オタクの使命彼女ナシ・子供ナシ・その他社会的優位な地位などナシの3Nというオタクがいるとしよう。彼には、もう自分の遺伝子を残す手段がない。だから、彼はオタクとして馴染んだ文化の一端や、彼の大好きな二次嫁を複製して残すことを考える。二次嫁の複製とは、多くは独自の翻案、つまり薄い本=同人誌である。
ミームの進化には複製・伝達・突然変異が伴うそうである。オタクの翻案は二次嫁の突然変異みたいなものである。二次創作はオタクのミーム伝達手段なのである。
最も拡散しているオタク・ミームは何か?同人誌のジャンルで最も描き継がれているネタがオタク・ミームである。題材や性的趣向、具体的な作品名など、さまざまなベクトルでオタクのミームを定義づけることができるだろう。
ここからは、いちオタクが比較的簡単にその身を捧げることができる二次嫁とキャラ萌えをオタクの主要ミームとして考えることにする。
最も同人誌で描かれたキャラクターがキャラ萌えのミームである。適応度が高いという表現を使えば、過去から数えて最も人気があり、今も描き続けられているキャラクターはキング・オブ・ミームだ。
PCとWEBが発達してからは、キャラ萌えのミームは紙媒体である必要がなくなった。親和性が高いのは立体的に動かすことができる存在、つまりポリゴンキャラクターである。アニメといった映像作品でもよかったが、手描きのキャラクターは継続的に存在させるには不向きであり、ただの立ち絵を仮想的な存在に転換させるにはLive2Dのような技術を待たねばならなかった。
こうしたポリゴンキャラクターの中で、
初音ミクはかなり生存に適するミームだと言える。その上、適応度(人気)も高く、世界的に周知されている。
キャラ萌えによるミームそうしたミームのプールに、お気に入りの二次嫁を投じて生存戦略させることがオタクの役割となるのである。オタクは二次嫁の騎士(ナイト)であり、プロデューサーであり、育ての親なのだ。
画の描ける人は絵師として。曲を作れる人はボカロPとして。そして、ポリゴンモデリングができる人はMMDやVRM形式のビルダーとして。プログラムができる人は絵師やモデラーやボカロPと組んで、総合芸術となる同人ゲームといった分野において、オタク文化ウイルスの永続へと貢献するわけなのだ。
ヴァーチャルがもたらす可能性最も新しい「キャラ萌え戦争」への参戦者が、かのVTuberである。VTuberも初音ミク同様、生存に適した性質を備えている。ポリゴンもしくは動く二次画であり、中の人の独創性によって、これまでにない多芸を披露することができる存在である。
そして、ただただ受け手と思われていた、特別なスキルを有さない層もVRChatやバーチャルキャストといったサービスの普及によって、キャラ萌え戦争に変化を促す波紋となりつつある。
もはや「キャラ萌え」は、特定の有名キャラクターだけに起きる現象ではなくなりつつある。これからは、誰もが生みの親となって、新しいキャラクターを提供することが当たり前の時代になっていく。VTuber8000人超の世界の誕生である。
新しいキャラクターは、利用者に“纏ってもらう”ことを前提に、ビルダーによってVRM形式やUnityエンジン向け、UNREALエンジン向けなどとしてアップロードされる。利用者は、いわば新しい生まれたてのヒーロー/ヒロインの里親となる。そして、無数にいる競合他者と協調して仮想世界の未来的な愉しみ方の発展に寄与することになる。
こうして新しいオタク文化ウイルスが育まれていく――我々はその渦中にいる! なんと恵まれた瞬間に生きているのだろう!
- 関連記事
-
スポンサーサイト