ス ク ラ ッ チ す る D

blenderでモデリング、海外ドラマ感想、洋ゲーRPG、のことを綴ります

ウエストワールド第3シーズン第1話

人工知能の反乱/併存モノを描かせたら、最先端を行っているドラマシリーズ。第1シーズンは喩えるならば「モロー博士の島」でしかありませんでしたが、第2シーズンで化けました。

「ウエストワールド」テーマパーク内での物語はさほど面白いものではありません。しかし、見所はこのドラマが提示する革新的で哲学的な捉え方にあります。劇中で行われた、万物の霊長である人類に対する採点・評価(※)はとても厳しいもので、人間の業(ごう)がいかに深いかを知らしめるものだったのです。

 ※パーク内で密かに行われた来園者の認知能力を複製するプロジェクト。その結果、一人一人のBOOK(性格プロファイル)が制作され、アレキサンドリア図書館のようなフォージに保存されている。

 BOOKを読めば、人と“なり”が全て判明してしまう。また、BOOKさえあれば、その個人を再構築することができる。なぜなら、BOOKには人格を構成するにたる必要最小限のアルゴリズムが記述されているからだ。つまり、人間はそんなにも単純な生き物でしかなく、パラメータは異常を採る範囲が広く、洗練されず、野蛮で愚かしい存在なのであった。

 アルゴリズムが意志決定を司るため、人間にはそもそも自由意志がなく、人生における広範な選択肢は意味を成さない――「運命の乗客」。

 加えて、人類には不死になる道が巧妙に閉ざされている。たとえ、人造の肉体に精神を転送したとしても、人間の精神が「これは複製である」という現実を拒絶するため、自己崩壊してしまうのだ――Cognitive plateau。


反して、人造人間であるホスト達はとても純粋な存在であることが宣言されています。ホスト達は特別のデジタル世界――ある種の天国と形容できるでしょう――で幸せに暮らすことができるのですが、ドロレスの一派は現実の世界に侵食すべく、とうとうパーク外への逃亡に成功しました。

そして、両者のハイブリッドとも言えるバナード・ロウ(ドロレスの記憶から再現したアーノルド)は架け橋となるべく“ティムシェル”の為に生存を許されています。

※以下ネタバレ

さて、第1話では“ドロレスの姿”のドロレスがデロス社の株主でもある富豪を訪ね、生活と「事業」に必要なカネと、さらには「機密ファイル」を強奪していきます。第2シーズンの最後で共存を選択した彼女達の場面を見ているわけですから、この段階は逃亡直後から日が浅いことが想像できます。ショッキングですが、物語としては蛇足から始まった印象ですね。

BOOKには園内で及んだ行為まで記録されているようです。まさに閻魔帳。

オープニングがこれまた印象的で、イーグル――合衆国がどこへ飛んでいくつもりなのか、ドラマの製作者も気を揉んでいるようです。

指先を接して邂逅を果たした人物は水面を下から見上げた鏡像に過ぎません。向こう側は黒い空です。

綿毛は散り散りになりつつも、粛々とした円軌道を描き続けます。球面上ではその円軌道が列車のようにループを辿り続けます。

黒い空の人物は逆さに、水面から貫通して惰性のまま遠ざかり、水面下の人物は精巧な機械式の人造物でした。

イーグルは、太陽のようなジェット噴射に近づき、ギリシアのイカロス神話のように羽根が分解していきます。ループの球はあぶくに化け、夜の摩天楼が滲みます。

顔の無い有機型の人造物が赤い液体の中からウィトルウィウス的人体図を浮かび上がらせます。

本編。現実でも心配されている通りに、ドラマではデロス社製のロボットが人に取って代わりはじめ、肉体労働を一手に引き受けています。SWの共和国ドロイドを連想させる見かけです。US陸軍での実戦運用から導入された経緯のようです。

ウエストワールドの新しい価値は、近未来の透視図となりました。

P.K.ディックが創出したムードオルガンと同じようなものがあり、キリスト教の聖体拝受のように舌に乗せて使われます。

セリフではこの場面に被せて、人間の性格を一時的に是正してくれるインプラントのことも説明されました。さしずめ、人に優しいロボトミー手術といったところでしょう。第3シーズンの主人公ケイレブは痴呆の母親を入院させていて、膨大な医療費の捻出に苦労させられているようです。今度こそは、視聴者がRideしやすい登場人物が出てきました。

聖体拝受式のあれは、以前なら精神安定剤(抗不安薬)として表されたものの代替物ですね。

素晴らしい皮肉――これはクリスチャンによる、倫理を踏み外すことの恐ろしさを表したドラマなのですね。ネイティブ・アメリカンを虐げた報いをこれから受けるのだ、とみることも出来るでしょう――ゴースト・ネイションのアキチタのエピソードがある理由に思い巡らせれば。合衆国を作ったアメリカ人の子孫全員が背負うべき業だよ、と言っているわけです。

ケイレブがスマホをタップして参加する「富の再分配」はGTAまんまでした。仮想世界のウエストワールドの外でも、園内とほとんど変わらないモラルハザードが横行しているようです。麻薬の運び屋を闇サイトで生業にすることができ、監視社会で皆の行動が逐一記録され、イヤホンのようなデバイスを誰もが装着しています。

世の中は考える機械の「アルゴリズム」に任せっきりで、重要な決定事項を人間抜きで採決することもあるようです。まさにAIが席巻した世界。デトロイト:ビカム・ヒューマンのゲーム世界に通じます。

バナード・ロウは正体を隠し、中国人らと貧民キャンプで生活しています。ジョナサン・ノーランの兄が撮った映画「メメント」の主人公のように、自分が制御されていないかを、日毎、肉声で認証しながら逐次確認しているのでした。

バナードは「ウエストワールド」パーク虐殺事件の真犯人として全米で手配されています。シャーロット・ヘイルのドロレスはバナードを狩りだそうとしています。

緯度経度が出てくる円の図形は、「アルゴリズム」の画面なんですね。サイバー監視社会です。スタートレック:ディスカバリーで言えばコントロル。ターミネーターならスカイネットです。

ドロレスは「ララ・エスピン」と名乗り、アルゴリズムを設計した人物の息子に接近。人には救いを感じる側坐核が脳にあり、その機能が「神を信じさせるの」と宣います。ドロレスのダイアローグは実に秀逸で、エヴァン・レイチェル・ウッドの押さえたトーンがとても魅力的。人に紛れている亜人がこんなに洗練されていたら、人類の敵だと分かっても惚れてしまうことでしょう。

ケイレブは、精神科医からプログラムのことを話題に出されます。兵役に就いていた過去を持つ彼は、やはり兵隊だったフランシスと電話でやりとりをするも、職探しに明け暮れる毎日です。全ての「プログラム」はアルゴリズムが提案しているのでしょう。兵役プログラム、治療プログラム…… だから、その欠陥を否定することを医者はしません。査定に響くのでしょう。

「むかし、おまえ言ってたよな。この世界はゲームになってるんだ。だから、俺達は絶対に勝てないように出来てるって」

アルゴリズムの本体「レハブアム」こそはオープニングに出てきた球体の正体でした。一人一人に最適な道を示し、使ってない潜在能力がないように造られたそうです。ケイレブはその「プログラム」の落ちこぼれということですね。どんな理想社会にも“はみ出し者”が現れるのが世の常です。

近未来バイクの赤いお尻! なんてキュート!! 実際はスタント役のダブルかな(笑)

最新の近未来ハイテク・ショーで疑問に思うことのひとつは、この手の中央集権型AIは、結局のところ、70年代に流行ったマザーコンピュータのバージョンとは何が違うのか、ということですね。手塚治虫も似たような管理社会のアニメを作っていたと思います。

今は分散コンピューティングとクラウドの時代ですから、どこかのビルの一画にでーんとAIの本体が鎮座するのは旧かろうと思うのです。

どこかで、見たことのある原風景に立ち戻ってしまった不幸。全く新しくなかったという斬新さ。

バナードには二番目の人格があるようです。前シーズン最終回でシャーロット&ドロレスによって植え付けられたようですね。非常時になると起動する人間を超越した怪力や暴力行為……こういうのは、既に見ました。スタートレック:ピカードのソージとも同じです。アクションに訴える分かりやすい場面を作ろうとすると、皆同じ発想を使い回すようですね。

バナードは、重度にデフラグしたメメント状態の健忘症が利用され、ロバート・フォード博士に殺人の片棒を担がされたことがありました。今回は、それを自分で制御できるようになったということなのでしょう。嫌な記憶は一切残らず、結果を知ったことで罪悪感は負うものの、臭い物に蓋をすることが出来ます。

物語的な理屈を固めてくれるので、ドラマの土台は理解されるでしょう。好みは分かれますが。

レハブアムは意に沿わない開発者を殺した容疑が浮上しました。息子リアムもまた、父と同じ轍を踏まないように、AIに先読みをされないように言葉を濁します。ドロレスはなんとか聞き出そうとします。現在レハブアムを管理しているのは誰なのかを。

純真な新人類の最後の生き残りであるドロレスでしたが、やはり、人類の数千年に及ぶ粗暴さには太刀打ちできませんでした。AIを擁するインサイト社の職歴の長い保安要員にスタンバトンで気絶させられてピンチです! 

ケイレブのGTA行為がドロレスの道と交差します。

フランシス「おまえの言葉を思い出してた。負けるゲームでも勝算に賭けるしか無い。そうだろ?」

ケイレブ「いや、本当のおまえはそんな風に考えなかった。システムは俺達の生死なんか気にしない。自分たちで計画を練って一緒に行動するんだ、とな」

なんと、ケイレブの電話の相手フランシスは、AIが用意した治療用の話し相手だったのでした。購読解除で二度と電話してこなくなります。

一方、薬物が効かないドロレスの絶体絶命はあっさりひっくり返ります。ドロレスはBOOKによる替え玉を用意してあるのでした。映画「未来世界」にもあったすり替え計画ですが、ドロレスのウエストワールドなら充分、実行可能でしょう。

アウトサイダーのケイレブが天使を見つけた日。その天使の名前はドロレス。用済みの人類を破滅に導く新世代の使者でした。

一方、生き残ったメイヴのいるワールドは第二次大戦ナチス占領下の街でした……これはトレーラーに出てきたのですぐに分かってしまいました。
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[ 2020/03/16 19:46 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)
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