第3シーズン
これは難物。刑務所を終の棲家とするくだりは見ていて安堵したり、リックの厳しさに辛さを覚えたり…。ドラマとしての見せ所は、シェーンを巡る物語でほぼやり尽くしてしまったことがありありと分かる。エスカレートする視聴者層に対して制作側が用意する次なる登場人物とは……。作劇上の趣向が凝らされた、いかにも(厚みの不明)なガバナーである。彼がドラマにおけるコアなテーマを果たして提供できるのかどうか。
残念ながら、ウッドベリーとの並行で描かれたせいで、ローリ出産のくだりが、緊張感を欠いてしまうものとなった。重要な意味を担っていた登場人物のローリが、ああも簡単に見捨てられるとは想像だにできなかった。帝王切開をしてからウォーカーに変異してしまうまでの間に、リックが合流するチャンスが皆無ではなかったように見える。まだ死んでいない、と私だったら叫んだろう。
これで「親友、女房、きまじめな夫」という構図が崩壊し、親友とは絶交、細君とは離婚、のような状況である。『ゾンビもの』だが、家庭的な三人を主軸に捉えたドラマだったと私は理解している。そうしてこれからは、二人目の子供(今度は娘)と、片親で育てることになる難しい時期を迎えた息子の成長とを見守るわけだ。リック自身は苦難の末に、もう一度自我を確立する。リーダーとしての在り方に彼らしい結論も出た。その次にはきっと再婚相手が登場するのではないか。そもそも、グレンとマギーの若夫婦に座が奪われつつあるが。
Tドッグ……とうとう目立った活躍をしないまま退場してしまった。いや、彼は手錠の鍵で、奇跡のシュートを決めたことが一番の手柄だった。「残った黒人は俺一人だから立場が危うくなる(次の生け贄だ)」の言葉通りだったか。
フィリップとは一体どういう人間だったのだろう。結末まで見ると、虐殺を行ってしまえるような人間、だった。一国の独裁者に近く、最終的に蜂起した民衆に殺されるような役どころだろうか。彼なりの苦悩(娘)とその壊れ方、ないしは主義の徹底ぶりが、前シーズンまでのシェーンのようには心情的に訴えてこない。それゆえ、7割近くの話数を割いて、アンドレアとの出会いからその有様を積み立ててきたわけなのだが、これが逆にどこまでもフツーの敵(かたき)役に見えてきてしようがない。あのメルルの指を食いちぎる残虐性。冷酷に拳銃を突きつけるイカレっぷり。立ち向かってくる連中を打ち倒すのが面白いのだ、と言わしめたわりには、なんともリアリズムの薄い芝居……。フツーの活劇ドラマになってしまっていて、これまでのウォーキング~らしさとはどこかが決定的に違ってしまったようだ。
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