こういったエピソードの方がオーヴィルは強い。第10話は極めてTNG的な筋立てで若干の独創性もあったものの、殻を破りきれなかった――目新しくはなかった。
※以下ネタバレ
翻って11話は「もし、350年前の女性に惚れたら?」というもの。余談ながら、オーヴィルの世界は25世紀だそうで、だとすると(科学水準はさておき、)350年分の進歩はしていないように見受けられる――メタ的な理由付けで現世に通底しなければならないフィクションであり、ある種のスタイルでもあるから、致し方なかろう。
2019年から350年前の暮らしぶりを見れば、それがどれだけ違うか想像に難くない。衣服に留まらず、話し言葉、常識、何もかもが即興で理解可能なほど等しくはならないだろう。25世紀からでも、やはり、かなりの差がなければならないはずだ。
さて、ホロデッキで作った人物に恋をしてしまうパターンは過去にも多く見られた。今回は実在した女性のシミュレートであるところが決定的な差として、微笑ましい色を添える。
作り物である場合、人は自分に都合のいいように状況を改変することができる。しかし、シミュレーションでは、あるパラメータを削ぐことは全体像を変えてしまうことに他ならない。
キャスリン・ジェインウェイはマイケル・サリヴァンを自分好みに作り替えて、楽しいひとときを過ごすパートナーに仕立て上げた。しかも、この試みは何らマイナス面を生まなかった(キャスリンを自己嫌悪に貶めたが)。
* VOY第131話「愛しのフェア・ヘブン」
ゴードン・マロイのローラの場合、改変は上手く行かない。彼女の男性経験が、ゴードンの好きなローラを形作っていたせいだ――実に人生の本質を突いていて上手い。
地中のタイムカプセルが発掘され、未来に影響を与えるという着想がとても面白い。モクランがタバコによってニコチン中毒になる反面教師ぶりは、現代の愛煙家に是非とも見せたくなる。
今回のゴードンは、TNG後半のジョーディの立ち位置にいるようだ。好人物にもかかわらず、恋愛経験が乏しくてモテない。ギークな視聴者の代理なのだろう。とはいえ、ゴードンはエピソード毎に多少、人格が揺らいでいるように思われる。奥手だったり、自信家だったり……
ところで、脚本家が空想の恋へ下す結論はどれも同じだ。曰く、
空想は卒業しましょう。現実を受け止めて、“いつか”に備えておきなさい。救いは、そこに優しさが垣間見えること。
TNG 第54話「メンサー星人の罠」と第90話「ギャラクシー・チャイルド」はこの類いの先駆けで、負けず劣らず秀作だ。
“いつか”が無かった人はどうするんだ! I can't answer that.
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