せっかくSkilledというランクにまで昇格したというのに、他人の銀行口座から不正に預金をトランスファーした廉で、Uplinkコーポレーションから除籍されてしまった。
[ゲームの中の話ですよ、誤解なきよう] 少々慣れた事もあって、ナめてかかっていたせいで、ログを削除する前に通報されたのだ。どうやら、銀行の反応は最速らしい。
それというのも、HUD_ConnectionAnalysisというソフトウェアが2万クレジットもするせいだ。「熟練エージェントの諸君は、皆、Bypasserを使用している」というメールまで来る始末。Uplinkコーポレーションも商売上手ということか。ハンパ仕事で、チマチマ稼ぐのは莫迦らしくなってしまう!
このゲームには、進展に伴って、いくつか壁が用意されているようだ。最初の壁はHUD_ConnectionAnalysisを買えるかどうか。Ploxyを無効化したいだけなので、代わりに、HUD_ConnectionAnalysis不要のProxy_Disableを購入するのでもいい。Firewall_Disableも同様だ。
次の壁がいきなり高い。ローカルエリアネットワークをハッキングする為に必要な、HUD_LanViewが5万クレジットもする。しかもこれだけでは事足りず、他にLANに穴を開けるツールが必要だ。
その次の壁はステータス。素行が反社会的かそうでないか、どちらかに傾倒していないと、請け負えない仕事が出てくる。これはニューロマンサー・レートで表されているのだが、中庸、つまり『ニュートラル』でも信用を得られない場合がある。”ログからハッカーを追跡して割り出す”といったミッションでは、企業の味方をしているようなハッカーでないと、依頼主から敬遠されてしまう。(ファイルサーバーをいくつも破壊した事がある経歴では、さすがに…)
お金稼ぎも、ステータス稼ぎも、どちらもミッションの繰り返しで蓄積していく。となると、問題は、ミッション内容のバリエーションだが……やはり、類型に沿って用意されている。
例えば、”犯罪歴を操作する”というミッションでは、依頼主の要望通りに、ある人物の犯罪記録を白紙に戻したり、逆にでっちあげたりする。依頼主こそ違えど、データバンクへの侵入法といい、する事自体に、たいした変化はない。有り体に言えば、同じ作業の繰り返しである。”社会保障記録の改ざん”とも同列で、違いはわずかだ。
用意されたプロットに至るまでに、”作業”の消化で飽きが来てしまうのは、作りとしては望ましくない。
Uplinkのような、新趣向のゲーム(リリース年は古いけどね)では、マイナス要因にすらなるだろう。あるいは、先を知りたい欲求に突き動かされて、我慢しつつプレイを続けて欲しい……忍耐の先のご褒美、という事かもしれないが。
また、ゲームで再現しているのは、どちらかといえばスクリプト・キディ(※)といった内容である。パスワード解読やセキュリティ無効化は全てソフトウェア任せだ。プレイヤーが何かヒネリを加える事で、ミッションが動的に変化/クリアできる、といった類のアプローチとは、かけ離れている。※出来合いのツールを実行するだけの、程度の低いクラッカーという意味の俗語
もっとも、このゲームは、解法については突き放した状態にとどめている。だから、五里霧中で、どのツールを使えば、侵入法が確立できるのか、という楽しみならば十分に提供してくれている。ただ、確立したテクニックをどこまで応用できるか、となると限界が見えてしまう。現実世界で見られるような、幅広いフィードバックをプレイヤーに許してはいない。そうした部分は、仕込まれたプロットの役割という事だろう。