独立系開発会社の場合は、ゲームを遊んですぐに、そのコンセプトや立ち位置が明快になる(つまり、大手の製品のどこが不満足であったのかが、彼らの発案から伺い知ることが出来る)ものだが、このアクションRPGはそうではない。何をやりたいのかが不十分で、技量も未熟にしか感じないのだ。プレイフィールが今ひとつである理由は、突き詰めればコンセプトの平凡さから来ている。
R.E.ハワードのコナンを思わせる神話上の豪傑ガルシャースプを主人公に据え、逞しい肉体と不屈の精神で、目の前の困難をことごとく切り抜けていく、そんな冒険譚を描こうというのが、たぶん、このゲームの目的だ。
ところが、肝心のギミックに全く魅力がない。ハック・アンド・スラッシュ系と捉える事も可能だが、アイテム・インベントリーが無いなど、定番となるべき核がそもそも欠如している。私が思うに、リメイクされたプリンス・オブ・ペルシャからの影響を色濃く受けたアクションアドベンチャーである。
垂直の壁をダガーでブレーキングしながら滑り降りる、挽き臼状のギアボックスを合わせて門を開く、庇状の縁をぶら下がって移動する、といったアクションが代表例で、昨今ではどれも専売特許ではなくなってしまったお馴染みの(悪く言えば、手垢の付いた)要素が使い回される。シンプル過ぎて困ることに、パズル要素といったものは無いようだ(推測であるのは、生憎と途中までしかプレイしていないため。ゴメン)。
戦闘アクションも、やはりお馴染みのQTE(クイックタイムイベント)を含んだコンボ攻撃で、まるで新味はない。
コンソール仕様の月並みなゲームと違う点といえば、このGarshaspにはスキル成長の選択肢が一切用意されていないことだ。ただし、成長はする。あくまで勝手に。プレイヤーにはその采配を振る権利が無いだけだ。画面には、親切に「○○というコンボが利用できるようになりました」とダイアログが、わざわざ戦闘中に突然現れて、大事で楽しいはずのアクションを、ご大層にも一時中断してくれる。
似たような風景、似たような敵、変化の乏しさ…。これらは作り込みの甘さの証明である。プレイアビリティを損ねるような工夫もまた然りで、開発者がこれを改善しなかったという点には首をひねる他ない。先の例なら、Tipsダイアログはオフにできない。
最悪と思えるのはカメラ視点だ。一般的な三人称アクションゲームは、通例、コントローラの右スティックでカメラ位置を変更できる。ところが、このGarshaspでは、それは出来ない。カメラはお仕着せの角度で固定され、ある舞台から別の舞台へと移動する際には、自動的に滑らかに移動していく。このカメラ視点の移動に伴って、キャラクター進行方向のレバー入力も方位角が変わるのである。だから、タチが悪い。更に、戦闘中にカメラが移動できないので、巨体の影になった主人公はプレイヤーからは見えなくなる。画面外から弓矢が飛来しても、カメラが移動できないので、射手を目視できない事態も多い。
落下が即ゲームオーバーという旧時代的な厳しさも難点である。上述の勝手な視点移動のおかげで、左スティックによる主人公の移動は極めて難しい。水上に浮いた板材を転々と飛んで渡る場面の高難易度と言ったら。左アナログスティックの方位を、例えば北西30度であるとか、そういった半端な方位へ倒さなくてはならない。
ダイアログによる補足説明にしても、実際には、「まさにこの場面こそ必要なんじゃないか」という瞬間に出ない。説明不足による不親切さは随所に感じる。
プレイヤーがぶつかるであろう問題を順番に述べてみよう。
・初回起動
ゲームに必要なDLLがインストールされる。旧バージョンのFlash Playerが上書きインストールを試みるが為に、エラーが出てしまう。更新が頻繁なAdobeのFlash Playerをインストールしようとするゲームなど、信じがたい。
回避策はいくつも考えられるが、簡単なのは\Steam\steamapps\common\themonsterslayer\にあるinstallscript.vdfの記述をあらかじめコメントアウトしておく事だろう。
・ゲーム内オプション
画面解像度をゲーム内から変更できない。\Steam\steamapps\common\themonsterslayer\distro\にあるGarshaspConfig.exeで、あらかじめ設定しておかねばならない。こうした仕組みの場合には、初回起動でこのGarshaspConfigが実行されなくてはいけないが、そうした配慮が欠けている。
・コントローラ設定
キーボードでもプレイできるが、斜め方向の移動が強要されるので、Xbox360コントローラは欠かせない。

前述のGarshaspConfig内で、コントローラを指定しておき、「右スティックと左スティックを入れ替える」のチェックボックスをオンにする必要がある。さもないと、右スティックで移動という形態になってしまい、ジャンプボタンを同時に押すことができなくなる。右手の親指が二本あるとでも言うなら別だが。
・QTEへの入り方
大柄な敵が弱った状態で、主人公はある動作をしなくてはならない。それが「投げ」ボタンを押すことなのだが、画面表示には、なんだかよく分からないソードのアイコンが出る。

ソードだからと、攻撃ボタンを押し続けても、一向にQTEへは入らず、敵も倒せない。
QTEに入ってからは、画面のアイコン表示に合わせて「方向」を入力する。XYABボタンを押すことが通例だが、このGarshaspでは違う。
・ジャンプ
ジャンプボタンをジャンプ中に押す事で二段飛びとなり、より長い距離を跳躍できる。アクションゲームでは通例だが、Garshaspでは敢えてか、これに関するチュートリアルがない。
・塔の周囲の足場を順繰りにジャンプする場面
カメラが塔に合わせて外径を移動する。

主人公を横移動させつづけるだけでは角度が外に膨らんで、やがて落下してしまう。画面奥方向へ入れつつ、横移動が必須だ。
・垂直の壁をダガーでブレーキングしながら滑り降りる場面
出来るだけ速度を落とさずに滑り続けないと、後から落下してきた石壁の破片に巻き込まれる。

この為には、方向入力を常に↓にし、壁上の障害を避ける時に限って、ニュートラルか↑にする。壁からダガーが離れそうになった場合には、「投げる」ボタンで手懸かりを取り戻すことが出来る。最下段の地面に飛び移る場面では、ジャンプ後の移動のつもりで↑方向を入力してしまうと、主人公はこちらに背を向けている為、裂け目に落下する。いずれにしろ、かなりストレスフルな場面である。
・浮き板を頼りに水面を渡る場面
前述のように移動の入力方向が難しい。二段ジャンプでないと届かない。
・筏の場面
筏の櫂に「投げる」ボタンを使わないとやがて沈み始める。

水門を経由した二連なりの場面で、筏上に現れる10体以上の敵を川に投げ込むと、Summer Campの実績が解除される。櫂をインタラクトできる立ち位置が限られており、やや操作がしにくい。
Summer Campの実績を解除したら、もう遊ばないという人が多そうな、そんな残念なゲームのひとつだ。私自身、もう少し先までプレイしてみたものの、プリンス・オブ・ペルシャとよく似た仕掛けの登場するステージばかりになってくると、かなり辛くなった。セーブとライフ補給のバランスは、先に行くにつれてシビアなのだ。