上巻がもう少しで読み終える。
ドラマ版とは異なって OPA対火星=地球 の図式のようだ。地球は中立で火星と連合関係を結んでいる。火星は共和国連邦だが大統領制で一星三十条の連邦旗をかかげていることから、USA的な意味合いが強いのかもしれない。さもなければ、中国も併合しているか。
火星を脅したい地球国連本部(タカ派)の図は今のところ出てこない。ドラマ版は話数稼ぎに問題を複雑化させた表現であるようだ。
小説版の、ケレス政府がいきなり崩壊するという感覚は、火星地球間の緊張状態よりもはるかに面白い。ケレスの住人は地球が手を引くことになった火星からの圧力をどうとも回避できない。この視点はキューバ危機よりも現代的だ。よりウクライナの問題に近いだろう。サイゴン陥落(解放)のようでもあるが。ただし、その背景で行動する登場人物の描写は残念なことにろくになかった。
フレッドがジム達に協力を要請する事情はドラマ版より理に適っている。ドネジャー沈没にOPAが無関係なことを証言しろ、だけではない。
ドラマ版よりもエロスに到着するのが早いんだが、残念なことに求心力が乏しい。正義感の強いジムが放った通信でOPA・火星間の緊張状態が高まる、までは、なかなか悪くない出だしだった。
ところが、ジュリー・マオの追跡に関する動機が弱い。ミラーはそれなりに影響を受けているが、他の4人は(TPRG並の)ただの請負ミッションだ。読者も、このジュリーがどれほど重要なのか、推し量る術を持たない。彼女は何か変なモノを見てはいる、それは何か? そこが重要だ、とするフックが弱い。ドネジャー沈没の首謀者の船に関してもまるでヒントがなく、引きがぷっつり途切れてしまう。退屈な作劇が続く。
ミラーの事情は、かなり説明されているので分かりやすい。ドラマ版では描写がなかったと思うが、別れた妻の面影を未だに脳裏に浮かび上がらせる男だ――それがジュリーに取って代わる。
ジムは正義感の強いリーダー肌以外に、人となりが伝わってこない。都合の良い主役でしかなく、作家が見せたい方角に向く風見鶏だ。ナオミも掘り下げが浅く、主役の添え物。アレックスとエイモスもただの脇役。その点で言えば、ドラマ版は彼らの人格をもう少し深く知ることが出来る。しかし、物語における役どころは相変わらず小さい。ミラーは探偵小説の主人公を地で行ってる以外に、この小説ならでは、という部分を持たない。ベルターなのに。それはナオミも同じ。フレッドは、ドラマ版の方がハッタリが利く大物になっている。小説では小物に見える。
今のところ、あまり面白い冒険小説ではないな、という印象。冒険の筋書きがつまらない。
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