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ペリフェラル~接続された未来~(アマプラ) その6

第1シーズンでのやり残し

アッシュがレヴ・ズボフの殺害をシェリス・ニューランド博士に頼んでいた伏線が回収されていない。アッシュは内通者として協力すると約束していたが……

フリンが新しいスタブを作るために乗り込む直前か、もしくはほぼ同時に、レブが殺される場面があったのだろうと推測する。

終盤でバートン(のペリフェラル)が出てこないのは、レヴ殺害を食い止めようとしたか、逆ハックされてレヴ殺害に加担してしまったか、辺りではないか。

エンディング後のレヴ・ズボフの会談が何を意味するのか今ひとつ曖昧だったのは、多分そのためではないか。つまり、枝分かれではレヴは生きていることになり、シェリスに代わってリサーチ研究所を掌握することになるのかもしれない、という含み。

コーベル・ピケットの覚醒とトミーの闇落ち、ジャスパーの昇進は第2シーズンに持ち越しでも通じるが、その前に、“匂わせ”の場面があってもおかしくなかった。


第1話を改めて視聴すると、全て先んじて描かれていた。裸足の10歳のアリータ(※)が2099年の時点で別の世界を救いたいとウィルフに告げているし、ビリー・アンはクリーンの車で送迎されている(3Dプリンターの店に勤めているわけではない)。ジャスパーについてもフリン母などから、再三言及されているし、ジミーズの酒場に同席していることに気が付く。メイコンとエドワードのgeek二人組もしっかり登場していて、名前の言及があり、その上、依頼されて材料からヘッドセットを作ったのは彼らだ。細かいところでは、フリンが鎮痛薬の錠剤を買おうとする場面では、吹き替えに「ジョン薬局(Pharma Jon)で買えばいい」と訳出されていた。

ペリフェラルに乗ったフリンがマリエルを口説く台詞はビリー・アンが言っていた内容そのままだった(ライオンが白鳥になった以外)。――初回視聴時にはたわいない雑談として聞き流してしまっていて、その由来が分からなかったものだが。

※字幕だと靴底(sole)と魂(soul)が訳出されて、映画「スタートレックIV故郷への長い旅」(下記)みたいな洒落を披露している。

 McCoy: I mean, I may have carried your soul, but I sure couldn't fill your shoes.
  足裏(魂=カトラ)は運んでいるかもしれんが、君の靴(職務を引き継ぐこと)は無理だしな。
 Spock: My shoes? 
  私の靴が何です?
 McCoy: Forget it.
  もういい。

コナーの件は、ニールが「事前に(負傷した動物が利用されている)情報があったのに、俺たちが信じなかったせいだ」バートンが「いやもっと複雑な事情だった」などと言ってる。

さて、ドラマ版が良かったので、世界をもっと深く知りたいと小説に挑戦してみようかとカスタマーレビューを読んだところ、ギブスンのあの文体にさじを投げた人がとても多い。チバシティが出てくる既訳の小説版も、確かに苦心していたっけね。

時代は違うが、カットバックのバロウズみたいな変化球なんだろうな。wikipediaでギブスンの生い立ちを調べると、やはりビートニクの洗礼を受けている。

あるいはギブスンはもしかすると、バロウズと同様に、普通の文章が書けない作家なのかもしれない。だから、書けないところを逆手にとって、彼しか書けない文体という強みにしたのではないだろうか。

1984年にニューロマンサーを上梓した貢献は、往事のバロウズのように評価されている。インターネットを予見していたり、サイバーパンクとサイバースペースの概念を創出していたり、マトリックスという語を用いてまさに映画マトリックスの原型と呼べる登場人物やよく似た背景世界を構築したりしている。

ペリフェラル第1話を見て思い出したのが、映画トロン・レガシーの夜の町を疾走する主人公のバイクであった。フリン(オリジナルの映画トロンの主人公の苗字)という名前やサイバースペースに乗り込む(ジャックインする)というくだり、サイバーパンク黎明期にギブスンの周辺でも活発だった雰囲気や、当時の映画に活用されたとおぼしきアイデアを、積極的に再利用(逆・流用)しているという現象だろう。

また近年、政治思想的な意味合いでも、彼の過去の著作の知名度が影響していると考えられる。サイファーパンク(Cypherpunk)やサイバー・リバタリアン(テクノ・リバタリアニズム)はギブスンの曰く付きの未来社会からの現実への浸透か、あるいはその前兆と受け取れなくはないだろうか。

ネオプリムとクレプトという政治的集団には、テクノロジーによる社会構造の変革がくることを予期した作家らしい創造性が発揮されているに違いない。(だから小説版を読みたくなるのよね)
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[ 2023/08/12 13:12 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ペリフェラル~接続された未来~(アマプラ) その5

第8話(第1シーズン最終話)

フリンも視聴者もこれまで知らなかったであろう世界の秘密を明かして、そればかりか、すぐに使ってしまう。種明かしと実行が同時。

殺し屋ボビーに対して(フリンを殺さないとボビーの娘が殺される)
フリン母「もう一つの可能性に思いつかなかったのね。自分が死ぬのよ」
――が伏線。

キリスト教だと自己犠牲が最高位の気高い行いらしいんだよね――キアヌ・リーブス主演の映画コンスタンチンが皮肉に描いているやつ。地獄行きの男でも自己犠牲で天国行きになれる。そういえば、映画バタフライエフェクトのオチもこれでした。

(コナーへ)フリン「何を頼んでいるか分かる?」

ごめん、わかんない! 

(原語)“This thing that I'm talking about... ...it'd have to look like Lowbeer sent somebody as a favor to Cherise, solving her problem for her.”
(吹き替え)お願いしたいのはね。警部補がシェリスのために誰かを雇ったように見えないとだめなの。
(字幕)だからお願い。警部補がシェリスのために人を雇ったように見せて。

(素直に翻訳)頼みたいことは……シェリス自身の問題を解決してやる為に、警部補が誰かを派遣したように欺く必要がある。

邦訳の「シェリスのため」というのが、シェリスに味方することなのか、あるいはシェリスを抑えるためなのか、どちらにも受け取れてしまう。一方で、原語はそこをしっかり表現している。

前話でシェリスは警部補にフリン(とその周辺)殺しを依頼している。今話で警部補はフリンに接触して、共同戦線を張ろうと申し出ている。

したがって、このオプション、どちらもあり得るから。翻訳者、先を知っているからって、手抜きしないで、もっと頑張ってほしい。

フリンは、シェリスが警部補を通じて自分を殺そうと画策していることを、なぜか察知している。勘の鋭い娘と考えてもいいが、そこは主人公補正(ご都合主義フラグ)に見える。RPGなら、プレイヤーの判断で分岐してもいいところじゃなかろうか。


What about this world? We done with it?
(吹き替え)こっちの世界では、もういいのか?
(字幕)この世界とはお別れか?
(素直に翻訳)もう、こっちの世界には戻れないのか?

No, we'll be back.
(吹き替え)戻るよ。
(字幕)戻ってくるわ。
(素直に翻訳)また帰ってくることになるわ。

Why?
(吹き替え)なんで?
(字幕)何しに?
(素直に翻訳)どうして?

'Cause I'm gonna kill that bitch.
(吹き替え)あの女を殺してやらなきゃ。
(字幕)クソ女を殺しに。
(素直に翻訳)もちろん、あのビッチを殺すつもりだから。

「こっちの世界では、もういいのか?」は、曖昧すぎて言いたいことがはっきりしない。字幕の方が意味が取れる。何がもういいの? 誰が? 

コナーは健常者として歩き回れるこの世界に未練があるはずだから、暗に「もっと居たい」という心情があるはずだ。We done with it? はそういうニュアンスだろう。「もう用はないのか?」→ここへはもう来ないのか?

その応えも、「また、帰ってくることになる」の方が自然。全員でまた帰ってくることになるだろうって言ってるのだから。「戻るよ」って誰が? せめて「みんなで戻れるよ」くらいにして欲しい。

'Cause はフリンの意志が固いことの表現で、主語は私。全員が殺意を持つわけじゃない。フリンが殺る気でいるだけ。


I know it's a lot, Conner. But if it helps any, I've made peace with it. I'll just take a walk out past Hawthorne Creek. And I'll count back from ten in my head.

(吹き替え)たいへんな頼みだよね。でも私はもう納得してるから。散歩をする。ホーソーン川の向こうへ。頭の中でカウントダウンする。

(字幕)つらいと思う。でも私は納得してる。散歩をするわ。川の向こうにね。頭の中でカウントダウンする。

(素直に翻訳)無理は承知よ、コナー。気休めになるなら。私はこれで満足なの。ホーソーン川の向こうで散歩する。頭の中で10からカウントダウンする。


ここまで見て、視聴者とコナーにフリンの作戦が分かる。



危機回避と区切りを上手く図って締め。続編が作れなくても、とりあえず完結している(現在では、第2シーズンが既に決まってるけれど)。

宙ぶらりんな状態であらすじを進展させて、最後まで切り札を残して、それはまだ有効。クリフハンガーでもあるし、小休止でもある。

さらに進展させる余地が残っていて、実に優等生な作り。

フリンの立場を整理してみる。

フリンは:

・あの2100年には存在しない(ジャックポット分岐前には居た)。

 ――タイムパラドックスは心配しないでいいようだが、レヴ・ズボフの件もあって、因果の関係がよくわからない。平行宇宙に分岐するため、祖父殺しのパラドックスは発生しないようだ。

・ペリフェラルを操らせば無類の強さ。
・正義感がある。
・仲間や2032年への絆や想いが強い。

 ……こんなところか。そして、切り札のニューラル・アジャストメント・メカニズムを含む機密情報を脳みそに格納している。歩く信管のような存在か。

クリプト、ネオプリム、アリータの組織は三つ巴で今後も闘争を続けるのだろう。警部補(政府?)もいるか。

序盤の最重要キャラと思われていたウィルフの立ち位置がかなり下がってしまった?

今後、恋人として機能するかも知れないが。2100年とフリンを繋ぐ水先案内人の役目はまだまだ続くだろうし、キーパーソンでは居続けるだろうが、フリンにとっては補佐役(ゲームでの脳の中の声)に留まってしまいそうだ。

兄バートンの存在も弱くなってしまって、リセットと手足のあるアバターに関心のあるコナーだけが“現地での”協力者になる。

冒険はまだ始まった(リセットした)ばかりで、この路線(タイムライン?)は意外とつまらないかもしれない。想像の上を行く展開が今後期待される。

得てして、第2シーズンがガクッとつまらなくなる可能性もある。同じアマプラの「アップロード ~デジタルなあの世へようこそ~」は、第2シーズンが信じられないほどパワーダウンしてしまった。私が思うに、惰性で動いているだけで、以前のウィットや創意工夫がまるで無く、視聴して途端にがっかりしたものだ。

そうならないことを祈ろう。ご健闘を、フリン&スタッフ!

全話視聴後の感想

存分に愉しませてくれた。……んだけれども、ちょっと物足りない。話数が進むにつれて異世界(2100年ロンドン)での冒険がどんどん減っていたから。

アクション活劇であったはずが、駆け引きと田舎町の人間模様になってしまい、あげく全部描ききれずに残して幕を引いたような。

政治思想の対立をもっと詳しく描写した上で、ただの黒幕ではない表現のシェリス・ニューランド博士も見たかった。

レヴ・ズボフも悪人めいた部分があって、そこももっと知りたかった。アリータが結局どんな革命をしたかったのかも。アリータとウィルフを軸にした本筋が始まるものだと思っていたから、アリータ失踪で拍子抜けでもあった。

結局、2032年ではどの辺りからリセットがかかったのか(分岐したのか)、よく分からずじまい。シェリスをぶち殺す画もなかったわけで、そういう種類の爽快感はない。話の締め方を急ぎすぎて事後の顛末もない。終盤にかけて早足で雑になっている感じがする。

作品世界で遊び回ったテーマパークのよう。その世界の実については浅いまま。惜しい。
[ 2023/08/10 15:35 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ペリフェラル~接続された未来~(アマプラ)

脚本もさることながら、編集も巧みなのだろう。そうでなければ、あれほど濃い内容を要領よく見せることはできない。下手なプロダクションなら、同じ内容を2倍に薄めて倍の話数で見せるところだ。そうすると、ものすごく間延びして退屈に見える可能性が大きくなる。視聴者を3歩歩くと忘れる鶏だと考えている作り手は後者の作戦を採りたがったかもしれない。あるいは、制作費の問題もあったのかもしれない――短い話数で完結させることを意図したのであれば、さもありなん。

第6話

アリータはネオプリムだった!!

フリンがウィルフに
(吹き替え)「あのこと話したの? あなたが何をしたか」
(字幕)「彼女に話した? あなたが何をしたか」

ここの翻訳は不味すぎるでしょう! 省略しすぎじゃない? 
どのことを誰に話したと訊いているのか、吹き替えでは意味不明過ぎる。おそらくは前話に出てきた、ウィルフが12歳の時、学校の食堂でネオプリムに襲われて返り討ちにしたこと(吹き替えでは訳出されていないが、喉を切って残りは射殺した、のだ)。

だから、なぜアリータがネオプリムの肩を持つのかが分からない。裏切り?
――視聴者目線では、アリータはおそらく人道主義者なので、その活動は派閥に因ったものではないのだろうとも推測できる。

原語 “Did you tell her what you did? When they took over your school?”
[直訳]あなた(ウィルフ)がしたことを彼女(アリータ)には話してるの? 連中(ネオプリム)があなたの学校を襲った時のこと。
(まともな訳)学校でネオプリムに襲われてやったこと、アリータには言ってたの? 

アリータがウィルフの返り討ち事件を知っていたのかどうか、それによって、物の見方が変化する、とフリンは指摘している。
担当訳者が前後の脈絡を知らなくて、theyが誰で学校との関係が分からなくて日本語にできなかったのでは? 


――今話の翻訳は全部不味い。人名すら訳出してない。「そういえば、第1話で花婿の人形を折ったgeekじゃんか、フリンの為にハッキングもしてたし。名前は――」というのを視聴者に促す役目なのに。Maconメーコンが名前。訳者は読みが分からなかったのかもね?

サイドエピソードとしては面白い切り口だ。ハッカーとしての意味しか無かった脇役にもスポットライトが当たる。


「二人に約束した。なんとかするって」
“I gave the Fishers my word. Told 'em that I'd handle this.”

――台詞が入んないってことなのか? もうちょっと固有名詞入れてもいいだろうに。“二人”くらいだったら、視聴者は分かるけれど。奥さんのディーディーに説明しているのだから、誰のことか名前は示さないとハッキリ伝わらないだろうね。


ペリフェラルはいつの間にか生化学的なモデルになっている。第1話でのバートンモデルは手の皮が剥けるようなチープさだった――それとも、あれはそれくらい強い力で手錠から手を引き抜いたということなのか?


A stub, as we call them.
(新しくできた枝のことを、)スタブと呼んでいる。

But why do you? Call them that? It sounds short, nasty, brutish.
スタブって切り株って意味よね? なんだか酷く乱暴でやな感じ。

前に書いたように、切り株という認識で間違っていなかったね。
引き延ばしエピソードに見えながらも、新しい展開の嚆矢か。

第7話

The Lazarus Projectのアーチー役がベアトリス。

アリータの策謀が判明。アッシュとオシアンと組んでいるアリータは機密情報のデータを盗んでスタブに隠すことが目的だった。彼らはネオプリムだ。

アリータの正義感はどこへ? 後でドンデンがあるんだろうか?

ハプティック・インプラントのないフリンは、意図せず、データをウィルスに変換して脳に保存している。――ここ、面白いね。バイナリデータがDNAのコードになっている、というわけ。さすが、ギブスン。面白いアイデア。

ネオプリムの目的はよくあるやつだった。選民のための新しい国を作る。今あるものを壊して。TES4 Oblivionのボスと同じ。

our neural adjustment mechanisum 神経系統を操れる我々の技術
盗まれた機密情報は、ハプティック・インプラントで実験されていたアレ。人心を操作する能力になるわけだね。スタブは、この技術の実験場としてリサーチ研究所(シェリス・ニューランド博士)が作った!

だから、明るみに出ると、非公式の(都合の悪い)技術の存在が知れ渡ってしまう。なんだか、ディープフェイクを利用している英国情報部みたいな秘密になってきた。

最も興味深かった台詞:

“Every single vector of the Jackpot was weaponized by the same disruptor. Human nature. Now, it might've manifested itself as selfishness or venality or simple stupidity, but at the bottom, it all amounted to the same trait: our persistent, self-destructive resistance to acting for a collective good.”

(吹き替え)「ジャックポットのあらゆる側面は兵器として利用され続けてきた。そう、人間に。人間の身勝手さや欲深さや単純に愚かさなのかもしれないけど、つきつめれば、そこにはある種の特徴が見られる。社会的な利益を拒もうとする自滅的且つ不屈の抵抗よ」

(字幕)「ジャックポットのあらゆる側面は兵器化された。人間の本質によってね。それは身勝手さや欲深さや愚かさとして表れるけど、根本的には1つの特性に集約できる。公益のための行動をかたくなに嫌がる性質よ」

(私の訳)「ジャックポットの力とは、人類が使う凶器なのよ。つまり、破壊者は我々。ヒトという種の利己主義や拝金主義、あるいは単に愚かさが、こうして自明になったということかもね。そして、最終的に、その特性はこうなるの。公益に反する自滅的でしぶとい抵抗勢力に」

collective goodを何と翻訳するか。公益のことには違いないが、テーマとして解釈すると、人々が集団として行う善なる活動のことだろう。それを損なおうとする抵抗力が人類の業(ごう)だとシェリス・ニューランド博士は説いているわけだ。

weaponは兵器ではなく凶器の意味合いでは。だからハンマーの比喩。ジャックポット(災害)は身から出た錆だと。

“I think you'll agree, Inspector, that a hammer is a very useful tool. It can also be a deadly weapon, in the wrong hands.”
(吹き替え)「ハンマーというのは非常に役に立つ道具ではあるけれど、使う人によっては恐ろしい武器にもなる」
(字幕)「金づちは便利な道具だけど、使う人によって、危険な武器にも成り得る」
(私の訳)「警部補、ハンマーは使い勝手の優れた道具だけど、悪人の手に渡れば凶器になってしまう」

ところが、シェリスが警部補に要求するところこそ、善への抵抗勢力に見えてくる。

The Samsonovs サムソノフ一族
“Inciting violence against a lawful authority, with the intent to overthrow it”?
「既存のシステムを覆すため、法的権威に対して暴動を扇動した」?
「法的権威を覆すことをもくろみ、暴動を起こした」

レヴ・ズボフの先祖とは違う?
[ 2023/08/10 00:10 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ペリフェラル~接続された未来~(アマプラ)

第4話は設定解説編。ドラマとしては停滞中。ジャックポットがいつ始まったか? 2032年フリンの住む時代から僅か7年後。2041年、自国テロでフリンの住む一帯は核爆発で消滅。

名前だけだった2032年のgeekらしき二人が、タイムトンネルをこじ開けるために2100年組を敵に回してハッキング競争。

こちらも名前だけだったディーディー(トニーの嫁)も登場。フリンの恋敵らしい。

第5話

必然性は消えつつある。フリンはアリータのドールとして選ばれた。バートンやコナーのペリフェラルも作って貰えるので、なおさら。

ここで、なおも「どうしてフリンなのか?」が今一度問われるはず。

設定世界の解説のお次は、メインストーリーの裏で行われていた概要の解説だった。

Dr. Nuland ニューランド博士
(ノーランドじゃなかった)

the God font ゴッド・フォント
2032年をこじ開ける装置らしい。

ハプティック・インプラントは2100年から送られた人体実験装置だった。社会行動を矯正して、人類が危機に瀕する場面を救うためだという。

コナーはこの実験の犠牲者だった。敵軍のワナ=負傷した犬に同情して近づき、爆弾の餌食になった。海兵隊員らはワナを知らされていたが、インプラントが2100年からの操作により同情心に働きかけたため、犬を射殺できなかった。

アリータはこの事実を知って、ハプティックの埋め込まれたフリンの兄バートンに接触を図ったのだ。

for the greater good(という表現は出てこないけれど)
善なる者とは? というのが一つのテーマだろう。アリータはサイバーリバタリアンの功利主義を批判している側だ。おそらく、キリスト教的な人間第一主義で。また、クレプト(Klept)という団体が登場するのは、Crypto-anarchistをもじっているのではないか。

行動修正課のヒミツの世界救済方法
the hush-hush, saving-the-world shit comes from Behavioral Mod Department

警備主任マリエルに呼び止められたアリータ達。アリータは別れ際に不思議なことを言う。

“I-I just want to say you have the most extraordinary eyes. Seriously. I... I'd kill for eyes like that.”

(吹き替え)失礼だったらごめんなさい。でも貴女、とても綺麗な目をしてる。褒めてるのよ。人を惑わすくらい。

(字幕)これだけ言いたい。あなたの目とてもステキね。本当よ。手に入るなら人も殺す。

killはダブルミーニングっぽい使われ方だが、厳密には、どちらの訳もイマイチでは。調べると、ネイティブにはこういう【口語表現】がある。

 I’d kill for ~ 何がなんでも(~が)欲しい

「惑わされる」では、童貞を殺すセーターの方になってしまい、ダブルミーニングが成立しない。「殺して手に入れる」は関連を促すだろうが、直訳すぎる。実際のところ、殺してはいない(殺したのはアセンブラ)。

(意訳)あなたの目、とっても珍しい。奪ってでも欲しいくらい。
台詞の場合、さらに息継ぎに合わせて4語にしないといけない。

マリエルは実際に目を取られたので、その予告というわけ。謎かけの好きなアリータ。正義感があり、好戦的。

ああ、そうそう。第4話で重要なことのひとつに、レヴ・ズボフが2032年の自分の一族を殺した告白が挙げられる。さらに、新薬の治験にスタブを使っていることも。これが将来、何を意味することになるのか。必ずしも正義の側というわけではないようだ。

今回は時間稼ぎエピソードだ。フリンがGod fontで手に入れた視覚からの情報は何だったのか? ウィルスっぽい作用を及ぼしている。詳細はまた今度?

セオリーを破って、ジャスパーは「人を傷つけない」し、ビリー・アンは頼もしい(彼女はフィッシャー兄妹に3Dプリンターの店を買い占められて、職が無くなったのでは? だから請け負いクリーニングの仕事をしてる)。コーベル・ピケットも20万ドルで静かにしている。

暗殺者ボブも早々にして決着済み。この次に何が起こるのか?

母親は慧眼だ。間抜けなドラマの場合、こうした母親は事態を理解しないで否定的に振る舞うものだが、このドラマでは素晴らしい参謀で、兄妹が敢えて考えなかった点を指摘する。

少なくとも、ウィルフとアリータは2100年での砦だ。あとの連中は、思想的な闘いに明け暮れていて、しかもそれは利己的かあるいは功利主義だ。大海に投げ入れられた小石――フリンはどうするのか。2100年からの搾取をどうにかできるとしたら、それは彼らだけ。

シェリスって誰? ヌーランド博士のファーストネーム。フリンは面と向かっては会っていないが、ウィルフやクレプトはネオプリムを知っているでしょうね。視聴者もヌーランド博士なら、よーく知っている(ネオプリムとクレプトについてはよく知らされていなくとも)。

いーや、いきなり敵対勢力の親玉に殴り込みとは面白い。予定調和やセオリー外しを狙っていて考えてる。パターン崩しのザブングルといったところだ。脚本やショーランナー優秀ですよ。
[ 2023/08/09 14:36 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ペリフェラル~接続された未来~(アマプラ)

※以下ネタバレあり

第3話

冒頭の少年が、バートンの台詞によって、コーベル・ピケットの甥ジャスパーだと分かる。

ありがちなことに今エピソードは過去のカットバック集になる。その人物(ウィルフ・ネザートン)の過去を明らかにする目的で。これは直の背景説明になってしまい、物語としての進行がややもすると変化・遅滞する。理想は登場人物の行動によって、彼らの過去の経験が連想されることが好ましい。

独自の固有名詞
Neoprims ネオプリム
どんな存在・団体のことか、まだ謎。ウィルフと因縁があるようだ。

里親に気に入られるため、8歳のウルフ(ウォルフガング)はウィルフ(ウィルフレッド)になった。そして、隣にいた10歳の女の子はアリータ。二人は孤児で養子だった。未来のロンドンは病原菌で人口減に見舞われたらしい。

“Where snow last fell in London.”「ロンドンで最後に雪を見た場所」
養子斡旋所の相談室の前では、壁一面のガラス窓に降灰のようなものが映っていた。
※後になって分かるが、fellは降ったではないようだ。だから「見た」と吹き替え翻訳したのだろう。これには(吹き替え版の)訳者グッジョブである。字幕は「降った」になっているので。

――これは上手いね。情感が揺さぶられる。気分は赤毛のアンだ。

コイドという名詞が吹き替えでだけ登場する。メイドの造語なんだろう。
「どうして、アリータのコイドなんだ?」
しかし、原語では「ジェネリックモデルで足りるじゃないか」という台詞。日本語字幕は原語に忠実。吹き替えだけ、造語を先取りしているのか?

Semper Fi(海兵隊の標語=ラテン語)
“You know what semper means?”「忠誠を誓った」
字幕「“常(semper)”にそうさ」
“I do. I also know what fidelis means.”「ええ、センパーファイでしょ」
字幕「“常に忠実であれ(semper fidelis)”でしょ」
“So I think you got to ask yourself... loyal to what?”「忠誠を誓うって言うなら、何に対して?」
字幕「大事なのは――何に忠実かよ」

原語に忠実に翻訳すると:
センパー分かるか?
知ってる。フィデイリスの意味も知ってる。
だったら、よく考えてよ。何に忠誠を誓うの?

吹き替えは(標語を知らない人にも)自然に意味を受け取って貰えるように順序を入れ替えて頑張ってはいる。吹き替えと字幕で処理の違いが面白いところ。

――口やかましい妹。マウントの取り合いにも似た、それぞれの自信と、技量がもし足りない場合の不安、さらには魂や純粋さ(崇高さ、良き者たる意味)を簡潔に表していて巧み。

この対比として、コーベル・ピケットは根っからの極悪人でなければいけない。だから冒頭のカットバックになる。安っぽいけれども必要なヒール(敵役)。

よくできたドラマは、自ずと必要な構成を満たしてる。さすが。

Assemblers アセンブラ
“Assemblers can work miracles.”「医療の発展はめざましい。大丈夫だ」
字幕「アセンブラが何とかしてるさ」
“She appears to have vanished.”「消されたようなんだ」
字幕「消されたかも」
“Assemblers can do that, too.”「たぶん、アセンブラに」
字幕「アセンブラにね」

またしてもPC語源の固有名詞。アセンブラとはどんな存在か?


“It turns out if you prick us, we bleed.”
「こういうことだね、刺されれば血を流すのだ」――シェイクスピア?
シェイクスピアのベニスの商人はこちら:
“If you prick us, do we not bleed?”
「刺されたら、血が出ないとでも?」

組織対組織の抗争は、政治的思想の闘いであるのかもしれない。まだ明かされないが。ネオプリムが敵対勢力かな? 作者にとって、思想の闘いを描くことが主題であったなら、巻き込まれた兄妹は読者を案内する乗り物でしかない。だから、そのように状況が折りたたまれていかないことを切に願う。

「こうすると、調節できる」
五感の共有。面白よね。こういった皮膚感はドラマの中ではかなり重要なギミックになるはず。

「週20万ドルでいいな?」
しかし、コーベル・ピケットは「俺が弱腰に見える」の男だ。伏線が生きてる! 上手い脚本だねぇ。さらに、コーベルとバートンの握手を不可思議に見るトミー。

koid コイド
出てきた。アンド「ロイド」からの造語かな。ペリフェラルに違法性が認められるとして呼び止められるフリンとウィルフ。ウィルフの説明から、ペリフェラルを使えば、MR的に旅行できることが判明。2100年では活用されている技術だった。乗り手のことをポルター(ポルターガイストの略)と呼ぶ。

この局面を利用して、ウィルフはフリンへの気持ちを告白してしまう。それは本心かそれとも嘘か。フリンはお姫様だから……

the Jackpot ジャックポット
2100年の世界で過去に起きたある種の災害のことかな? リサーチ研究所ではスタブからの情報で失われたものの再現を図っているらしい。

ネオプリムはノーランド博士の派閥なのか?

田舎町の小さな変事はメインストーリーを補佐する以上に時間稼ぎの場合があるので、シーズンものドラマの場合は要注意。いたずらに状況をかき回すための役でしかないこともままある。

しかも、メインストーリーの方は行方知れずのアリータを見つけるという、これまた時間稼ぎオプションだ。アリータが見つかってから本筋スタートでは、かなり問題がある。そうならないように、上手く事件を進めて欲しいものだ。

「繋がるってどんな感じ?」
「最初は愛情と勘違いするんだよ。ハプティックドリフトとみんな呼んでる」
……オチも秀逸。

ジョン・スノー
おい! GOTかよ! 海外ドラマファンならこう叫んじゃうだろ。いやまぁ、向こうでは意味のある命名規則かもしれないし。
なんだ、コレラの原因を突き止めた歴史上の人物だって。

アマプラにしては珍しくよくできてる筋運びに思われる。今後もこの調子で続くといいなぁ。
[ 2023/08/08 14:09 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ペリフェラル~接続された未来~(アマプラ)

これはちょっと面白そう。

「異世界で頼りにされたい? ゲームの主人公のように?」
――キャッチコピーを作るなら、さしずめこんなところ。

原作がW.ギブスン(邦訳なし)――日本ではSF小説の翻訳はとうに廃れてしまったようだ。監督はヴィンチェンゾ・ナタリ――そう、CUBEの人。私のお気に入りのウエストワールドも監督してる。

最初の30分で分かりやすい背景説明と“臭わせ”がある。小説ではないから、言葉で説明されていないが、十二分に想像できる。

※以下ネタバレあり

フリンの兄バートンは軍事徴用か何かに参加した過去があって、体内に埋め込まれたサイバー処置の後遺症に悩んでいる。ハプトッシュとかいうのがおそらくそれだろう。ジミーズの酒場であった片腕の黒人コナーはそのときの同僚兵士というわけだ。悪くすれば手足を失うほどの戦場を無事に帰還できたものの、PTSDがあるのが兄だ。

そして、兄妹の母は寝たきりで痛み止めが要る。兄が自分の鎮痛薬を回していたという事実を妹が知る。薬局に行けない理由は社会保障制度(医療費が高くて払えない)か貧困か、そういった理由なのだろう。介護問題に絡んで、この場面に共感する層は現代では相当数に上るはずだ。
※第1話をお終いまで見ると、もっと詳細で正確な情報が判明するが、現時点ではこのように(不正確なままに)受け取れた。

ご多分に漏れない昨今の女主人公の物語だが、兄のアバターを妹が着るというイカしたバーチャル・センスがある。

2099年のロンドンでの出来事を、2032年の北米にいる主人公の助力を借りてどうにかする、というのが主旨らしい(オープニングでも象徴的に地球儀の2カ所が繋がる画が出てくる)。ここでの仮想世界は、ちょっとしたタイムリープにも似てる。

薬物を取り仕切るチンピラ(ストリートギャング)の親玉(ピーター・アバナシー役の人)が直々に姿を現して、子分どもを意に従わせる場面はさすがにドラマ的で安っぽいが、理解しやすい説明だということで、ここでは目を瞑ろう。

確かに目の摘出場面は心理的にイヤなものだ。私も、こういうのは苦手だから、画面を手のひらで隠して視聴した。メスが入る場面はきわどいが、直後の眼球がおもちゃのようにぽろっと取れるところは、出血もないため、想像ほど酷くない。いかにも作り物然としている。つまりは、それが演出意図というわけである。

2099年のロンドンは、遠景でのモニュメント――ギリシア風彫刻とビルディングが一体化している――を除いては革新的な映像にできない理由があるらしい(多分に金銭面か)。なので、街頭はただのロケにしか見えないが、それをモニュメントの意匠である古風なスタイルを既に見せていることで納得させている。

エヴァの元ネタのひとつでもある、コードウェイナー・スミスの人類補完計画みたいな雰囲気が明かされていく。――エレベーターで見たクジラ、のとこね。

そして、本筋が明らかになっていくわけだが、アクション主体のサスペンスのようだ。この表現方法で話数を費やすとなると、質を維持するのは専ら脚本になる。現に閉じて狭いセットは既にチープに見えた(照明や画角などのショットに起因する為だろうか)。VFXはそれなりに維持されているが、この先どうなるだろう。

既視感としては、ターミネーターのサラ・コナーだ。異世界からの影響を受けて、現実が危うくなっていく。

第2話

ペリフェラルと呼ばれる人造物は、既知の固有名詞だとサロゲートだ。PC機器に準ずるギブスンらしい命名か。つまり、新しい概念ではなく、アメコミで既にやられている――そこに、違う時空(タイムリープ?)を加えたことだけが新味だ。

組織対組織に巻き込まれる主人公の話は、あまり面白くならない可能性が高い。なぜなら、そういった構図の活劇はこれまで幾度となく作られてきたから。

主人公フリンの個性的な役割と、どうして2032年と2099年(※)なのかを、説得力を持って展開できないと、先行きは暗い。
※第1話のテロップは2099年だったと思うが、今回、2100年だとフリンの台詞で言及された。

理由がレディ・プレイヤー1だけではちょっと辛かろう。「仮想世界のような現実」の図では映画Matrixを超える作品(感性)はなかなかない――NeoはOneに違いないと信じるモーフィアスがいたから、成り得た(性同一性障害の監督が「今の自分は違う」という感覚から想起した物語かもしれない)。

フリンの場合は、母の病気を盾に強制的に協力を求められる。eスポーツの隠れた名選手がスカウトされたような図で、そこへの拘りや必然は弱い……かな。2032年では1stパーソンシューターはVR的になっているが、どうやら全身運動ではない。だから、未来の新しい装置で脳神経的に接続されたからといって、ゲームのように身のこなしがいいとは限らない。フリンは運動神経(前宙ができる)に加えて頭の切れる娘だという描写はあるけれども。

”You'd like my bona fides? ” 「私のボナファイドを見せよう」
――はぁ? ボナファイドって何? この世界の専門用語?
吹き替えでは、ボナファイドだけなぜかカタカナで残っている。字幕は「誠意を見せよう」。
「これが私の善意だ」 → もう薬を届けてある :こういうプロセスに基づいた訳であるべきだね。上司が言っていた「ボナファイドを使え」ってのは。ボナファイド=善意。

bona fideはラテン語で誠実の意味らしい。信用とか信頼、適正といった使われ方をするようだ。契約条項などで出てきても、あまり日本語では訳出されない。野球のボナファイドルールを知ってる訳者がわざとボナファイドを残して台本を書いたのだろうか。日本語訳としておかしく、不自然だろう。善意と訳しても辻褄が合うし。アマプラの邦訳はエクスパンスを見ても、しばしば雑である。

「過去改変について未来人はどう考えているのか」が、この手の問題では必須のはずで、フリンはそれを尋ねても良いかもしれない。たぶん、尋ねないだろうが。つまり、彼女が未来で活躍することと、母の病気を治すことは歴史において問題視されないのか?

「スタブと枝分かれのパラレルワールド」という意味のなさない解答だった。

適性ではひとまず合格のフリンが、どんな必然と動機から、ロンドンの未来人に協力するのか? 実はここが肝心だろう。Marvelヒーローものと同じだ。

この部分は今回ははぐらかされており、フリンも視聴者も未来人の動機を量りかねる。フリンはどうして自分が必要とされるのか、的を射た答えを貰えない。交換条件を絶対にするのが彼女のせめてもの想いだ。

「思いやりボーナス」は脚本上の巧みなキーワードとして機能している。こうした部分があるならば、ただのアクション・サスペンスで終わらない深みが続くだろう。

兄と妹の関係はなかなか上手く描けている。実妹がいるから分かる。
「お兄ちゃんはどうしていつもダメにするの!?」
兄の心配をよそに“有能な”妹は兄貴に食ってかかるものだ。

「でも、そのやり方では(現実のトラクターは)見つからない」
口答えしてくれるなら、まだマシなほう。ダメ兄貴の経験主義が、利発な妹の勘どころに負かされる。

コナーへの思いやりと助けて貰った礼を兄貴が返しに行く――いい筋だ。

コナーは見逃された哀れみへの返礼として、傭兵の残党をぶち殺した。
「気分良かったよ」

哀れみのことを言われたバートンは
「そいつは“思いやり”だ。俺にもよく分からない」――いい締めだと思う。

捜索対象のアニータは過去とのトラップドアを作れるらしい。繋げる方法は量子トンネル効果だという。これは光が粒子であり波だという理屈のこと。2100年のロンドンと2032年のClanton郡を結ぶタイムトンネルのことを喩えるには壮大なハッタリに思える。まぁ、深く考えてはいけない。

余談:

Y'all あんたらは(あんたたちみんな)
南部英語でよく使われるYou allの略だそうだ。フレンドリーな言い方らしい。ある種の訛りで、フリンは生粋の南部人だ。吹き替えでは、日本語で敢えて主語を使うことはないため、訳出されてない。こうした情報の欠落が、ネイティブなら知りうる知識を(日本人から)削いでしまう。

”We can't afford Pharma Jon.”  「薬代が払えない」
Pharma Jonを検索するとギブスンのTシャツが出てくる。架空の製薬会社の名前ということらしい。ジョンソン・エンド・ジョンソンをもじったというところだろうか。困ったことに、邦訳では固有名詞として一言も訳出されていない。ジョークTシャツにするほど超有名なのですぞ! 意味不明のボナファイドはカタカナなのに! 翻って、この伝はフリンの世界がむしろ架空(仮想世界)……という示唆なのかも。
 こうした恣意的判断はJEDIサバイバーのポンチョ派と全く同じ。原典の緻密な細部を、些末で混乱を招く情報として捨ててしまう訳者のお節介。いい加減やめましょうね。

stub スタブ
「我々が接触すると、過去はstubと呼ばれるパラレルタイムラインの連続体に速やかに枝分かれ(branched off)する」
――ということは、スタブの適訳は「切り株」だろうか。こうしたカタカナ語がSF嫌いを生むのかもしれない。原語なら、原語の本来の意味で通用するからね。ただし、スタブにはIT用語の意味もある(ギブスンなら、そこがミソ)。しかも、それは「本物が用意できないときに動作に支障が無いようにとりあえず置いておく代用品(IT用語辞典より引用)」。ほら、意味深。

ひょっとして、因果から考えると、フリンが関係することが2100年のロンドンでは既成事実なのではないか。フリンありきであの世界が枝分かれした。だから、彼女でなければならない。ドラマの流れでは、まだ、「バートンのアバターを着たフリンの目が、アリータの案内した地下施設で、何かの情報を収集したから」ということに留まっているけれど。
[ 2023/08/07 13:58 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

小説「巨獣めざめる」

上巻がもう少しで読み終える。

ドラマ版とは異なって OPA対火星=地球 の図式のようだ。地球は中立で火星と連合関係を結んでいる。火星は共和国連邦だが大統領制で一星三十条の連邦旗をかかげていることから、USA的な意味合いが強いのかもしれない。さもなければ、中国も併合しているか。

火星を脅したい地球国連本部(タカ派)の図は今のところ出てこない。ドラマ版は話数稼ぎに問題を複雑化させた表現であるようだ。

小説版の、ケレス政府がいきなり崩壊するという感覚は、火星地球間の緊張状態よりもはるかに面白い。ケレスの住人は地球が手を引くことになった火星からの圧力をどうとも回避できない。この視点はキューバ危機よりも現代的だ。よりウクライナの問題に近いだろう。サイゴン陥落(解放)のようでもあるが。ただし、その背景で行動する登場人物の描写は残念なことにろくになかった。

フレッドがジム達に協力を要請する事情はドラマ版より理に適っている。ドネジャー沈没にOPAが無関係なことを証言しろ、だけではない。

ドラマ版よりもエロスに到着するのが早いんだが、残念なことに求心力が乏しい。正義感の強いジムが放った通信でOPA・火星間の緊張状態が高まる、までは、なかなか悪くない出だしだった。

ところが、ジュリー・マオの追跡に関する動機が弱い。ミラーはそれなりに影響を受けているが、他の4人は(TPRG並の)ただの請負ミッションだ。読者も、このジュリーがどれほど重要なのか、推し量る術を持たない。彼女は何か変なモノを見てはいる、それは何か? そこが重要だ、とするフックが弱い。ドネジャー沈没の首謀者の船に関してもまるでヒントがなく、引きがぷっつり途切れてしまう。退屈な作劇が続く。

ミラーの事情は、かなり説明されているので分かりやすい。ドラマ版では描写がなかったと思うが、別れた妻の面影を未だに脳裏に浮かび上がらせる男だ――それがジュリーに取って代わる。

ジムは正義感の強いリーダー肌以外に、人となりが伝わってこない。都合の良い主役でしかなく、作家が見せたい方角に向く風見鶏だ。ナオミも掘り下げが浅く、主役の添え物。アレックスとエイモスもただの脇役。その点で言えば、ドラマ版は彼らの人格をもう少し深く知ることが出来る。しかし、物語における役どころは相変わらず小さい。ミラーは探偵小説の主人公を地で行ってる以外に、この小説ならでは、という部分を持たない。ベルターなのに。それはナオミも同じ。フレッドは、ドラマ版の方がハッタリが利く大物になっている。小説では小物に見える。

今のところ、あまり面白い冒険小説ではないな、という印象。冒険の筋書きがつまらない。
[ 2023/07/26 05:45 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

小説「巨獣めざめる」

六分の一くらい読んだ。

ドラマよりも、原作小説を読んだ方が筋書きがダイレクトでインパクトもあるなぁ(邦訳は第一部しかないんだけど)。ミラーがエロスでジュリー・マオの亡霊を見たのは、単に惚れてるから、だけじゃなかった。そのことは(小説なら)台詞でも明らかにされる。

ところが、ドラマじゃジュリーのイメージだけなので、ナオミが「貴方のガイドなのね」と言うにとどまっていて、真意が全く不明。プロト分子の未知の性質がドラマではずいぶん先送りされてしまうらしいが、小説では早い段階でほんやり分かってくる――地球を目指していて、何らかの平和的な意図があることに! これってスタートレックの得意なやつ(TMP)でしょう、どうみても。で、その先はエピソードの概略を読んじゃったら、スターゲイトSG-1じゃないの。船名アヌビスって、元ネタじゃん!

宇宙のキューバ危機なんて、隠し味だったのを大々的にエピソードに投入しちまっただけじゃないスか? なにやってんの。道理でグダグダつまらんわけよ。

ナオミはベルターだった。ドラマの配役は絶対に考え直すべきだろうなぁ。ベルターは低重力育ちなので長身――2メートルもある。指輪物語並にCGでごまかすくらいの調整が必要だったろう(現に第1話で地球政府の捕虜はそういう描写だった)。そうでなければ、本当に長身の役者を探すべきだった。

ちなみにHALOのドラマ版は196cmのパブロ・シュレイバーを主役のマスターチーフにしている。海外では(特にゲーマーからの)評判がイマイチらしいんだが、ドラマ版HALOはなかなかどうして面白かった。ゲームのHALOはドラマ仕立てにするには単純過ぎるし、前身の「動かないアニメ」版にしても、かなり野心的でありすぎた。中道を行くとはいかないまでも、双方を上手くミックスした上で、必要なドラマを足してて小気味よく、とても見所が多い上手な脚本と演出だった。

さて、小説版の登場人物は皆、ドラマ版と性格が違うようだ。ジェームズ・ホールデンは副長になりたてではないし、束ね役を嫌がっていない。最初からナオミといいコンビだ。アレックスには西部訛りがある。エイモスは……ドラマ版が物静かすぎて不気味。ミラーは上着が嫌いで、探偵役よりもっと刑事役に勤しんでいる。

とくにハブロックは全然違う。ドラマ版は出来の悪い弟分のようだった。

なお、宇宙船のデフレクターが登場できるような場面はごっそりない。核ミサイルで破壊されたカンタベリー号の破片を躱した経緯は微塵も描写されなかった。

ジムが青二才で弱々しいのがドラマ版のまずいところだろう。ドラマ版のナオミがジムに従う(ましてや恋人の関係になる)のは、てんで説得力がなかった。エイモスの後ろ盾でクーを起こしそうなぐらいだったから。

ナオミはただの日系じゃないのか。アフリカ系と南米系の交わりと日本人の先祖も居る、んだそうだ。
[ 2023/07/24 00:11 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

エクスパンス第2シーズン

エピソード3の途中まで視聴

冷戦下のキューバ危機を思わせる背景……古臭い、とても。今は、タイムリーにウクライナ侵攻が起きてしまう世の中だ。地球国連内部のタカ派との権謀術数、加えて戦端を開かないように努力する火星の大将(ボビーの上司)……だけ、ではお話にならない。プーチンのせいで現実味が薄くなってしまったのだから。一体全体どうしてそんな暴挙が可能になるのか。誰も止められないなんてことがあるのか――それが現実。まさに小説より奇なり。

脳筋のボビー・ドレーパー……この浅い人物造形、あまりに単刀“実直”すぎて、もう少しなんとかならなかったのか。逆に言えば、どうしてこんな人物が火星軍にいられるのか、をもっと説得力あるように描くべきなのだろう。その所属から含めた狂い具合(または洗脳)を。

――序盤がトロい「閃光のハサウェイ」でも、エクスパンスよりナンボか新鮮だった。そういう意味でも原作をものした富野御大はすげぇ~ってのがまたまた分かる。植民地時代を過ぎてからの国際情勢と原理主義的なテロ行為の頻発に、エクスパンスにはない同時代感があったわけですよ。

もろもろの事情は「プロト分子」頼りの展開になるんだろう。誰が画策し、何を企図してのエロス実験なのか。当然国連内部と通じている者達の陰謀がある。がしかし、タカ派はこの実験とどの程度つるんでいるのか。結局プロト分子を開戦の理由(漁夫の利的な)にもってくるのか、それとも邪魔な連中をぶち殺す道具にしたいのか。どちらにせよ、その企みであるならば、それは非常に経済的で、戦争の先物取引のようなものだ。利己的で不合理な、主義・思想のよく見えてこない独裁者による開戦の方がよほど現実味があるかもしれない。そうしたメカニズムになら興味が湧きもするが、古臭い陰謀とキューバ危機回避では、いかにもドラマの体裁に沿う上っ面でしかなく、現実にも響いてくるメタなテーマに欠けている。

小説版「巨獣めざめる(下)」の訳者あとがきを読んでみたら、TRPGセッションのリプレイそのものに見えた理由が判明した。主体性の根拠がなく、そこにいる理由や動機の欠けた登場人物たち。まさにTRPGのルールで背景を設定したので出来上がったような人々。パートタイムの、かりそめの冒険者。状況(用意されたアドベンチャー)に流されるままに、主義は主張するも、世界に受動的に対処することにしか役割のないプレイヤーキャラクターたち。とりわけ、探偵という職業はいかにもTRPG的ではないか。プレイヤーであったなら、さぞかし面白いセッション体験だったことだろう。でも、それを視聴者目線で俯瞰すると、いろいろとナラティブに足りない要素を感じてしまう。

第2シーズンエピソード2の最後の方でようやく全体像が知れる。プロト分子はそもそも地球を狙った太陽圏外からの侵略であったらしい。鹵獲したところ、将来的に人類に益をもたらすと研究者達は考えた。ただし、純粋に研究ではなくて、兵器利用を企む地球側の組織(ジュリー・マオの父親)があるようだ。――このプロットはALIENですかね。エヴァっぽくなりそうな気がしなくもないけど。

データ送信先の遺棄されたステーションで研究者達を発見した一行。ミラーは事もあろうに、フレッド・ジョンソンですら合意しかけた唯一の研究者を撃ち殺してしまう。ジュリーの仇討ちと、さもなければ、ナウシカ(自由原理主義者)の立場なんだろう。※ナウシカが出てくるという意味じゃないよ。

ちなみにナオミの苗字は、原作ではナガタだからヘブライ語のネイオウミィではなく、れっきとした日系だ。作家がどれだけ日本通であるかが知れよう。でもドラマの俳優は英国人だった。脇役にアジア系の演者は起用されているにもかかわらず。なぜだろうね?

ロシナンテ号にはデフレクターの類いがやっぱりない。レールガンで穴だらけになる。ガンダムのビットみたいなスラスター制御の浮遊装甲板とか、2010年(2010: The Year We Make Contact)のバリュートとか、一面だけシールド板で装甲がブ厚い(装甲板を敵に向ける)とか、ラムスクープとか、そういうものは全く開発されないのかねぇ? 宇宙時代なのに? それに突撃戦法なら衝角が付いていてもよかったのにね。

ロケット工学はろくに進歩していない(しかし、核融合エンジン)のに、人工透析っぽい装置で被爆した人体を再生したり、四肢のクローン(第1シーズン第1話)ができたり、対G薬があったりと、医療技術だけはかなり進んでるのよね。そのくせ、ハンチントン病にはまだ特効薬がないようだ(クローン義肢が作れる遺伝子操作技術があるのに遺伝病にはダメ?)。がん細胞に関しては抑制してくれる薬があるらしい。かなりチグハグ。

このパオロ・コルタサルという研究者の母がハンチントン病だったと劇中では云っているのだが、だとすると常染色体優性遺伝なので、この人物も50%の確率で同じ病に冒される可能性がある。その辺の話があってしかるべきなのだが、ない。デザイナーズ・チルドレンで遺伝病は除去できるとか、法律がそれを許さないとか、そういう話すらでてこないのは妙だ(2012年クリスパー・キャス9の先の時代だから)。一方、主人公ジェームス・ホールデンには8人の親がいると云っていた。調べると、この意味するところは税金逃れ(税制上の優遇措置を8人分貰えて1人の食い扶持だけで済む)だという。これ、劇中で説明されていたっけ?……こんな生々しいところを材としているのにもかかわらず、片親からの遺伝病の確率には触れないのは単なるミスなのか? 遺伝疾患なら発症してからの治療法云々よりも、発症以前の遺伝子改変の方が理に適っているだろうに。もしかすると、ハンチントン病ではなく、パーキンソン病の間違いではなかろうか。そんなわけで、全般的に科学考証が素人っぽいんだよね(宇宙船の“リアル”な挙動を持ち味としている節があるクセに)。この程度なら、集合知のネットを使えばこたつ記事並に誰でも書けちゃう。出版からの12年くらいの差で、ハード系のSF小説は書きづらくなってるね。専門家以外は。

ボビー・ドレーパーはチーム内では、なぜか頼れるリーダー。リチャード・トラビスが地球生まれで周囲と軋轢を起こすのをなだめる役目。それよりも、ボビーがなんであんなに地球を攻撃したがるのか、周囲はそれに仕方なく同調しているのかどうかを描いて欲しいものだ。

どうにも情報を聞き逃してる気がしたので、日本語吹き替えで見てみたが、ガンシップを武装ヘリと吹き替えていたり、かなり雑だった。英語字幕で日本語吹き替えがベストかも。字幕はマシみたいだけど、量が収まらなくて情報が落ちてる時があるし、直訳になりすぎると全体の意図を把握しにくい場合がある。一方、吹き替えだと台詞の意図はすんなり伝わってくる反面、それでも、翻訳が長すぎる場合には、台詞に収まらずに、やはり情報の欠落が起きる。

この場合、補語が落とされる。例えば、「捕まえたテロリストが○○と言っていた」の、○○が台詞に残され、「捕まえた」がなくなっていたり。まぁ、ドラマの翻訳は適切な脚色も必要だから、むずかしいやね。特にSFモノは、苦手とする訳者ばかりでしょう、きっと。日本でSFが流行らない理由のひとつだと思うね。SFドラマが邦訳配信されていないから。
[ 2023/07/23 08:49 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

アニアーラ(アマプラで視聴)

全般的には古典的SF「さまよえる都市宇宙船」の一形態。中学生の頃に読んだハインライン「宇宙の孤児」を思い出すなぁ――ちなみにアニメだと「メガゾーン23」らしい。アニアーラの乗員も同じ経過を辿れるはずなのだけれど、劇中ではひどく大雑把に省略されてしまったので、子孫は早い段階で滅んだ公算が高そうだ。

アニアーラの内容を吟味すると、我々の棲む宇宙船地球号がもしも劇中のように小さな存在であるとしたら、これまで気にも留めなかった、とある力関係が現れてきて、人々はそれを無視することができなくなる、という辺りだろう。

小さな国家的集合体では政治が人々に与える影響力は格段に強くなり、社会的な管理機構から逸脱することはほぼ不可能となる。外が宇宙空間ならなおさらだ。どこにも逃げ場は無い。被支配の束縛や、先行き不明からくる閉塞感の恐怖がいずれ強く表れてくるに違いない。良くも悪くも一心同体で、何かが起きればそれはもろともだ。

遭難したアニアーラ号では船長が全ての権力を保持し、望むと望まざるとに拘わらず独裁主義の専制君主となってしまう。幸いなことに有能な乗務員連中のおかげで何とか社会は自己完結して回り続け、幸か不幸か全乗客も不自由を感じながらも生存することができている(いた)。

つまり、社会情勢の不安感を分かりやすくしてくれる縮図がアニアーラ号だ。あるいは、政情不安な一国では、常にこうした考えを人々が持っている、という事実を暗示するのかもしれない。

余談ながら、劇中にテンソル第5理論というのが出てくる。これは、修正重力理論――スカラー・テンソル・ベクトル重力の第5の力の場(ファイオン場)のことだろう。重力理論の主流とは外れた別の見方――ダークマターの存在を必要としない――でもあるので、文系物理学オタにはちょっと面白い部分である。一方、現実では「ダークマター星発見か」との記事も踊る。

AIと思われる劇中のMIMAが人間の記憶に触れすぎて自殺するという、いわゆる“創発”を逆手に取ったアイデアも(今だからこそ逆に)興味深い。(1956年の原作から引いていると思われるので)昔のAIは人類を滅ぼそうと考えるより、自死を選ぶらしいってわけだ。究極の進化は死である、というような結論を人工知能に芽生えさせ、人類の手に負えなくなった彼らに自滅を促すオチのSF作品もあったよなぁ(TOSのエピソードだっけ?)。いずれも当時モノ(※)らしい考え方だ――高尚なる者は支配ではなくアセンションを選ぶ。それが昔は死であったが、昨今だと「her/世界でひとつの彼女」のようなオチだ。
 ※といっても、原作から10年くらい下ってしまうけど。この頃は時代感覚が比較的緩やかなので、十分通じそうに思う。

MIMA死亡後の船内の暮らしぶりは、70年代のヒッピー文化を呼び起こすもので、東西冷戦・泥沼のベトナム戦争時に見られた北米の文化的な発露を繰り返して見ているような気にさせる。カルトのセックス儀式のくだりは特に。あんな感じのサイケな雰囲気に懐かしみを覚えた。ちん○が映ってるああいう映像――ブルーフィルム、おじさんが子供の頃には世間にたくさんあったらしいよ。

劇中のMIMAも幻覚剤も、実は同じ役目を帯びた道具。トリップから受ける啓示やインスピレーション――あるときは心に平安をもたらし、あるときは破壊や創造をもたらす――で、何か拠り所を求める人間心理に欠かせない物としての描かれようだった。ジャック・ケルアックとかバロウズとかのビートニクを思わせるよね。

ハリー・マーティンソンの原作――読んでみたくとも古書の取り扱いがどこにもない――には、もっとたくさんの神話や宗教の引用らしきものがあるそうだが、この映画ではろくに出てこない。それらがないことによる、意味の喪失は大きいみたいだ。

派手なハリウッド映画に慣れていると、アニアーラの視点は庶民レベルなので、まぁまぁ面白いところもある。チープさは否めないが、むしろ、駅前のモールと住宅街が渾然一体の都市宇宙船になっているのだから、全編をどこかの百貨店でロケしていたとしても全然不思議ではない。見た目はそれくらいのチープさということで許容できていないと、この映像作品の視聴は辛かろう。

とはいえ……オタクの教養で言えば、もろ「マクロス」という単語に落ち着く(アニアーラに歌は出てこないけどね)。歌謡曲とアイドルを関連付けさせた老舗アニメだって、そもそもオタクカルチャーを町内国家を中心とした銀河戦争を揺るがすセカイ系で表したわけなので、相関のさせ方は似ていると言える。エヴァンゲリオンの第3新東京市といった舞台やラノベ系の学園ものを挙げれば、オタク的な視野は意外にも社会(狭い生活圏)の成り立ちの基礎から組み立てているわけで、その手法はアニアーラと大差ないことに気が付かされる。意外に馴染みの作りであったってことだ。で、オタクはとっくにそういうシロモノを見たり作ったりしており、そこに無かったものを挙げるとすれば、それは「政治的な観点」と言えるんじゃなかろうか。ムラ社会を代弁するハーレムなどは、描いている方だと言えそうだし。資本主義的な政治形態は敢えて外して描くのがオタク。オタクと同じ手法で成り立っている「アニアーラ」に敢えて視るべきところがあるとすれば、それは「政治と人」という部分かと。

ところで、ネジ(デブリ)に衝突して起きた火災事故はちょっと説得力が乏しい。人工重力を発生できるほどであるなら、大なり小なりデフレクターは当然装備されているはずで、障害物との偶発的な事故を全く抑制できていないのはおかしいからだ。そうしたものは宇宙旅行には必須の装備であるはずだ。

「槍」を経て中盤~オチは残念ながら拡がらない。宇宙は広大無辺で人類の存在は矮小という以外に、この部分に思弁的な要素を感じとるのは極めて難しい。人類に「槍」の意味は解明できなかった――最近スラングとしてよく使われる「虚無」。それは分かるけどね、文字と違って、映画にするとつまらなくなる箇所なんだろうね。

ジェリー・アンダーソン製作「スペース1999(SPACE:1999)」の第1シーズンもまた、当時モノのニューウェーブっぽいスピリチュアル系の「さまよえる都市宇宙船」形態であるので、未見の方はアニアーラの対比として視て頂くと面白いかと思う。第2シーズンはちょっとばかりウルトラファイトになってしまってアレだが。Year IIのテーマ音楽は私は好きですよ。
[ 2023/07/22 11:33 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ラザロ・プロジェクト 時を戻せ、世界を救え!

第7話。実は今までで最も興味深いエピソード。

その前に。

シヴがジョージに射殺される場面がプレビューとして何度もリピートされるのであるが……演技が大根に見えて仕方がない。突き出した右手を、撃たれると同時にすぐ左腹に当てる――私は撃たれたことがあるわけではないから、どういった演技が現実的であるかを述べることはできないが、(口径にもよるが)たぶん銃撃による弾の衝撃とショックをまず肉体は受けるだろう。痛みはすぐに感じられたりはしないかもしれない。だから、銃傷へすぐ手が行くよりもまず、やるべき演技が何かあるだろうとは思う。シヴはジョージが完璧に裏切れずに音を上げると踏んで行動していたはずだ。だから、撃たれたことは相当に意外であったはず。他の道を探ろうとか、今ならまだ戻れるとか、俺のようにはなるなとか、ありきたりでも説得すればいいようなものを、フツーにアクション映画風の演技しか出てこず幻滅なのだ。

さて、本題はここから。

生き返らせたシヴに、ジャネットへの咎を感じるから送金しているんだろ、と言うジョージ。大事なドラマを後で付け足してくる脚本。まぁ、アクションやらのスピード感や物語の展開を優先した結果と受け取ってもいいが、本来は殺し合う前にあるべきセリフだよなぁ。

新米エージェントとしては間抜けで浅はかにしか見えなかったジョージが事もあろうに、先輩株のシヴを説得してしまう。ものすごい力業。シヴをスケープゴートにするから自らの悪事はバレないという、ご都合主義で天才級のアイデア。一介のアプリ開発者に過ぎないという周囲の捉え方すらも利用した、さすが天才級のアプリを作り上げただけのことはある、有能な人物の仕業――と見せたい脚本なのであるが。そんな男だから、短期間で銃の扱いにも長けたのだ――と読んで欲しいわけであるが。

――どうだろうか、出来すぎた展開だよなぁ。そんなに人心の扱いに熟知するものか、ただのアプリ屋のようなギークごときが。体験した恋愛沙汰から相手の気持ちが読めるのはアリだが、ジョージはシヴの過去を知らないし、現在のシヴは頑なに偏屈でドライな人物を晒していたわけで。ジャネットへの送金からそこまで見透かせるとしたら、超人級のマインドだ。視聴者はジャネットの出産を何度も見たから、そうした考えが向くように出来ているが、主人公が視聴者と同じような理解をできることとは視点が違う。

ジョージは自ら殺した一般人全員には開き直って弁明しないつもりなのだ(彼らには改変前の記憶が残らず、その必要性が無いから)。非常に打算的な人殺しのクセに、(シヴの)心の痛みは分かると言う。それをもって温情と引き換えに、裏切りの罪を赤の他人に着せても良心の呵責を感じない。なんという男だろうか、ジョージは。物語的に成り立つ主人公のひととなりは、誠実さは微塵の欠片もないくせに感情を手玉に取れるという恐ろしい化け物だった――ある意味、功利的で現代的な若者像に加えて、相容れないはずの人情の酌量を計算する理性が伴っている。

だから、「巻き込まれ型の平凡な善人が起こす悲喜劇」というスタイルを成り立たせるにはあまりにもアウトな脚本だと思うのだ(性善説ではなくなるから)。パーパ・エッシードゥには向いた役柄ではあるが。見れば見るほど自己中な主人公でしかなくなる。要するに、恋人を救わんが為に、「人(または魂)を売った詐欺師」の話になっていく。主人公のため息で済む話にしては、相当に重い中身が転がっていたわけなのだ。もはや、「こんなことになるとは思わなかった」という間抜けな輩ではなくて、「全てを分かっていて、やった」というエリート確信犯になってしまったのである。これは相当なギア・チェンジに映る。もちろん、脚本家はそのつもりで書いたのだろうが。

ジャネットの娘に起きたことが、シヴが原因だったとジョージは推論している。シヴの罪の意識が送金なのだ、と。視聴者が知りうる範囲では、レブロフとジャネットの最初の息子は娘になった(それも何度も)ということだけだ。私は各話一度視聴したきりなので、見返せば見逃した発見があったのかもしれないが。

逆に言えば、シヴが組織を裏切る動機は何であるのか、ジョージが語るほどにはピンとこないことになる。シヴがジャネットと通じたゆえの隠し子ということだろうか。字幕だとセリフをおおまかにしか表しておらず、この細部が聞き取れなかった。シヴは“子供”の因縁でジャネット側へと寝返ったというジョージの筋書きなのか。この線はシヴにとってかなり図星か、都合の悪い事実でなければならず、でないとシヴは反証すればいいはずだ。

私の見立てが間違っていなければ、このドラマ、想像以上に奥深いところへ追求していきそうな気配がある。ただし、混沌と混乱を前提とした作りなので、その複雑さと奥行きが単なるはったりへと変化してしまう恐れも多分にありそうなのだが。

第8話へ続く為の結末を見ると……ダメだろうな。代償という描き方では納得いくが、ドラマとしては矮小でつまらない。登場人物の相関も第2シーズンありきだろう。ラザロというタイムリープを操る組織の面白さは微塵もない。


第8話――第1シーズン最終回でようやっと面白くなりそうな展開に。これまでの長すぎるサイドストーリー&過去話は何だったのか。しかも、ジャネットがいつの間にか超天才になってしまっている。核弾頭の起爆装置を作れるだけでも相当イカれているのに、タイムマシンに詳しいと来た。……なんだそりゃあ! 

構成が上手くはない。もしくは、編集で切り詰めることをせずにダラダラと1シーズン消費することにする体たらく。

サラを生き返らせるというジョージの代償は、改変されてきた過去の記憶の共有で穴埋めできそうなところまでは行き着いた。ここで、ひとつ疑問がある。ジョージと出会ったパーティでの記憶が何十とやり直された結果であることに、サラは疑問を抱かないのか? そもそも気のなかった男から都合の良いモーションを何度となく受けたゆえの付き合いだったわけなのに……

シヴとジャネットとの関係も明確には分からないままだ。シヴはジャネットの出産に関する不遇に同情していた……あるいは片思いであった、とかか? そのシヴの善意を裏切りの証拠に使うジョージは冷血漢で悪辣でしかない。

アーチーは第8話でジョージの裏の顔にとうとう気が付くが、情状酌量してやるというご都合主義だ。

向かいの隣人がパラメディックだった、なんてのは端から読めた。元カノはジョージがスリリングなスパイだと分かるや、ヨリを戻すようなどうしようもない女教師だった(そこに幻滅を覚えないジョージもジョージだ)。

事態は登場人物の罪のなすりつけ合いや派閥の対立では済まないことから、丸く収まる理由になっていく。再び、脚本の力業だ。呉越同舟で、敵味方双方がジャネットの捜索/救出によって3週間毎のループを脱せるに違いないと考え出す。視聴者はそれに乗せられて、これまでの因縁をリセットした気分で第2シーズンを待ち望む……ものすごいトリッキーなクリフハンガー。面白いというよりは騙されてるような案配ではなかろうか。この有様だから、もっとコミカル寄りな作風が似合っていたと思うワケなんだよな。

そもそも、英国人が、どうしてアメリカの銃社会を真似たドラマを作ろうとするんだろうか? 英国は日本と同様に法的に銃の携帯が許されておらず、一般人が銃とは無縁の社会だ。それほどアクションで引っ張らないと視て貰えないのか――北米への輸出を考えている、ということか。
[ 2023/07/21 02:32 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ザ・エクスパンス(ザじゃなくジだろう)

今頃、第1シーズンを視聴中。言うべきは、とにかく構成が優れていない点。第8話で登場人物達が合流し、第1話冒頭から引っ張っていたジュリー・マオの顛末が判明する。

何が悪いって、第9話でジュリーの行動を振り返って見せてくれてしまう。第8話で追い詰めたものの、視聴者はおろか、登場人物も何が起きたか分からないだろうという有様。だから、第9話でまとめて見せる必要があった。でないと、意味不明のまま。

作家がスタートレック――TOSの世界観を借用してエピソードを練ったが、採用されなかったので、自分なりに拡張した物語として発表した……かのような雰囲気だ。ステルス船てのが、いかにも。TOSでいえばクローキングで、おなじみ過ぎる。

火星、地球、小惑星帯という三つ巴の勢力図はまぁまぁ。見せ所はあるけれども、メインストーリーと焦点が合わない。どちらかというと、スペースノイド・地球連邦軍・第三勢力のガンダム世界の縮図に近い。

火星と地球を争わせて漁夫の利を得るという陰謀が分かったようでいて、問題のガンシップのリアクターに巣くった謎の物質を巡る物語が進行中で延々引っ張られる。フェーベの研究所で作られたものとは何か? 

スタートレックで喩えるなら、ジェネシス研究所と難破船ペガサスを合わせたような感じ。そして、トリブルじゃないけどある種のパンデミックかな? それだけで10話作ってしまう……冗長過ぎるだろ!

作家はハードボイルドの探偵モノがお好きらしい。コーヒーとモルモン教徒という突出した芸風も。

ハードSF物理オタクが喜びそうな反転して逆推進、推進力による重力発生、無重力空間を利用した反作用、などなど、細部にはそれっぽい演出がチラホラある。ただし、マグネット・ブーツだけはあまり捻りがないし、デブリを遮るデフレクターすらも存在しない世界。ビーム転送装置なんかもちろんない。そのくせ、ステルス船って? 現代のステルス戦闘機の伝?

ガンダムだと無重力を利用しての船内移動ガジェットもあったけれど、ここにはない。なにげに富野ガンダム(初代)すげぇーってのが分かる。

ガンダムのノーマルスーツや、隔壁損傷の際の応急処置を連想させる場面があり、まさにアニメからインスピレーションを得ているのでは? と勘ぐれるくらいの演出も見られた。

ドラマはグダグダ系。ゲーム・オブ・スローンズは登場人物が語り合うところ(とくに吹き替え脚色)が素晴らしく、進展の乏しいスタイルがたまに生じても、魅せる場面が明快に分かったものだ。ところが、このエクスパンスにはそういったものがない。視聴していてかなり辛い。何のために用意された場面なのか、はなはだ見当が付かず、無用に長い。人物掘り下げの妙が乏しい。

セットは低予算を感じさせてややチープ。CGはハードSFを優先するあまりか、質実剛健が顕著でデザインセンスにこれといったものを感じさせない。

生活感やガジェットは、さほど未来的ではない。今の延長上で容易に理解できるものばかり。価値観の違いは全く生じない。

ちょっと面白かったのは、軍船が隠密行動をする場合の符号を利用して、敵対者の臨検を防いだくだり。

物語の大筋は何も始まっていないし、意外とつまらない。
[ 2023/07/10 22:08 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

パンナコッタ? 少女? メッセージとは一体何か??

アマプラで問題作「プラットフォーム」を見た。スペイン語なので、日本語字幕の情報しか分からない。

理解できた範囲では:
資本主義、聖書からの引用、格差社会、人道的(メッセージのパンナコッタを目の前の空腹の女の子にあげてしまうことで得られる救済)、人権?、アジア人(ミハル、ビビンバ、ポン刀)?、貧困、ドン・キホーテ(同国でもあり、メタな意味がありそうだ)、などなど……

宗教的なモチーフが意図的に使われているのは間違いない。しかし、メッセージはおそらく宗教ではない。信教のことがゼロではないだろうが、政治色の方が強いだろう。

某かに目を開かせることを意図して、風刺か比喩が込められているようには受け取れる。しかし、はっきりとそれが何かは言えない。多分に政治のことであり、貧困や富の再分配に関する社会的幸福を考えさせることが目的なのだろう。

分からないは分からないが、何かを伝えたがっているらしいことは伝わる。それから、スペインというお国の事情は考慮に入れておくべきだろうとは思う。

現状を冷ややかに見ている目と、どんなアクションをすべきか、という部分は感じる。

手っ取り早く監督Galder Gaztelu-Urrutiaのインタビューからヒントを読んでみる。
https://www.digitalspy.com/movies/a31942927/netflix-the-platform-ending-explained-director/

・映画は様々なイデオロギーの失敗を示していて、資本主義のことではない。
・社会主義は失敗だった。
・少女を最上階へ送るというメッセージは単にゴレンの解釈。
・監督にとっては最下層は存在しないし、広い解釈を許す結末にしたかった。
・監督曰く「この映画に政治的で具体的なメッセージはない」
"At the end of the day, the movie isn't going to change the world, but it may change the viewer,"
『詰まるところ、この映画は世界を変えるつもりはないけれど、視聴者は変えるかも知れない』

"Therefore we don't mess with anyone in particular either, the only times we directly have characters represent anyone, it's the hallucinations of Trimagasi and Imoguiri, who represent selfishness and altruism.

"In many ways, the movie was a lesson for those involved in the production as well, because we also saw the same message, that collective stupidity that we deal with that prevents us from seeing the actually important issues.
『私たちが直接的に介入したのは、登場人物のトリマガシとイモギリに、利己主義と利他主義の関係を幻覚で表した時だけで、それ以外では、私たちは干渉するということは誰に対しても行っていないんだ』
『いろんな意味で、この映画もまた制作に携わる者への教訓だった。なぜなら、我々もまた、本当に重要な問題から目を逸らしてしまうような、対処すべき衆愚という同一のメッセージを経験してきたからだ(※)』

・自身の連帯感の限界を描いている。10階に居るときはいい人になれても182階ではそうはいかない。
・この映画は、持てる者と持たざる者の世界を残飯によってはっきりと視覚化している。
・穴とは、私たちが生きている世界の冷たい非人間性を反映したもの。
・貧富の差、上ることを欲する者、下って分かち合うことをよしとする者。何度も視聴することに応える多層構造をこの映画は持っている。

※ここは翻訳がけっこう難しいかもしれない。もう少し砕いて訳すと、「私たちが扱っている集合愚(集合知の逆)が、現に重要視すべき事実に気づくことを妨げる、というまさに同じメッセージを体験したから、この映画の制作は多くの面で教訓だった」

collective intelligenceなら集合知で、collective stupidityという表現もよく使われるようだが、手頃な訳語はないらしい。日本語で政治の意味合いで使うならポピュリズムといったところか。一言にポピュリズムと云っても、いろんな含蓄で使われるが、ここでは「大衆を扇動しはするが、その真意は理解されておらず、全体としては愚かに映る」といった民衆が加担する政治的な迎合のこととする。なので、私は「衆愚」という言葉にした。

したがって、映画のメッセージは衆愚=大衆が理解したと思っていることが総じて愚かさに通じる(場合がある)、であろう。集団になると、個人の立場の時とは異なる意見になぜだか賛同してしまうという不可思議な迎合を仄めかしているのではないか。連帯感だけでは対応できない状況などもそういう結果に繋がるわけだろう。だから、こうすればいいという解決可能なメッセージの意味では語っていないわけだ。それが逆に危険だから。そして、気が付いたなら、目をつぶるな、ということなのだ。日本人なら誰もが経験のある「同調圧力」もまた関係あるだろう。

派手にグロかったり、気色悪いのは、過剰演出を狙っているからだろう。炎上商法と同じで、話題にならないと負けだから。これも大衆迎合のひとつの手法でもあるし。自嘲的で自己批判というのは、その辺のことなんじゃないか。聖書の引用やら、意味ありげな名前やらを採用したあげく、肝心の何を伝えたいのか分からなくなる、というのも「重要な問題から目を逸らす」効果かもしれない。


https://collider.com/the-platform-ending-explained-netflix/
As I said before, this is a social self-criticism. I don't feel authorized at all to tell anyone what to do. The film only aspires to expose, not to indoctrinate or to lecture. And, of course, there are many who do what they have to do, but most of us spent the day looking for excuses ...
『前にも言ったように、これは社会的自己批判なんだ。私は誰かに何をすべきかを指示する権限をまったく感じていない。この映画の目的は晒すことだけで、教化したり説教したりするためではない。もちろん、世の中にはやるべきことを分かっている人はたくさんいるけれど、私たちの多くは言い訳を探しながら日々を過ごしているものだ』
[ 2023/06/29 20:50 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ラザロ・プロジェクト 時を戻せ、世界を救え!(The Lazarus Project)

主人公の視点で組織の活動を紹介しながら、救われる世界の事件を解き明かすのかと思いきや……早い時点で、「事件」は主人公の私的目標にとって代わられ、同時に、活動することになった成員達の過去を延々描き続けるようになる。

その過去話、必要か? 例えば、シヴとアーチーの過去の関係を知っておけば、なぜそうなのか、視聴者は理解しやすくなる。ただし、それを知ったからと言って、現在進行形の物語に何らプラスにならない。作り手が説得力を増強したという自己満足だけだ。

プロットは、未来を救うのではなく、主人公の愛する者の過去を救うことになっていく。ただの組織内部のグダグダ話だ。これは典型的にストーリーテリングが自家撞着してしまうパターン。描くはずだった内容と、描かれていく内容がまるで逆だ。この様子では、H.G.ウェルズ以来のタイムマシンものと大した違いはなくなってしまう。

Giri/Hajiは未見なんだが、ざっと調べると、組織内のいざこざを得意とする作り手なんだなぁという印象。SFっぽいタイムリープものという視点が、非常に弱いトーンになってしまう。確かにタイムリープが答えには違いないが、世界を救うという大義はどこへ行った? 私事(わたくしごと)に囚われる登場人物ばかりで、これでは標題(とりわけ邦題)のドラマは見られるわけがない。「大義/本音」というタイトルの間違いではないか。まるでSFの精神を感じない。ドラマとしては、ヤクザの抗争劇と大差ないよ! がっかりだよ!

まだ第5話だから、挽回してくれることを願ってるけれども。このトーンで突き進むなら、無理だろうな。

救済を求めるのがヒトであり、世界平和に興味なんかあるわけない、というのがこのドラマの主眼らしい。ヒトである限り、そのことは共感を呼び起こすけれども、それは中世のフェーデであって、現代の法と秩序を重んじるような民主国家のドラマにするにはかなり強引な手腕が必要だ。で、その強引さを肯定できるレベルには達していない。なんだ、そんな話なのか、という失望のみ。

解決の途中で銃を使って安易にヒトを殺してしまう。これは主人公のこれまでの主義からすれば、相当に自分らしくないことをしているはず。悪態をついて、その場では後悔を見せながらも、主人公は半ばやけっぱちに目的達成に動く。ここがダメだと思う。これまでアプリ開発をしていた平和を愛する一市民であったなら、そうした暴力の誘惑に屈せずに、自分らしさを突き通して自力救済を果たそうとするべきじゃなかったのか。そうしてくれれば、まだリアリズムがあった。恋人を蘇らせるためなら、人殺しも厭わない(本当はそのつもりは無かったけど)、では困るんだよ。安直だから。だって、そもそもドラマの中なら、いくら殺人を犯しても、重みなんか簡単に無くなってしまうじゃないか。法で裁かれるというリスクを感じさせてくれないと、そこに現実的な共感は生まれないよ。それがエンタメの手法だから、という理屈なら、単に三流になるだけ。

主人公は莫迦だろう。核爆弾を爆発させることが目当てではないはず。爆発させられてはお仕舞いだと判断したラザロのチーフ「マダム」がコードブラックを発令しないと時はチェックポイントまで戻らない。マダムに発令させる機会を促すことが目当てになるはずなのに。さらに言えば、自分の悪行非道は目的を達成してもチャラになるわけではない。エージェントは過去改変の記憶を保持しているので、彼が裏切り者で自己中心的なテロリストだった事実は結局裁かれてしまう――組織を敵に回したままなので、蘇った恋人と逃亡するしかなくなる。そこをクリアしつつ、恋人を助けるところまで考慮していれば、少なくとも視聴者を味方にできたはずだ。ラザロという意味に倣えば、主人公の自白や後悔が後のポイントになるのだろうか。ゆえに、テロリスト製造機に過ぎないラザロ・プロジェクトに、どのような魅力があるというのか、私にはどうにも分からない。悪落ちした主人公の物語としても間抜けだ。

アーチーとシヴが大義の砦側になるわけだが、シヴは早々に退場させられ、アーチーにも感情的に危うい動機はある。これだけだと、シーソーを司る人間ドラマの展開はたかが知れる。主人公の立て方が弱すぎた。群像劇としても魅力が乏しい。脚本としてはあまり良くないだろう。

場当たり的な主人公の行動から察するに、平凡な男が特殊な組織に属したがゆえの悲喜劇を描こうとしているのだろう。ところが、ガンアクションを主にしたシリアス系の演出で描いているために、コミカルさは雲散霧消し、考えの浅い間抜けな主人公が暴れ回るだけになっている。バイプレイヤーの描き方も不十分で、視聴者はどちらにも乗れない。

ラザロという組織に超法規的な活動を許したのが間違いだと思う。例えば、ギリギリありそうなインチキなガジェット(映画チャーリーズ・エンジェル(2019)のような)を駆使することで法を犯さないで済むようにしておけば、コミックリリーフが生きたはず。これであれば、平凡な男がスカウトされても活躍できる理由になるし、人殺しを気に病む必要がなくなる。ラザロの一員であっても法の遵守は絶対にしておけば、随分とニュアンスが変わってくる。主役にパーパ・エッシードゥが起用されたのはザ・キャプチャー第2シーズンのような演技を期待されてだと思うので、そんな男がまともに銃を扱えて人殺しを平気でやってのけてしまうのではドラマとして不味かろう。
[ 2023/06/28 16:19 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

インヴェンション・オブ・サウンド

チャック・パラニュークの2020年の新作。ファイトクラブで有名になり、その後、日本では17だか18年だかの空白があったそうだ。

誰かが本作を、P.K.ディックのような、と称していたが、その理由は90%まで読み進めるとはっきりする。

いくつかの伝統的なプロットが直前まであったのだが、この決定的な一打で全てが劇的に変化。なんとも不可思議だが確定的と予想される幕引きへ突き進む。

中年男の主人公がクライマックスの前に慰めを得るというあたり、まさにディック。

あれほど必至の筆が、こんなにも不確定に揺らぐとは微塵も思わなかった。迷いの筋書きにも見えないこともない。

予定調和を排する方向で、読者の予想を裏切りながらプロットを進めていく作風になったらしい。伏線は回収されて読者はある程度納得するが、主人公が予期していたドラマティックな機会はとうに流れてしまっており、一向に補填されていかない。どうなるのだろう?
人が生み出す一番の傑作は、その人自身だ。人は自分の外見や行動を磨く。自分の作品がよりクリアに見えるのは、ほかでもない、自分の心にあるときだ。誰もが自己イメージを描く。それは、ほかにもありえた選択肢をすべて拒絶して選んだ、理想の自己像だ。

まさに物語のプロットがどうしてこうなるのかを言い訳しているかのよう。

消去ボタンが押され、あり得たプロットが灰燼に帰す。作家はとうとう物語世界と同化して、出口を登場人物と一緒にもがきながら試行していっている。木曜四時、脱稿のタイムリミットは設定済み?

作中作「オスカーの黙示録」が中年男の未来を提示し、読者が驚愕する。

一子相伝の中に、似たプロットを過去に見たことがある。また、果たされる前から予期された機会を互いに果たせずにいる関係。追う者と追われる者の、不可思議で逆転する関係。

いわんや、最期はシックスセンスを救済に使う……

死と生。なんとも劇的だが、これは果たして小説だろうか。どうにも境界が薄くなってしまった人生の曼荼羅が、読者に開陳されてしまったようだ。小説で語られることによって厚みを得たはずの某かが、人の一生を騙ることで、嘘くさく別の何かへと変貌してしまった。中年男の心の再生を上手く語ってはいるのに違いないが、どうにもそれは出来すぎた感があり、相容れない。

しかし、「オスカーの黙示録」の補完がなされたと知れるや、そこには完璧な円が生まれたことが朴な読者にも分かる。

さして本当の結末は、デクスターだった――

なんとも微妙な、エンターテインメントなのか、そうでないのか、エッセンスを人生の問いに求めるのか、揺らぐ小説である。ファイトクラブの明快だった頃が懐かしくもある。
[ 2023/06/26 09:03 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

配信映像を信じてはいけない世界

BBC制作の「ザ・キャプチャー 歪められた真実2」を視聴。ウエストワールド第3シーズンのテーマをより現代的に先鋭化した、SFといっていい類いのドラマだった。

「ビッグデータの解析から人間の(“嗜好”以上に)志向が判断できる」という前提は同じ。ザ・キャプチャーではそれを解析するのは今日的なAIだとしている。

一方、ウエストワールド第3シーズンでは、デロス社のテーマパーク「ウエストワールド」の来園者から収集された膨大な個人プロファイル(BOOK)を、鏡像(仮想の個人)として仮想世界で大規模シミュレーションすることができる「レハブアム」というスーパーコンピュータが登場する。それにより、個人の一生(病気や職業適性、鬱傾向や自殺願望、寿命など)が丸わかりになってしまうというディストピアが実現するも、しばらくは管理社会として成功を収めていた。というのも、負の情報は伏せられて、全ての人々が社会貢献できるように積極的な管理にのみ生かされたからだ。ところが、外れ値として社会から除外されていたケイレブを、ウエストワールドから逃亡した覚醒ホスト(生体アンドロイド)のドロレスが意図的に助けたことから事態は反転し、レハブアムの真実は大衆の知るところとなる。やがて暴動が起き、人々を支配するアルゴリズムはドロレスの策略と共に崩壊する。

ザ・キャプチャーの第2シーズンが興味深いのは、ニュースメディアとしておなじみのBBCが自社番組を劇中に登場させながら、英国のセキュリティや米中におけるある種の冷戦状態をネタに、ディープフェイクが密かに活用された国際的な諜報活動が、「誰にも気が付かれないもの」として描写されているところだ。

第1シーズンは同様にディープフェイクを扱いながらも、小規模なえん罪事件の成り行きに終始し、あげく続編を匂わす終わり方であったため、サスペンスとしては非常に煮え切らなかった。翻って、第2シーズンは毎回とても面白い。重層的な疑いが主人公レイチェル・ケアリー警部の周囲に用意周到に張り巡らされ、エピソード毎に着実に、一枚また一枚とベールを剥がしていくのだ。

第2シーズン第6話で、それまで主人公視点と神視点を行き来していた物語が、とある場面の裏を明かさないまま第7話に突入する。視聴者もケアリーも半ば置いてきぼりのまま、回想場面にて真相が明かされていくと、「なるほど」となる。

ここで、ウエストワールドと同様にアルゴリズムというキーワードが出てくるが、ザ・キャプチャーの場合は、アルゴリズムの判断に従うことで大衆を味方に付けることができるといった使われ方になっていた。つまり、AIは現状分析だけでなく、分析の結果によって有意な選択肢を示すことが可能で、出世を有利にできるというわけだ。本人の主義と異なる“お勧め”活動は、中継や配信を技術的に乗っ取った上でディープフェイクが代役を務めることで実現されたとしている。

レハブアムは管理の名目で、人々から人間らしい希望や野心といった自己実現の能力を奪い、予測に準じた動きしか許さなかった。ゆえに、外れ値は社会の成立を乱すとして組み入れられること無く捨てられていた。予定調和と排斥によって成り立つ安定と存続だったわけである。ギミックとしてはやや古臭く、80年代あたりの(手塚治虫も作った)マザーコンピュータものと大差ないと言えばその通りだ。ウエストワールドの描く未来社会は相当に大雑把にしか表現されていない。

――レハブアムの功利主義がどこにでもいる自由原理主義者に滅ばされたと言える。劇場版銀河鉄道999(1979年)もある意味で自由原理主義者の鉄郎によって機械の体という功利主義が滅ぼされたと言える。漫画版ナウシカも自由原理主義者の一人で、自然のままに死ぬ自由を人類が獲得するために、旧文明からの遺産を否定した。深く考えると、非常に古典的な、政治と正義を巡る問題なわけである。この問題のバージョン2.0のドラマがザ・キャプチャーの第2シーズンである。そう考えながら視聴するとなおさら面白い。

功利主義は、まさにマザーコンピュータやAIの得意とする命の重さを定量的に考えもする、全体の幸福に注力した世界。その合理性は、ヒトが普段暮らす上で考える正義と相反する場面がある。レハブアムの例では、それを丁寧に描写している。999の機械の体を持った人間が(生身の)人間狩りをして他人を思いやる心を無くすのは、トロッコ問題の極端なメタファーと考えられなくもない。鉄郎と母は機械伯爵の領地に迷い込んだ不法侵入者で、そもそも貧乏な鉄郎達は社会に貢献していない。こうした捉え方は作者の意図するものではないだろうが、管理社会における合理性とは、まさにルーカスが描いたTHX1138の追跡を止める理由に他ならない。かといって、平和で協調性のある人々の考える「正義」を物語化すれば、それは政治になり、単純な革命のあらすじでは不十分過ぎる。今私たちが体験している生活そのものが政治の結果でもある。自由や平等を重んじた正義にもいくつかあって、それらは互いにいがみ合いもすれば、手を組むこともある。リベラル、リバタリアン、共同体、左派、保守、ネオリベ、共産主義、右翼、などなど。だからバージョン2.0に意味がある。SFっぽい管理社会を捉え直すと、そこには政治が必要不可欠になるのだ。そして、いま現在、世界にある問題とも繋がる。

アルゴリズムのおかげで、とある政治家が当選できたという例が、ザ・キャプチャー劇中にて披露される。これは某大統領の選挙活動がSNSでバイアスのかかった結果を導いたものと似た手法に思われる上に、劇中のAIは、政治家の過激な振る舞いがむしろ人々を食い付かせる、という理屈や結果を予測できるとしている。視聴者が目の当たりにしてきた現実の延長上にあるかもしれないというホラはなかなかどうして巧みだ。

劇中のトゥルーロ分析のCEOグレゴリー・ノックスは、パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies)のピーター・ティールがモデルだったりしそうだ。

しかも、強烈なダイイング・メッセージがある。曰く「アメリカに気をつけろ!」だ。EUを脱退し死にゆく英国の、BBCがこの主張でドラマを作るのは、相当イってる。台詞にも出てくる「スノーデン」のありそうな次だ。ケアリーがか弱く、護身術を身につけてもなお抵抗できないほど無力なのは、英国そのものが骨抜きにされている事実で、信念がどこにも存在しなくなった空虚さを再び演出しているに過ぎない。年老いた英国人は甘んじて受け入れているが、若いケアリーはその理不尽さを我慢できない。英国の政治的な閉塞感を、ひょっとすると上手く表現しているのかもしれず、他人事とも思えなくなってくる。

しかし、ジェマ・ガーランド警視は、魂を売っても生き残って最後に一泡吹かせてやれると諭しているかのようだ。

さらにまた、「報道を信じるな」と登場人物に言わせている。天下のBBCのドラマで。おまけに、BBCのニュース・キャスターの1人はスパイなんである。そして、最後は……

顛末が振るっている。なかなか痛快な出来で、前作に比べて完成度が高い。もっとも、サスペンスタッチの後ろ暗い部分は結末へ向かう過程でさっぱり墜ちてしまったが、いわゆるハッピーエンドを優先したエンターテインメントとしては相応に満足度が上がっただろう。
[ 2023/06/24 19:48 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ピカード第3シーズン第10話が決定的にダメだと思う理由

意図らしきものが解釈できるだけに完成度が低すぎる。プロットに穴もしくは綻びが存在し、ヒューマニズムを肯定するときの欠陥に繋がるから。その結果、単にエモいだけで安っぽい。

ジャン=リュックとジャックの関係だが、第3シーズン第10話以前の段階で、既にほぼ和解しかかっていたように見える。さもなければ、ジャックは実父に愛想を尽かしていたかのような姿勢を見せていた。ゆえに、いずれにせよ、ボーグ集合体に帰属することでジャン=リュックに反目する必要はもうなかったのではないか。あるいは、実父の気を引くための行いと解釈できないこともないが……そうだとすると、実に子供っぽい行動だと言えてしまう。

ドラマの意図が、認知されない息子ジャックの実父への反目とわだかまりにあるとするなら、ボーグ集合体に帰属することになる筋運びでそれを表現することは不十分、不適当である。むしろ、意図がブレる。

父親の愛に飢えていた青年ジャックを描く……というドラマだとすると、見せ方が幼稚か、さもなければ雑。ジャックの年齢は中学か高校生くらいなら。ギリギリで大学生。34歳のエド・スペリーアスが演じる姿を画面で見ている限り、そんな子供っぽい衝動のある人物には見えない。

【ポイント1】ジャックの立場から

ジャックは:
 クイーンやボーグ集合体からの同化圧力に耐えかねてしまったのか?
 それとも、単に実父ジャン=リュックに反目したいからこそ同化を認めたのか?
 本当にボーグ集合体が理想の家族だと信じていたのか?

――この辺の見せ方がブレブレである。というのも:

 ジャックは当初、謎の声に応じないようにしてきた(8話)
 ジャン=リュックとは反目していたが、やがて受け入れる方向へ柔和した
 ところが、集合体のような理想の全体主義にかぶれているそぶりを見せ(9話)
 ボーグクイーンの誘いを断るどころか受け入れてしまう(クイーンを殺せない)

ジャックはボーグクイーンの誘いに抗えなかったが、その理由に説得力が無い。どうして殺せなかったのか? その一方で、どうしてボーグの全体主義にああも簡単に傾倒するのか? 唐突で、物語展開に都合のいいように動かされている。ビバリーと一緒にレジスタンス的活動をしていた、その気概はどうして急に弱まってしまったのか?

【ポイント2】ジャン=リュックの立場から

(ボーグ集合体の中でジャックに話しかける場面)ジャン=リュックの気持ちの吐露と裏腹に、陽電子ゴーレムの肉体やラリスの存在をどう言い訳するのか。ピカード曰く、スターフリートという家族に一旦は属したものの、ことある毎に壁を感じ、人生に違和感を覚えたからこそ、ブドウ農園で孤独に死ぬのを待っていた、のだという。しかし、第1シーズン終盤では、死ぬのを待つどころか進んで不死身にすらなった(周囲の者がジャン=リュックの本心を無視したことになる)し、第3シーズン第1話では、ラリスとどこかに出かける準備でウキウキしていたのではなかったか。

ボーグとの同化を愛の力が妨げる、というエモさ。この場面の演出が感動大作まがいで安っぽい。(そんなもの、ボーグの同化の前では、そもそも無意味だったはずなのに)

ボーグのメタファーがカルトへの入信と脱会であること(親の立場からの青少年への身近な教訓)。わざわざ、スタートレックのドラマで扱われるべき話題か? 最大の欠点はココ。かように親子像を描きながらも若者受けを狙うアクション演出で攻めてるが、成功していない。視聴者層としての市場イメージがズレまくっている。例えば、教養のある、英語圏の保守層の親が子供に見せたくないと感じる残虐演出や言葉遣いが多すぎる。対象の若者にとってはイケてない(古臭い)上に説教臭い。

【ポイント3】設定の立場から

TNG、VOYを視聴した範囲における設定からすると、ボーグ集合体の中で個対個の会話はおそらく出来ない。集合体に接続されると、個は消えてしまうため。セブン・オブ・ナインのように、ユニマトリックス・ゼロに入れる者であれば、夢として互いに会話できるはずだが(ただし、その記憶は通常では残らない)。端的に言えば、ドラマを成立させるための設定無視。ところが前述のようにドラマの立て方がショボい。何のために設定無視したのか、という出来。
[ 2023/04/27 21:03 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ピカード第3シーズン最終話

最終回。さぁ、死亡フラグ回なのでしょうか?

どういうわけか、「前回までは」の最後のEngageがMake it so.に置き換わっていました。今回の劇中でもEngageが出てくるため、かな?

ボーグクイーンは前シリーズでの女優さんが逝ってしまわれたため、違う方のはず。変成メイクのせいで、まるで分かりません。

アグネス・ジュラティのボーグ集合体への影響は既にあった(毒を盛られたという表現がされてました)ことになっているようで、もう切り札ではないことが早々に明かされます。

存在感の薄くなってしまったセブン=ラフィ組。コックがパイロットなのはいいんですけど。年齢は? 25歳より上でないとダメなんでしょ?

格闘技に長けたボーグ個体(アジア系)はおかしいと思います。ボーグユニットの動きはもっさりしていて、変調シールドでフェイザーを止めるくらいが主たる働きだったはず。

フェイザーを持ってきていないライカー。敵地に乗り込むのに、武装してないってどういうことなの?

ビバリーの武器制御で危機を脱する――20年の蓄積でもいいけど。トロイがやるとどうせ壊すしな。

直感で「出来る!」というデータ。これは興味深い。かつてのヴァルカンのスポックと重なる。

スペースドックが最後の砦ってのも妙。惑星防衛システムがあったはずじゃ。

セカイ系になってしまった同窓会TNGことピカード。息子を救うことが宇宙艦隊、ひいては惑星連邦、全宇宙を救う。

ヴァーディクと改造された可変種とは何だったのか……ただの前置き。

スターウォーズのX-Wingトレンチと化したボーグキューブに、データの悪乗り。我々は、一体ぜんたい、なんていうショーを視聴していたというのか? これはディズニー+なのか? そういえば、マンダロリアン最新シーズン最終回を視聴しました。ウィッチャー:ワイルドハント(ゲーム)にも似た締め方。一匹狼は我が家と弟子を所有し、定職も得ましたとさ(いないのは嫁くらい)。めでたしめでたし。

あぁ、ボーグ集合体がオタクにとっての共同体みたいな描かれ方になってるやつだね。これはスタートレック:ディスカバリーの第3シーズンの引きこもり(銀河中からダイリチウム・クリスタルが謎の爆発事故を起こした原因)と同じ。

この手のメタファー、いい加減止めて欲しいわ。旧エヴァ劇場版と同じで、視てる方は怒り(若い場合)か溜息(老成してる場合)しか出ない。時代はもはやフリー・ガイ以降なんだよね。レディ・プレイヤー1は古いのさ! 

「私が主役、○○で何が悪い!(○○にはオタクとかゲイとかモブとかこれまで否定的に使われていたテーマが入る)世の中、楽しんだもの勝ち!」これなのよ。

おまけに言えば、ライアン・ジョンソン監督のSWもそう。

Rose Tico: That’s how we’re gonna win. Not fighting what we hate, saving what we love!

意訳:勝利したいなら、憎い敵ではなく、愛するものを救うことを考えて。

これは今回いみじくもセブンがパクりました。でも、セブンが鼓舞するのは自己犠牲的な特攻精神なわけで、これは頂けませんね。ローズが止めたかったやつですから。要するに「オレがやらねば誰がやる」なんだけど、英雄につきものの精神(生きて帰らない場合がある)で使いどころ注意ですわ。使っていいのはキャシャーンと悟空くらい。エンタメだと特に命が大安売りされるので。ピカードでは温故知新なのか、Redshirt=使い捨ての精神らしいから!

「ボーグ集合体の意識の中で、ジャックと対面するピカード」の場面における別の、もっと一般的な見方:

フツーのリア充や大学生にとっては、新興宗教に絡め取られて洗脳されちゃったパターン、みたいなもんか。あるいはタイムリーなら、シン・仮面ライダーのショッカー?(なお、シン仮面は未見なので、ここでは言及しない)

なんというべきか……テーマの低年齢化を感じる。TNGは世代を超えて通用する普遍的な話題を扱っていたものだが、ピカードのシリーズは若者にお仕着せの色付き眼鏡を配るようなもの。今の若い人は、たぶん、こういった旧態依然の捉え方をしないし、危機管理能力のほうは大人が心配するほど酷くない。だから、メタファーとしては不十分で、その役回りを体現できていない。

新興宗教(カルト)勧誘や脱会の問題なら、個別案件でもっとドキュメンタリーチックなものでないと、まるで参考にならない。それくらいリアルは深刻だろうに。

つまり、属すべき家族こそスターフリートだった、というかつての(ハーフ・ヴァルカンの)スポックみたいな帰属意識や承認欲求(人生の意義)を、ボーグ集合体というエセ家族で満たしてしまう可能性・危険性を、ジャック・ピカードの例で披露している、と解釈できる。これは現代的には、新興宗教に入信してしまう若い人の心理と置き換えて見ることができる。

ジャン=リュック・ピカードは、誤った帰属意識を持ってしまった息子に、父親という立場から、真の家族とは何かを訴えて脱会を促しているわけだ。

これまでになかった視点だし、セブン・オブ・ナインも、ユニマトリックス・ゼロの危険性を「安住しかねない危険な帰属意識」としては示さなかった。なぜなら、そもそもボーグの同化が強力であることは必至だったから。集合体に属すると個ではなくなる、という説明で十分で、不穏当な組織に取り込まれた個人というメタファーでボーグを捉える意義がほぼなかった。ボーグは集合的無意識と意識の心理学的比喩であったり、全体主義と個人、調和を乱す側としての反社会的思想の個人、といったものの原型に思えた。

だから、どうしてもメタファーにしなければならないとするならば、せいぜい、主義の反する共産圏思想か、信教の違い、搾取するブラック企業といった、何らかの差異に基づく置き換えで済んでいた。それが今や、カルトの社会問題が大きく降りかかっている時期であるから、身近で有害な思想の集団という見方ができるようになった……ここに、近視眼的な時代の変遷を感じてしまう。

ところが、このジャン=リュック・ピカードが父親として頑張る役目、TNG「宇宙孤児ジョノ」で既に見事にやられている。

一方で、ジャン=リュックにおけるTNGボーグの意味は、トラウマからの快復や、より大きな権力に蹂躙された個人の再生であろう。ボーグクイーンはジャン=リュックの自我を縛り、一切の自由意志を奪って、かつての兄弟団・同胞への仇なす行為を強制させた。当時なら、勧誘されたカルトへの入信よりも、不本意な戦争に加担させられた一兵士としてのメタファーの方に分がある。いうなれば、「ランボー」1作目の背景だ。

つまり、もうまるでメタファーの質が違うのだ。スタートレック:ピカードはどちらかというと初歩的な、単純な関係性の中での話題からしか描けていない。だから家族の問題から銀河の一大事に波及してしまうセカイ系なのだ。かつてのTNGはラノベに落ちてしまった。

子供(息子ジャック)の存在が、父(子供が苦手なジャン=リュック)の有り様を変えた、という面には心を打つものがあるが、老いた父には遅すぎた。むしろ、あの年齢であれば、認知されていない息子という意味で描かれるべきドラマだ。そうであるなら、ジャックの反抗心は当然で、帰属意識の描きようもあんなに表面的で単純なものにはならない。息子には息子の生き様と存在理由があるはずで、ボーグに染まるようなことは起きないか、もっと複雑な事情でのみ生じる難問になるだろう。遺伝から生じた脳のボーグコード送信機能で済むような、単純で安っぽい物語じゃない。

   -- * --

愛の力があれば、転送座標は要らない。イムザディーの底力ではあるが……残念ながら安っぽくて三流だ。いつから、スタートレックはハーレクインロマンスになってしまったのか。

エンタープライズDが頭上に到着。これ、まんまスターウォーズだよね。ディアナじゃなくて、エピVのレイアだろ。誰がSWにしろって言ったんだ?

何もせずに炎に焼かれるクイーン。クイーンが死ねば、ボーグドローンは人間に戻る。えっ? 遺伝子にボーグコードが入ったんでしょ? クイーン関係なくない? 引くわ。冷めた。画面の中の登場人物がハッピーに見えれば見えるほど、シラケた。なんや、それ。

最終話60分あるうち、なんと40分で、もう事件が解決されちゃう。残り20分、何に使う気なの?

いやまぁ、その後は…… ジャックの待遇に関しては、ある意味、ウェスリー・クラッシャーのそれよりタチが悪い。ご都合主義なんて生易しいものじゃないね。一体どれだけの忖度が――カーク、スポック、マッコイのトリオが懐かしいゼ。セブン・オブ・ナインが何を言ったかなんてのは、ローワーデッキですらやりそうもないネタ。悪ノリも甚だしい。

どうせなら、ジョーディの奥さん見せてくれよ。リア・ブラームスなのかどうか。ウォーフだって結婚していたっておかしくない。個人主催の飲み会なら、トロイ夫妻に限らず、配偶者同伴でも不思議はないんだから。

……いやもう、実にくだらない。酷いストーリー。なにこの勧善懲悪、めでたしめでたし。今のファンが見たいのってこんなものなの? かつて新スタートレックと言われていた元ネタがベースになっていたなんて、全く信じられない。制作者全員切腹モン。 

こんな続編なら、なくて良かった。潮に乗る必要はなかった。パトリックも頑として断ればよかったんだよ。こんなになるくらいなら。大いなる失望。もうダメだ。

スターのようにファンも味方してくれるのか? 私はできない。家族向けの会だから、厳しいことは言われず、受け入れられる、みたいな空気だな。どれだけの人が正当な評価をしたいと思うか。懐かしさで済む人が羨ましい。

最後、ポーカーテーブルを俯瞰するショットは、いっそのことロングまで長回しで引いて、周囲がスタジオセットだと分かればいいのに、と思った。それくらい“作り物”めいている。

まだやるのか。ハイハイ、若者に媚々――老人がお節介にも若者を主軸に据えたテーマでぶちたがっている、ハイカラに見せたくて仕方の無い、どうしようもない活劇でしたが、諸事情により云々――のお話でしたね。今の若者は見向きもしなさそうだけど。素直に、TNGで育ってきたオッサン(オバサン)向けに、そして、そのオッサン(オバサン)が持ったであろう所帯で一緒に視聴できる内容でやればよかったんだよ。変にアクションドラマを気取らずに。
[ 2023/04/23 23:46 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ピカード第3シーズン第9話

【以下、ネタバレ】




ほらな、ボーグやろ! レッドレディで気が付くっちゅうーの!
もったいぶらせても、結局それぢゃんか!!

わざと繋がり(偉大なる繋がり)とツルのイメージで可変種にミスリードさせたりしてたが。

ようやっと、最初で最後のまともな核心に来たわけだが……どうなることやら。

でたよ、トンデモ設定悪用。TOSのドクター・マッコイが嫌がってる理由みたいなもんだけど。

転送装置でDNA改変はやらない/できないってことがTNGの特定エピソード以降、新たに定まっていたのに。かつての制作陣の縛り設定を今回ガン無視だよ――尤も、可変種の今回の付け足し(お間抜け)設定見れば嫌でも分かるけど。

こうした設定を縛った背景にはしごく真っ当な理由があって、設定オタ的なギミックで解決策が講じられるのは、何らドラマに対してプラスになり得ないという教訓ゆえ。ゆえに禁じ手になったの。許されるのはワープコア排出(ローワーデッキ万歳!)くらいのもん。

転送装置は24世紀においては、ただの移動手段のひとつに過ぎず、決して医療器具には相当しないこと。この辺がTNGの後半では徹底されたのに。

ピカードの遺伝にロキュータス繋がりでボーグへ飛躍したのは、まぁ理解できるし、なかなか巧みだとは思うけれども。転送装置はやり過ぎだね。フロンティア・デーで「地球にスターシップ大集合」も間抜け過ぎでしょ。

全体主義(!)と台詞でも揶揄されたボーグに(もともとその気のある)宇宙艦隊の理想(共産)主義。北朝鮮や崩壊したソ連お得意の軍事パレードかっての。例によって第1シーズンから続く皮肉なんだろうね。

シェルビー少佐! あな、お懐かしや。浮遊機械都市ボーグで初出の。

もちろん、解決策は――過去の地球で将来のボーグクイーンへの影響を与えたはずの――アグネス・ジュラティでしょ? そういえば、ラフィの存在が空気。彼女、どこへ行った? あ、いた、チラッと。

えー25歳以下!? 若杉ね? 候補生じゃないんだから。あんなに大勢、ブリッジ要員として若者がいるものかなぁ? 

前回、なにげに中国系の身代わりでヴァルカンがヴァーディクにヤられたことには、何らかの事情を感じるね。また今も中国系がボーグの音頭を取ってるし。乗っ取られたってのは、中国資本に、って言いたいのかもね。

あーあ。ピカードのこれまでのシーズン中で最も成功したキャラクターを殺しちゃった……ショウ艦長、いい味出してたのに。リオス艦長よりか、ずっと良かったのにね!

なんとも、ロボット博物館のマジンガーZみたいな話になってきた。でも、これって、TNGで老人ピカードの脚本(最終回)を作る際に、あり得ないパターンとして既に語り草になってた奴だよね。まぁ、安直すぎるよね。同人作品みたいだし。ちょっとなぁ……

カーペット……あまりウケてないかなぁ

コンピューターボイスは、字幕版でもメイジェル・バレットの声だった。オリジナルから、よく探してきたよな。吹き替えも当時と同じで踏襲してる。ここ、なにげに凄くね? 

ナンバーワンを副長って訳していたのは本当失敗だったよね。失敗訳を踏襲せんでもええのに。

「そうしろ」――吹き替え版(字幕も同じだった)
Make it so.(TNGでのピカードの口癖) これなんて訳してたっけ? 「そうしたまえ」?

エンゲージが見れたところでチャンチャン。
[ 2023/04/20 01:44 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)

ピカード第3シーズン第8話

「可変種にワクチンを届けた。しかし、信者を武器にしてだ」

このくだり、第一シーズンのアロンゾ・バンダミア艦長がかつてシンスの使節団と出会って、(視聴者に対して)説明不明のまま、とにかく死んだ、という事件と使い方が同じでした。

DS9でしたっけ? そういうエピソードがあったような気もしますが、思い出せるキーのドラマをここでは問題にしておらず、事件の結果のみを引いてるので、大した意味がないんです。

ジャック・クラッシャーの赤い目はグリーンサイトでしょう、ゲーム・オブ・スローンズに出てきたウォーグの。どの辺がスタートレックなのか。

ヴァーディクの非道を見てると、「カーンの逆襲」を思い出しますが、それでも酷い。一体いつの時代だろう、という雰囲気のドラマじゃないですか。悪漢にはそれなりの魅力があるものですが、ヴァーディクにはそういったものが欠片も無い。

リブート版のカーン・ノニエン・シンもかなり腐心して再構築されていましたが、あまり成功したようには思えませんでしたっけ。それでも、どうして、ああなったのか、を時間をかけて説明していましたね(役者の無駄遣い)。ヴァーディクも自分で説明してましたが、それでも唐突で短かった。

ライカーとトロイの“傷をなめ合う道化芝居”は、ギリギリまとまっていましたが、その理由は彼らのバックグラウンドをTNGでさんざん見ていたおかげ。他人の不幸話が第一シーズンでも山ほど出てきましたが、まだやるつもりか! 癒やしと別れがテーマである、とさも当然のようにアッピールしてらっしゃいますが、この脚本家含む作り手連中には、残念ながらその実力は無いっぽいですよ。いや~三文芝居にも程があるでしょう! という出来。

ウォーフのご都合主義。「待ってました!」と、シラケる、は紙一重なのかもしれませんが、ピカードではどうにも後者です。エピソード7からこっち、第一シーズンのノリが健在で、もう無理ですね。駄作一直線です。

ウォーフとトロイとライカーの三角関係は面白い。でも、これもオールドファン向けのサービスのひとつ。ピカードという作品の魅力ではありません。

途中で、ヴァーディクはジャックの母親なんだな、と直感しましたね。理由はよくわからんけど。ディストローム・ステーションの実験の副産物かもしれませんし、何らかの意図があったのかもしれませんが。それで、あんなにご執心だったと。――もし、やれるなら、そういうセンもできたのに。だから、上手い伏線張って見応えのあるものに仕立ててくれよ、と。連続物って例えば、こうやって面白くするんだろうがよ。

データとローアの最終決着を考えたのは悪くないでしょう。ところが、データがどうやってローアをやり込められるのか、そこがイマイチ。そもそも、どちらかが吸収されるという一方的なものではなく、“統合”なんで。このネタ、場面を見る前に、エヴァの三賢者のスーパーコンピュータの演出だって、バレましたよ。パタパタッとオセロのように大逆転する、アレ。

でも青か赤か、ではなく、マゼンタになるのが正解でしょうね。統合だから。

余談ながら、データは本心から生命体を殺そうとしたことが、かつてあったわけで――翻訳がなっていなくて、dischargeを迷訳してくれてましたが。TNGは長いシリーズでしたから、いくらでもヤリようはありますよね。ところで、ラルの話はどこ行った? 

とにかく、ピカードには既視感がありますな。悪いことに、他者の作品からの……新しくない、ってこと。既存の世界観をぶっ壊す試みだけは唯一無二に斬新ですが。

データが(ローアを抑えることに)成功しないと話が続かない、ってことは、成功するんだろ? ってオチなわけで。「ご都合主義です」と、先んじて断っているようなものですよ。もっと面白く使うこともできたかもしれない、このネタ…… すご~く、残念に感じるんですよね。

可変種は真空でも生きられる、ってなオチはMemory Alphaで読んでたので、そうなんだと思いきや――人間の臓器を得て死ぬことが出来るようになった、その結果ってわけですね。パリン! ヴァーディクはやっぱり即物的な悪役でしかなかった…… ピカードにおける、ありがたみのなさは異常。

また、ハッタリか。
「この船には闇がある。全てを飲み込む闇……」

I'm sensing... 多用するの、やめようね、というベタゾイドのお馴染み。

そして、またもや同窓会……

今回も諸手を挙げて歓迎できなくなりましたね。悪い要素の悪目立ちが大きすぎて。

扉のイメージは、なんとなくストレンジャー・シングスなんですよね。また既視感。25世紀にさ、ノブのある扉ってそんなに使われてるのかな? 無いとはいわないけれど、シャトーピカードでもない限り、めったにお目にかからんでしょ? 現代(過去)的すぎやせえへん?
[ 2023/04/09 01:28 ] 映画、ドラマ感想 | TB(-) | CM(0)
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