Cobweb of にーしか

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月別アーカイブ  [ 2023-07- ] 

エクスパンス第2シーズン

エピソード3の途中まで視聴

冷戦下のキューバ危機を思わせる背景……古臭い、とても。今は、タイムリーにウクライナ侵攻が起きてしまう世の中だ。地球国連内部のタカ派との権謀術数、加えて戦端を開かないように努力する火星の大将(ボビーの上司)……だけ、ではお話にならない。プーチンのせいで現実味が薄くなってしまったのだから。一体全体どうしてそんな暴挙が可能になるのか。誰も止められないなんてことがあるのか――それが現実。まさに小説より奇なり。

脳筋のボビー・ドレーパー……この浅い人物造形、あまりに単刀“実直”すぎて、もう少しなんとかならなかったのか。逆に言えば、どうしてこんな人物が火星軍にいられるのか、をもっと説得力あるように描くべきなのだろう。その所属から含めた狂い具合(または洗脳)を。

――序盤がトロい「閃光のハサウェイ」でも、エクスパンスよりナンボか新鮮だった。そういう意味でも原作をものした富野御大はすげぇ~ってのがまたまた分かる。植民地時代を過ぎてからの国際情勢と原理主義的なテロ行為の頻発に、エクスパンスにはない同時代感があったわけですよ。

もろもろの事情は「プロト分子」頼りの展開になるんだろう。誰が画策し、何を企図してのエロス実験なのか。当然国連内部と通じている者達の陰謀がある。がしかし、タカ派はこの実験とどの程度つるんでいるのか。結局プロト分子を開戦の理由(漁夫の利的な)にもってくるのか、それとも邪魔な連中をぶち殺す道具にしたいのか。どちらにせよ、その企みであるならば、それは非常に経済的で、戦争の先物取引のようなものだ。利己的で不合理な、主義・思想のよく見えてこない独裁者による開戦の方がよほど現実味があるかもしれない。そうしたメカニズムになら興味が湧きもするが、古臭い陰謀とキューバ危機回避では、いかにもドラマの体裁に沿う上っ面でしかなく、現実にも響いてくるメタなテーマに欠けている。

小説版「巨獣めざめる(下)」の訳者あとがきを読んでみたら、TRPGセッションのリプレイそのものに見えた理由が判明した。主体性の根拠がなく、そこにいる理由や動機の欠けた登場人物たち。まさにTRPGのルールで背景を設定したので出来上がったような人々。パートタイムの、かりそめの冒険者。状況(用意されたアドベンチャー)に流されるままに、主義は主張するも、世界に受動的に対処することにしか役割のないプレイヤーキャラクターたち。とりわけ、探偵という職業はいかにもTRPG的ではないか。プレイヤーであったなら、さぞかし面白いセッション体験だったことだろう。でも、それを視聴者目線で俯瞰すると、いろいろとナラティブに足りない要素を感じてしまう。

第2シーズンエピソード2の最後の方でようやく全体像が知れる。プロト分子はそもそも地球を狙った太陽圏外からの侵略であったらしい。鹵獲したところ、将来的に人類に益をもたらすと研究者達は考えた。ただし、純粋に研究ではなくて、兵器利用を企む地球側の組織(ジュリー・マオの父親)があるようだ。――このプロットはALIENですかね。エヴァっぽくなりそうな気がしなくもないけど。

データ送信先の遺棄されたステーションで研究者達を発見した一行。ミラーは事もあろうに、フレッド・ジョンソンですら合意しかけた唯一の研究者を撃ち殺してしまう。ジュリーの仇討ちと、さもなければ、ナウシカ(自由原理主義者)の立場なんだろう。※ナウシカが出てくるという意味じゃないよ。

ちなみにナオミの苗字は、原作ではナガタだからヘブライ語のネイオウミィではなく、れっきとした日系だ。作家がどれだけ日本通であるかが知れよう。でもドラマの俳優は英国人だった。脇役にアジア系の演者は起用されているにもかかわらず。なぜだろうね?

ロシナンテ号にはデフレクターの類いがやっぱりない。レールガンで穴だらけになる。ガンダムのビットみたいなスラスター制御の浮遊装甲板とか、2010年(2010: The Year We Make Contact)のバリュートとか、一面だけシールド板で装甲がブ厚い(装甲板を敵に向ける)とか、ラムスクープとか、そういうものは全く開発されないのかねぇ? 宇宙時代なのに? それに突撃戦法なら衝角が付いていてもよかったのにね。

ロケット工学はろくに進歩していない(しかし、核融合エンジン)のに、人工透析っぽい装置で被爆した人体を再生したり、四肢のクローン(第1シーズン第1話)ができたり、対G薬があったりと、医療技術だけはかなり進んでるのよね。そのくせ、ハンチントン病にはまだ特効薬がないようだ(クローン義肢が作れる遺伝子操作技術があるのに遺伝病にはダメ?)。がん細胞に関しては抑制してくれる薬があるらしい。かなりチグハグ。

このパオロ・コルタサルという研究者の母がハンチントン病だったと劇中では云っているのだが、だとすると常染色体優性遺伝なので、この人物も50%の確率で同じ病に冒される可能性がある。その辺の話があってしかるべきなのだが、ない。デザイナーズ・チルドレンで遺伝病は除去できるとか、法律がそれを許さないとか、そういう話すらでてこないのは妙だ(2012年クリスパー・キャス9の先の時代だから)。一方、主人公ジェームス・ホールデンには8人の親がいると云っていた。調べると、この意味するところは税金逃れ(税制上の優遇措置を8人分貰えて1人の食い扶持だけで済む)だという。これ、劇中で説明されていたっけ?……こんな生々しいところを材としているのにもかかわらず、片親からの遺伝病の確率には触れないのは単なるミスなのか? 遺伝疾患なら発症してからの治療法云々よりも、発症以前の遺伝子改変の方が理に適っているだろうに。もしかすると、ハンチントン病ではなく、パーキンソン病の間違いではなかろうか。そんなわけで、全般的に科学考証が素人っぽいんだよね(宇宙船の“リアル”な挙動を持ち味としている節があるクセに)。この程度なら、集合知のネットを使えばこたつ記事並に誰でも書けちゃう。出版からの12年くらいの差で、ハード系のSF小説は書きづらくなってるね。専門家以外は。

ボビー・ドレーパーはチーム内では、なぜか頼れるリーダー。リチャード・トラビスが地球生まれで周囲と軋轢を起こすのをなだめる役目。それよりも、ボビーがなんであんなに地球を攻撃したがるのか、周囲はそれに仕方なく同調しているのかどうかを描いて欲しいものだ。

どうにも情報を聞き逃してる気がしたので、日本語吹き替えで見てみたが、ガンシップを武装ヘリと吹き替えていたり、かなり雑だった。英語字幕で日本語吹き替えがベストかも。字幕はマシみたいだけど、量が収まらなくて情報が落ちてる時があるし、直訳になりすぎると全体の意図を把握しにくい場合がある。一方、吹き替えだと台詞の意図はすんなり伝わってくる反面、それでも、翻訳が長すぎる場合には、台詞に収まらずに、やはり情報の欠落が起きる。

この場合、補語が落とされる。例えば、「捕まえたテロリストが○○と言っていた」の、○○が台詞に残され、「捕まえた」がなくなっていたり。まぁ、ドラマの翻訳は適切な脚色も必要だから、むずかしいやね。特にSFモノは、苦手とする訳者ばかりでしょう、きっと。日本でSFが流行らない理由のひとつだと思うね。SFドラマが邦訳配信されていないから。
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[ 2023/07/23 08:49 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)
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