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スタートレック:ピカードの暗部

反トランプ大統領、反ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)を暗喩する政治色が、スタートレック:ピカードに影を落としている、というのが北米視聴者の専らの理解。

ピカードを演じる俳優のパトリック・スチュアートが自ら、反トランプ、反ブレグジットだと公言しているのだから。Patrick Stewart anti-Trump, anti-Brexitでググってみればいい。

政治との関わりをTVドラマにまで持ち込んで欲しくないと思う。

確かにスタートレックは時代色を反映したエピソードを作るのに格好の骨格を持っていて、実際にそういった使われ方もしてきた。でも、それはセス・マクファーレンのThe Orvilleが行っている範囲で留めておいて欲しいものだ。それより先は、現実の我々が考えるべき事であって、ドラマで指図されるいわれは無い。

惑星連邦が孤立政策に苦しみ、ロミュラン排斥を止めないのは、こうした理由なのだった。

劇中のピカードがスターフリート代表にFワードで「もう貴方の故郷では無い!」と返される場面は、おそらく、P.スチュワート氏がアメリカ・イギリス両国をFワードをもってして批判する事実から来ているのだろう。

Sir Patrick Stewart Says New ‘Star Trek’ Series Will Take On Trump, Brexit

“Picard,” he notes, is “me responding to the world of Brexit and Trump and feeling, ‘Why hasn’t the federation changed? Why hasn’t Starfleet changed? Maybe they’re not as reliable and trustworthy as we all thought.”

Stewart goes on to describe both the United Kingdom and the United States as “f***ed.”

なにせ、ドラマがそのように企図されるのはP.スチュワート氏の意向によるものだそうだから。

‘Star Trek: Picard’: Patrick Stewart on Why He Returned to the Final Frontier

On Jan. 23, CBS All Access will debut “Star Trek: Picard,” a series in which Stewart reprises the thoughtful, cultured, bald starship captain he played for seven seasons on “Star Trek: The Next Generation” and in a string of four feature films that ended in 2002. The new show is different from its predecessor in nearly every respect — texture, tone, format, production value, even the likelihood of characters dropping an f-bomb. That’s all by design. Stewart’s design.

これは果たしてジーン・ロッデンベリーが考案したスタートレックの世界だろうか? ドラマの私物化と言っても差し支えないようにも思える。

実は、The Orvilleにもブレグジットに似た情勢が登場する。こちらも、またもやAIに絡めたプロットで、個性的な発想など、この業界では求められていないのであろう。似たネタでありながら、物語の作り方がどのように違うかを見てみよう。

※以下、ネタバレ含む

■宇宙探査艦オーヴィル シーズン2第12話「歴史の一歩」概要
 女性の存在を認めないモクランでは、女児が誕生した場合に密かに脱出を助ける組織がある。そうした女性達が暮らす植民星の存在が、モクラン本星に知れてしまった。オーヴィルのキャプテン エド・マーサーは、この植民星を惑星連合へ加入させることが突破口になると踏む。ところが、モクランは惑星連合からの脱退をチラつかせて、それを阻もうとする。惑星連合は有機生命体抹殺を企むAI種族ケイロンの脅威を目の当たりにしており、武器供給元であるモクランの脱退だけはなんとしても避けたい。

――さて、ドラマの答えは妥協案であった。惑星連合は、モクラン女性の住む星の加盟を認めない。モクラン女性の代表者は、女児を脱出させる組織を解体する。モクラン本星は、モクラン女性の住む星を攻撃しない。

合意を形成することこそが民主主義のプロセスであるので、具体的な妥協案を導き出すことはとても重要。たとえフィクションの世界であっても(過半数による“暴力”は民主主義とは言えない)。

実にTNG的で素晴らしい。視聴して貰えば一目瞭然だが、人道的な仲裁を描いた場面がコメディタッチで微笑ましい。こうした一話完結エピソードの作り方はとても理に適っている。

設定を歪めることで、リアル指向の反面教師を促すスタートレック:ピカードとは好対照である。どちらが賢い作り方だろうか? ピカードのやり方は、ドラマの質の向上へは貢献していないようだ。

政治的なメッセージでアジって旧来のトレッキーを苛立たせるのが得策であるか、キャプテン・ピカードとは違って、P.スチュワート氏にはそれが分からなかったようだ。自身の出演作に、客観的な娯楽作品としての価値をもう一度考えてみるべきだったろう。
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[ 2020/02/28 15:41 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)
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