したかのように応じたセリフを言わせています。なぜなら、ナリッサはドローンで監視していたから、としたり顔で言い訳するわけです。その為に、あのドローンが浮遊するカットがあるんだ、と。

そういう予防線ばかりなんですよね、この脚本は。場面の妥当性を担保するために、後付けセリフをわざわざ言わせることは常習です。たったそれだけのために。有益で説得力のある場面を作ることはせずに。論理武装しかできない未成熟なオタクのようです。

とうとう、病に冒された老人ピカードを精神転写することになりました。これまで具体的な症状は出ていなかったはずなのに、周囲に告知したとたんに、さも唐突に症状が出てしまいます。ご都合主義が過ぎます。

アグネス・ジュラティ博士はシンスの母親として子供達を庇う役目を担わされるのかと思っていましたが、結局、ただの便利屋二号でした。視聴者をはぐらかすトリックで、死亡フラグをなかったことにしました。

ちなみに便利屋一号は“麻薬常習者”ラフィーです。スタートレックの世界において、わざわざ薬物中毒を出すことの意義があったとは思えません。数多ある見栄っ張りな設定の一つでしかありませんでした。

劇中、一度として命を救うことのなかったハイポスプレーが、ここでも老人ピカードの命を縮める役を負います。既存のものは、すべてアンチの役割を担います、この脚本では。

ピカード「ここにいる理由は、救い会うためだ」

今更感。ジーン・ロッデンベリーのフォーマットを採用していれば、わざわざセリフで体現させる必要のないことです。聞き心地のいいことのようでいて、その実、無意味です。何ら質的向上に繋がりません。人々の行動を通じてではなく、セリフでしか表せない。安っぽい感動をお届け~三文芝居。

ピカード「君に選択させた。破壊者になるかどうかは、君次第だった。常にそうなんだよ」

視聴者ターゲットは若い層なんでしょうか。いくらなんでも志が低すぎますよね。大御所になった老人が、教育めいたメッセージを作品に入れたがる傾向はあるものですが、これは私物化が過ぎ、あげく、シリーズが作り上げてきた世界観を台無しにするものです。パトリックこそ、この作品の破壊者に他なりませんでした。

作品のマーケティング戦略としては、旧来のフォーマットを否定していたり、ゴア表現があったり、TNGのように家族で見ることが出来なくなったとあちらのファンに嘆かせたりしている通りに、賢いとは思えません。どんな視聴者層を念頭において作品作りをしているのか、その出発点からして揺らいでいたわけです。懐古厨がもっとも見るであろうし、その期待を故意に裏切った上で、それほどまでに失敗したいのなら、もう何も言えません。

クリストバル・リオス「二度とやらないと決めたことをまた守れなかった」

パトリックの本音か、はたまた、駄作になることが分かっている企画を受けないと決めた脚本家の心中か。失笑しましたわ。

アニカ「死ぬに値すると言うだけで殺さないこと。なぜこんなヤツが生きてると、感じるような者でも」

またもや常習犯の脚本。バイセクシュアルのアニカがお相手のブジェイズルを第5話で殺した理由を後付けで後悔させてます。言い訳がましい理屈ばかり。作劇として、「それで済むのか」問題です。

登場人物が事後の座談会で「あの時はね……」と、軽々しい振る舞いだったことを吐露して、視聴者の何になるというのでしょうか。(アメリカ人らしい社会道徳を想起させる)断酒会のつもりなんですかね? 

俺が見る米のドラマで出てくる断酒会の場面は意図がよく通じる賢い作りのものばかりですが、これはダメダメです。だから、なんなんだ、と。なら、軽はずみな行動を慎むように自制を利かせたあげくの行為だろうし、その葛藤がまるで表されてなかったじゃないか、と。自信満々でフェイザー二丁拳銃しておきながら、後付けで免罪符のように語るなよ、と。それなら、警察いらんだろ。

データ「これは超復号量子シミュレーションというものです」

ピカード「データ、私は死んだのか?」

データ「はい、艦長」

死後の会話まで出てきてしまいました。そして、頑なにStardateを使わない演出。これは(大仏のミニチュアがちょうど真正面に映りますが、)クリスチャン的天国の、幸福な情景として単純に映像化されているのでしょうね。それ以上の深い意味を求めるのは不毛でしかありません、なんと言ったって地獄だの、黙示録だのを出すような脚本の質では。

はい、ご想像の通り、ピカードは新しい肉体で復活しました。酷い。下らない。全くありがたみのない復活劇は極めて珍しいものですね、スタートレック:ピカードそのもののように。

「私は行くべきか?」

「はい、艦長」

いえ、もう無かったことにして宜しいと思います。これはカノンには相応しくありません。

データ「死ぬべき運命が、人の命に意味を与えているのです」

なら、ピカードが復活してしまうことはどうなんですか? 仏教の輪廻やカルマを囓ったとでも言いたいのでしょうかね。キリスト教じゃなく。

ピカード「私は本物か?」

ソージ「そうに決まってる」

ソージが偽物の自分を克服したゆえのセリフとはいえ、何も語らなかった脚本――のうのうと登場人物が喋る以外は――の説得力の無さ! 汚点として残る最悪のハッピーエンド。

ピカードの似姿をそんな短期間で再現できるなんてさすが24世紀ですね(棒) 

復活したなら、せめて若返らせてやればいいのに。普通、爺のままでいたいとは思わないでしょう。

アルタン「何かを新しくすると嫌がると思ったんだよ。そうだろう? 94年も、同じ顔と体を使ってきたんだから?」

アグネス「私たちが作った細胞向上性アルゴリズムで、脳に異常がなければ、これぐらい生きただろうという寿命になってる」

ピカード「それは10年くらい大丈夫と言うことか? 20年?」

ヒドイを通り越して、唖然。ま、第二期でも老パトリックをこき使う予定なので仕方ありませんわな。

ピカード「彼がずっと目を向けていた人間とは、暴力的で堕落していて意図的に無視をする。だが彼は人間に思いやりや、限りない好奇心や精神の偉大さを見いだした」

24世紀、TNG劇中ではそのような人間は20世紀から蘇った3人(「突然の訪問者」)くらいでしたね。ほとんどの人は言葉遣いも丁寧で自身を文化的に向上させようと趣味に没頭する、人柄の善良な連中ばかりでした。貧困が撲滅された世界ですよ、ピカートが喩えるような粗野な人々は当時の地球にはもういません。

最期を迎えたのは誰ならぬデータでした。そして、データとはジーン・ロッデンベリーの暗喩だったようです。さようなら、ジーンとその理想郷! もう、第2シーズンでも会うことはないよ! スタートレック・フランチャイズは金持ちの悪魔の手に渡ってしまったからね!

とても滑稽でした! 以上、通信終わり。
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[ 2020/03/28 11:31 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)
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